短期間で大きな資産を築いたわけでもなく、大家としての手腕にもそれほど秀逸さを感じなかったのですが、非常に積極的にセミナーやメディア露出を繰り返していました。
「 どうしてこんなに名前を売る必要があるのだろう!? 」と素朴な疑問を持っていたのですが、大家仲間から裏事情を教えてもらって納得しました。
その人はセミナー集客した人をマルチ商法の見込み客として活用しているそうです。もしかしたら不動産業が副業で、マルチ商法が本業なのかもしれません( 苦笑 )。
■ 大家の「 不労所得意識 」を狙い撃ち!?
大家業とマルチ商法はまったく別のビジネス形態なのは言うまでもありませんが、唯一共通しているのが、「 楽して儲かる"かも”しれない 」という期待感がある点だと思います。
最近はさすがに鳴りを潜めていますが数年前まで「 不動産投資で毎月らくらく〇〇万円 」的なネーミングの投資本が幅を利かせていました。
いまでも大家の会などに顔を出すと、真顔で「 不労所得を手にして楽な生活を送りたい 」などと言う若者に出会います。こういう人には「 そんなに楽なもんじゃないよ 」と私のブログを読むようにおすすめしています( 笑 )
マルチ商法は自分の下に代理店をたくさん作って、その代理店がさらに孫の代理店を作って…ということを繰り返せば、上位に立つ自分に不労所得が入る、という期待感があるようです。
楽してお金を儲けたいと思う大家さん( と大家さん予備軍 )には、その点で親和性があるのかもしれません。
■ マルチ商法とは
ここで少し整理したいと思います。いわゆるマルチ商法とは、
・商品やサービスを
・対面販売を通じて無限連鎖的に販売する商法
と定義づけることができます。

消費者庁の特定商取引法のガイドページより
意外かもしれませんが、多くの人が嫌っているマルチ商法は、特定商取引法という法律でかなり厳格に規制されていて、その規制を守っている限り合法的なビジネスです。
※お金だけ出資させて、年率20%の配当が付く…などと勧誘するのは「 ネズミ講 」とか「 無限連鎖講 」と呼ばれて、そっちは非合法です。
ただし、合法だからといって全面的に信頼できるとは限りません。特定商取引法は「 商法の枠で規制できないものを特別法で取り締まる 」という考え方でできた法律ですが、マルチ商法を危ないビジネスとしてとらえ、封じ込めようとしています。
マルチ商法の事業者側も規制ができると抜け道を探し、それを封じる規制ができると、また新たなやり方をみつけるというイタチごっこが続いているのです。
たとえば知人から急に「 会いたい 」と誘われて喫茶店に行ったら、マルチの勧誘だったという経験がある方も多いのではないでしょうか?
あれは特定商取引法で「 マルチ商法の勧誘だと告げないまま事務所に呼ぶのは禁止 」という規制があるため、事務所ではない場所を使って規制を免れているということなんです。
ですから、現在の法規制に照らせば合法でも、新たな被害者を生み出していないとは言い切れないと考えたほうがいいでしょう。
■ 利益の源泉はどこか・・・
商品を販売するタイプのマルチ商法は、利益の源泉が比較的わかりやすい構造になっています。全代理店が販売する商品の粗利をチェーンの上流も含めて分配する構造になっています。
ところが、法規制を免れるためか利益の源泉がどこにあるのかわからないようにしているマルチ商法が多くなっているようです。
さいきん大家業界で流行っているマルチ商法のひとつに、「 電力の販売マルチ 」というのがあるのですが、それがいい事例かもしれません。
数年前から電力の小売りが自由化されたので、都市ガス会社が電力の小売りを始めたりしていますよね。一般的に「 新電力 」とよばれていますが、あれと同じようにマルチ商法を通じて電力の小売りをしようとする事業者が数社あります。
そういうチェーンでは、大家同士の付き合いを通じて上流の大家が知り合いの大家を勧誘します。代理店として加入した大家は、自分のアパートの入居者に「 電気の契約を切り替えませんか? 料金が安くなりますよ! 」と勧誘します。
切り替えてくれた入居者から生じる粗利がチェーンの利益になる形です。ところがそれは実態を隠すための隠れ蓑でしかありません。
というのも、電力の仕入れコストは高いので、電力販売から得られる粗利は本当に微々たるものでしかありません。多分、1契約者あたり毎月数十円から百円程度の粗利しか得られないでしょう。
そう思っていろいろ調べてみると、そうした「 新電力マルチ 」は、加入する際に高額なテキスト代金や毎月の会費を払うようになっていることがわかりました。
たぶん、そちらのほうが電力の販売よりも格段に大きな収益源になっているはずで、法律で禁止されているネズミ講の要素を巧妙に取り入れた手法だと断じざるを得ません。
今は法律で規制されていなくても、遅かれ早かれ規制が入るだろうと予測しています。
■ 人間関係を換金しますか??
マルチ商法は人間関係をお金に換えるビジネスだといえます。身近な人間に声をかけるビジネスだからです。
私はマルチに勧誘されたとき、「 この人の目には自分がエサにしか映っていないだろうな… 」と思って悲しくなりました。たぶん多くの方が同じ思いをしているでしょうし、勧誘してきた人とは疎遠になっていると思います。
つまり自分の人間関係が破壊されてもかまわないからお金儲けがしたいと思える人でないとマルチでの成功は見込めないわけで、そういう資質は大家業の足かせにしかなりませんよね。
以前、人気ブロガーである狼さんと電話で話した際、「 共食い大家 」の話になりました。「 不動産賃貸業ってまじめにやればちゃんと儲かるのに、なんでそんなことをやるのかね〜 」という狼さんの言葉に、100%同意しました。
今回取り上げたマルチ商法もしかりです。判断は人それぞれですが、大家の本業に邁進したほうがよほど利益は上がると私は思いますし、これからもそうしていくつもりです(^_^)