こんにちは、ぺんたです。前回のコラムで、国土交通省の発行している原状回復のガイドラインについて不満点を書きましたよね。
参照:国交省の原状復帰ガイドライン、そんなバカな!という2つのポイント
マンションを一棟貸ししていた市役所がこのほど全空状態でマンションを返却してきたのですが、このガイドラインを根拠にして「 減価償却済みの内装については原状回復費の負担はしない 」というニュアンスをにじませています。
( はっきりと『 一銭も払わない 』と言っているわけではないのである意味老獪です )
こちらも現在はまだ理論武装する段階ですので、まだ正面切ってツノを付き合わせている状況ではありません。先方がガイドラインを根拠にしているようなので、手っ取り早く国土交通省に電話してみました。
■ 省庁でもちゃんと対応してくれる
そう書くとびっくりされるでしょうけど、国の省庁って国民からの問い合わせにはちゃんと答えてくれるんですよ。若いころ業務用システムの営業担当をしていた時期があって議員会館で国会議員さんと打ち合わせしたり、省庁に出入りしていたことがあります。
そのとき省庁はアポなしで会いに行ってもちゃんと対応してくれた記憶があったので、現在でも電話にちゃんと応じてくれると思ったんです。
ガイドラインの表紙には発行元が「 国土交通省住宅局 」と書いてあったので、国交省の代表番号に電話してオペレーターさんに住宅局への取り次ぎをお願いしました。
オペレーター「 どちらの課におつなぎしましょう? 」
ぺんた「 原状回復ガイドラインをご担当されている部署をお願いします 」
オペレーター「 あ、そういうご用件でしたら『 賃貸住宅対策室 』におつなぎします 」
こうしてあっさり取り次いでくれました。一本の電話で国の中枢を担う高級官僚と直接会話が出来るのですから日本っていい国ですね~(^_^)
■ 入居者とトラブルになっていることを伝えました
電話口に出たご担当者に次のようにお話ししました。市役所の名前を出すのがはばかられたので、ある入居者とトラブルになっている・・・という体のお話しです。先方は官僚特有の慇懃無礼な話し方でしたが、私はそんなの気にしませんw
ペんた「 ご退去されたお部屋のクロスがヒドい状態になっていて、2面がビリビリに剥がされている感じです。その2面に関して原状回復費用を請求したのですが、入居者は『 築年数からみて既に減価償却済みだから価値は残っていない。だから費用負担はしない 』と言っておられます。ガイドラインの主旨に照らしてこれは正しい主張なのでしょうか?? 」
こんな感じのお部屋を思い起こして話しました。
すると高級官僚さんは、こう言いました。
官僚「 剥がされたクロスは6年以上経過しているようですから日焼けなどの経年劣化や、通常損耗がある程度あったと思います。その部分の費用まで入居者に請求することはできません 」
続けて、次の言葉が続きました。
官僚「 それにそのクロスは減価償却済みで価値が1円になっているわけですから、クロス代金を入居者にご負担いただくことはできません 」
内心ショックを受け、「 ガーン...それじゃあ市役所の主張が正しいのかよ!? 」と悲しい気持ちになりました・・・( 涙 )
■ その後、違った展開に♪
暗い気分になりながらも、念押ししてみようと思い、質問をストレートにぶつけてみました。
ぺんた「 それでは6年以上経過したクロスは入居者にどのようなヒドいことをされても大家は泣き寝入りをしないといけないんですか? 」
官僚「 あ、いえいえ。そうではありません。入居者は善管注意義務を負っていますから、そのお部屋の内装を元の『機能』に戻して返還しなければなりません。クロスであれば一面が均一に貼られた状態です 」
ぺんた「 ・・・はい? 」
官僚「 減価償却済みのクロスという物体は1円の価値と考えられるので、新品のクロスの調達コストを請求することはできませんが、貼り替える原因を作ったのは入居者ご自身ですので貼り替えに伴う作業工賃は入居者にご負担いただくことになります。一般的な品位のクロスは恐らくスゴく安価に仕入れられると思いますので、クロス貼り替え工事の大半は作業工賃となり、その部分は入居者負担ということです 」
官僚「 あ、ちなみにそれに関する記述がちゃんと書いてありますのでよく読んでおいて下さいね! 」
こう注意されて、終話しました。
■ なんだ!いいガイドラインじゃん( 笑 )
この説明を図にすると次のようになります。
既存のクロスは貼った際1㎡1,000円のコストだったとします。それが6年経過して減価償却が完了したら1円の残存価値になります。
それを入居者がビリビリに破いてしまった場合、これは故意ですので入居者の善管注意義務違反になります。
新しいクロスを貼る際も1㎡1,000円のコストだと想定した場合、その工事費の内訳を分解しなさいというのが国交省の言っていることなんです。
新品クロスは量産品であれば100円ぐらいでしょう。残る900円が作業工賃だという風に分解して、新品クロスの100円は請求できないけれど、作業工賃については故意によって貼り替え原因を作った入居者に請求できる・・・というロジックです。
実はこういうロジックを私も考えていたし、何人ものブログ読者さんからアドバイスしていただいていたのですが、改めて霞ヶ関の高級官僚さんにお墨付きをいただいたわけですから堂々と使わせていただきます。破壊力抜群のロジックになりそうです。
しかし今回国交省に直接確認してみて、「 な~んだ、いいガイドラインじゃん! 」と思いました。やはり国交省がモラルハザードを引き起こしかねないようなことを言うわけがありませんね。
■ 高級官僚から注意された部分とは
最後になりますが、私が高級官僚さんからよく読んでおいてくださいと注意された部分はガイドライン12ページ下部にある記述です。( この部分も読者さんから事前に教えていただいておりました(^_^) )該当部分を以下に引用しますね!
===ここから===
なお、経過年数を超えた設備等を含む賃借物件であっても、賃借人は善良な管理者として注意を払って使用する義務を負っていることは言うまでもなく、そのため、経過年数を超えた設備等であっても、修繕等の工事に伴う負担が必要となることがあり得ることを賃借人は留意する必要がある。
具体的には、経過年数を超えた設備等であっても、継続して賃貸住宅の設備等として使用可能な場合があり、このような場合に賃借人が故意・過失により設備等を破損し、使用不能としてしまった場合には、賃貸住宅の設備等として本来機能していた状態まで戻す、例えば、賃借人がクロスに故意に行った落書きを消すための費用( 工事費や人件費等 )などについては、賃借人の負担となることがあるものである。
===ここまで===
「 あり得る 」とか「 ことがある 」と断定調を避けているのでいささかわかりにくく、霞ヶ関文学の匂いがしますね( 苦笑 )。
でも、意味は上で解説した通りの内容です(^_^) 参考にしていただければ幸いです<(_ _)>