私は2014年のお正月に専業大家として独立しました。早いもので5年が経ちます。当時の所有物件は戸建て・区分が数戸と小さな木造アパート一棟だけ。厳密な意味でのキャッシュフローは月30万円程度でした。
その程度の事業規模でなぜ独立したのかというと、当時勤めていた会社から「 クビ 」を言い渡されたためです。いわば追い込まれ型の独立ですね(..;)
■ 事業再生を志し・・・
もともと私は東京の電機メーカーに長く勤めていました。そこで最後に担当したのが赤字に陥っていたPC事業の立て直しで、およそ2年で黒字化することができました。
そこで経験したダイナミックな事業変革に魅了された私は次第に「 将来は事業再生だけをやりたい 」と夢みるようになりました。
電機メーカーを離職してからは思い切ってその夢を追いかけることにしました。転職エージェントに「不振事業の責任者がやりたい」と伝えると、当然ですが、変わり者扱いされました( 笑 )
幸い、こんな人材でもニーズがあったようで、数社で赤字事業の責任者をやらせていただき手前味噌ながら全ての事業で黒字化や業績改善をすることができました。
■ やるべきことをやっていないから赤字になる
こう書くとものすごい秘策を持っていたように思われるかもしれませんが、実はそれほど難しいことはやっていません。ごく当たり前のことしかやっていないのです。
詳しいエピソードを紹介するとたぶん何十話も書けてしまうので割愛しますが( 笑 )、ぐっと縮めて言うと「 お客さんが求めるものを提供する 」「 お客さんが求める分量だけ供給する 」「 精神論は排除する 」という3点を愚直に実行しました。
これってビジネスマンにとってごく当たり前のことですよね(^_^) 少し意地悪な言い方をすると、私の前任者が当たり前のことをできていなかっただけなのです。
こうした数社での経験を通じて、「 どんな事業でも、需要がちゃんとある業界ならば当たり前のことをきちんとやっていれば黒字化できる 」と思うようになりました。
裏を返すと「 当たり前のことができていないから赤字になっている 」という見方です。実は収益不動産に関しても、全く同じ見方をしています。
■ 全国の賃貸需要データを見て、再生物件へ方向転換
賃貸不動産について国の統計を調べたことがあります。それによると全国平均で約35%が賃貸住宅にお住まいだという結果でした。ちなみにファミリー層と単身層でその比率をグラフにしたら以下のようになります。

更に市町村レベルまで確認しましたが、ど田舎の小都市でも賃貸住まいの世帯は概ね3割以上だったので、全国どこでも賃貸住宅の「 需要 」はあることが確認できました。
そこまでわかれば、あとは当たり前のことを粛々とやれば満室にできる! と思い、空室の多い再生向き物件を購入する方向に舵を切りました。需要がありさえすれば事業再生の経験が生かせます。
そうして2013年の秋、サラリーマン在職中に岐阜県の再生物件を購入することができました。

参照:地方RCの再生でガッチリ! 利回り20%超の秘訣は「 楽して儲けたい 」の逆バリ思考
この物件以来、累計で20棟ほどガラガラ物件を購入してきましたが、すべて満室にすることができました。私の仮説は間違っていなかったと思っています。
■ 融資承認後、体調に異変が・・・
岐阜県の物件に融資が付き( さあ、これからだ! )と意気込んでいた矢先、私は体調不良に見舞われました。身体がだるく、出勤で会社に近づくにつれて吐き気がするのです。
小学生が学校に行きたくない時の症状と全く同じです( 苦笑 )。医者に相談したところ、すぐに休職するようアドバイスされました。ストレスレベルが限界に達したという看立てでした。
いま振り返ると無理もありません。当時在籍していた会社では会長から日々飛んでくるナンセンスな命令をかわすのに腐心していましたし、それに業を煮やした会長が私を飛び越して部下たちに直接指示を出していた時期でした。
こういうトップだから事業がうまくいかないんだと痛感した時期でもありました。まあ、幸い会社に近づかなければなんともありません。
自宅で3週間ほど休養させてもらってぼちぼち復帰しようかなと思った頃、総務部長がやってきていきなりクビを宣告されてしまいました。これで自動的にサラリーマン卒業となったのです。あっけない幕切れでした。
■ 経営はトップ次第
そういった一般事業と賃貸事業の再生経験を踏まえて申し上げると、事業がうまく行かない原因は、トップにあると断言できます。
私が親しくさせていただいている仲間の大家さんは、所有物件がガラガラになって困っていました。リフォームなし、汲み取り便所( ! )のままで募集されており、空室は増えるばかりでした。
ところが一念発起して、リフォームを決心されました。そのお部屋がこんな↓感じです。

わたし、このセンス大好きです♪ おそらく市場のニーズにもマッチしていたのでしょう。空室がすぐに埋まり大家さんはホクホクでした。
何もリフォームだけが満室化の手段ではありませんが、大家さんというトップが意識を変えて施策を実行し、それが的外れでなければ需要を捉えることができる・・・という好例だと思います。
私は空室がなかなか埋まらないと泣き言をいったり周囲のせいにしたりする大家さんから相談されたとき、「 埋まらないのはあなたに原因がある 」「 覚悟ができていない 」といささか厳しい言葉を伝えることがあります。
競争が激しくなっているとはいえ、他業界にくらべれば賃貸業界はまだまだ楽チンなほうです。経営トップが泣き言を言っている場合ではありません。
■ 自営業は天職
会社をクビになって専業大家に転じた私ですが、いまでは「 どうしてもっと早く独立しなかったんだろう?(..;) 」と思っています。
サラリーマン時代はトップの無理解や煩雑な稟議申請などに振り回されていましたが、いまでは思ったことを誰にも許しを得ずとも翌日には実行できます。
失敗したら自分で後始末をすればいいだけです。実に爽快で、専業大家という自営業は私の天職です。
サラリーマン大家さんで腕に覚えのある方はぜひ、独立を目指してください! 全て自己責任という緊迫感はありますが、サラリーマンとは全く違った世界が広がっていますよ。