前回のコラム「 銀行を知り己を知れば融資危うからず 〜融資審査のポイントpart1〜 」の続きです。
銀行が融資の審査をする際の最大のポイントは、融資したローンの元利金をきちんと最後まで約定通りに返済してもらえるかどうか。これにつきます。
他の大家さんと各銀行の融資の話をしていると、次のような融資基準についての話題がよく出ます。
・「 自己資金が売買価格の2割は必要 」
・「 ○○銀行は、サラリーマン年収の20倍までの金額まで融資するらしい 」
しかし、それらの基準はあくまでも個別のものであり、各銀行共通の本質的な基準ではありません。それでは、融資審査の本質的な基準とは何でしょうか?
■ 融資審査の三要素
それは、「 人 」・「 物 」・「 金 」の経営資源の三要素です。小規模な大家さんでも、大企業でも同様です。「 人 」・「 物 」・「 金 」を大家さんの融資審査基準のフレーズに置き換えると次のようになります。
@「 金 」= キャッシュフロー
A「 物 」= 資産・負債 = 純資産
B「 人 」= 属性
銀行の融資審査では、これらの経営資源を基に融資が可能か否か総合的に判断します。どれか一つが欠けていても融資はできません。
特に、大家さんが収益不動産融資を受けるにあたっては、キャッシュフローと純資産が重要なポイントとなります。
不動産投資で規模を拡大していくためには、キャッシュフローがプラス、そして純資産がプラスになる物件を買い進めていくことが必須です。
それでは、次に銀行が融資審査する際に最優先するキャッシュフローから解説していきましょう。
■ 融資対象物件単体キャッシュフロー
キャッシュフローとは、直訳すると「 お金の流れ 」のことで、稼いだお金から活動するのに必要なお金を差し引いた余剰資金のことをいいます。銀行が審査基準とするキャッシュフローは二つあります。
一つは、融資を受けて取得する融資対象物件単体のキャッシュフローです。これは、融資対象物件の家賃収入から管理費や建物維持費用・借入利息等の経費そして借入金の元金返済を差し引いたものです。
計算式にすると下記のようになります。
・融資対象物件単体キャッシュフロー
=家賃収入 ―経費 ―借入金元金返済( ―所得税・住民税 )
不動産投資を始めて間もないころは、この融資対象物件単体キャッシュフローがプラスであることが融資の前提条件となります。
仮に、キャッシュフローのマイナスの物件を取得すると、取得した方は勤め先からの給与など他の収入から借入返済金を補てんすることになります。
もし、勤め先からの給与が減ったり、リストラなどにより給与収入が無くなったら、銀行にとって融資したお金を返済してもらえなくなるリスクが高くなります。
大家さんになりたい方の大半は、取得した不動産からの家賃収入で金銭的に豊かになるのが目的でしょうから、キャッシュフローがマイナスの物件を取得することは理にかなっていません。大家さんも銀行も求める方向性は同じです。
ただ、不動産取得を希望する全ての方にとって、融資対象物件単体キャッシュフローがプラスでなければ融資がでないわけではありません。例えば、相続税対策で収益不動産を取得する場合があげられます。
そのようなときは、取得する不動産からのキャッシュフローがマイナスでも、他の収入と合算し、キャッシュフローがプラスであれば、融資することもあります。
■ 世帯合算キャッシュフロー
銀行が審査基準とするもう一つのキャッシュフローを世帯合算キャッシュフローと言います。ここでいう世帯には、自分のほかに、奥さん、お子さん、そして資産保有会社など家計を一つにするものが含まれます。
大家さんによっては、収益不動産を買い進める時に、自分以外の名義で取得することがよくあります。一番の理由は、所得税が累進課税となっていることでしょう。
所得税の税率は、所得金額の多寡によって5〜40%となっています。平成27年度から、最高税率は45%になります。住民税の10%を合わせれば、利益の半分以上を税金として納めなければなりません。
他からの所得がないAさんと、既に多くの収益不動産から所得を得ているBさん、外資系企業のサラリーマンとして高額の給与を得ているCさんが、ある収益不動産を取得して同じ努力をして運営してキャッシュを得ると仮定しましょう。
同じ努力をしているにも関わらず、Aさんの場合は、その収益不動産から得る利益に15%の所得税・住民税が掛かるのに対して、BさんCさんの場合は、その利益に55%の所得税・住民税が掛かることもあるのです。
他にも相続に備えて、収益不動産の所有者を分散することもあります。銀行は、生計を一つにしている世帯合算でキャッシュフローを判断します。世帯合算キャッシュフローの算式は下記のようになります。
・世帯合算キャッシュフロー
=世帯保有の各収益不動産キャッシュフローの合計+世帯各人の給与等不動産以外の所得−法人税( 資産保有会社がある場合 )−所得税−住民税−生活費
世帯合算キャッシュフローは、年間を通じて、世帯全体でどれだけキャッシュが増えたかを示します。この世帯合算キャッシュフローがプラスであり続けることが、銀行からの融資を活用して収益不動産を買い進めていく必須条件となります。
続きは次回に。