今回も思考のヒントをご提供するため、順を追っていくつか雑感を書いてみることにしますね(^^ )
■ 入居検討者のセグメント
お部屋を探しておられるお客さん=入居検討者は、その志向によって概ね3つのセグメントに分類できると私は思っています。それぞれのセグメントを私のイメージで名前をつけると次のようになります。

1)新築絶対派
とにかく自分は新築じゃなきゃ絶対イヤだ!誰が座ったかわからない便座に座りたくない!みたいなお客さん。単身物件だと若い女性が多い印象です。便座を新品に替えればいいじゃん・・・などと私などは思ってしまいますが、「 まっさら 」「 新品 」というイメージにすごく重きを置いている方々です。
2)コスパ比較派
大多数のお客さんがココなんですが、自分が払える家賃の範疇で、出来るだけ設備が充実していて立地も良い物件を選択したいと思っておられる層です。比較的多くの物件を内見して決める傾向があると思います。
3)雨露しのげれば派
充分な額の家賃を払えないとか、ハンディがあるため普通の部屋には入居できない、よってボロくてもいいからとにかく部屋を安く確保したい・・・という層です。
個人的にはジモティ掲載で反応してくるような方や、ボロくても自分でDIYするからとにかく安い家賃で・・・とおっしゃるような方のイメージです。これらのセグメントは経験を通じてなんとなくわかっていたのですが、SUUMOさん主催のセミナーでもほぼ同じことをおっしゃっておられたのでそんなに的外れではないと思います。
ちなみにSUUMOさんによると、私が言うところの「 新築絶対派 」はやや減少傾向、「 雨露しのげれば派 」は増加傾向だそうです(^_^;
■ 大家さんの「 商品戦略 」
お客さんがこういうセグメントに分かれているのに応じて、大家さんが提供する物件もそれぞれ分かれます。健美家コラムニストのイメージで言うと、
・新築を提供 :極東船長さん
・中古を直して提供:DX@母ちゃん、私
・中古を現状で提供:ポールさん
という感じになります。

■ 誰と競争するのか? という視点
さあここから本題です。上でご紹介した4人の大家さんが同じマーケットで事業を展開しているとします。その時私は誰を仮想ライバルと思って事業運営をしていけばいいと思いますか?
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その答えは、3人の誰でもありません。
理由を説明しますね。3つのセグメントに分かれたお客さんはそれぞれ特徴が際立っているので容易に交わらないと私は思っています。
中古物件になんちゃってリフォームを施した私の物件は、「 新築絶対派 」のお客さんには刺さりません。時々そういうお客さんが内見にやってきますが、成約に至った記憶がありません。たぶん仲介さんが無理して引っ張って来てくれたのでしょうね。
ということは、私が極東船長さんに闘いを挑んでお客さんを奪おうと努力しても無駄骨に終わる可能性が高いということです。( ※注:例外はあるでしょうが確率論のお話です )。だから私は新築系の物件、および新築系の大家さんを最初から除外しています。
大家さんの中には新築の乱立を懸念する方がいらっしゃいますが心配ご無用。「 コスパ比較派 」や「 雨露しのげれば派 」と新築は直接競合しませんからw。その大量の新築が10年も経ってだいぶヘタってきた頃には心配したほうが良さそうですけどね(^^ )
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次に「 雨露しのげれば派 」ですけど、こちらはそもそも普通の中古物件よりも家賃帯がずいぶん低かったり、属性の悪さから仲介業者さんに弾かれた人が多いので積極的に取りに行くのもどうかと思います。
このセグメントのお客さんをゲットするには家賃を大幅に下げないといけないうえ滞納リスクにもさらされるわけで、お客さんを取りに行くと損・・・という意味から私はポールさんとも直接競合はしないことになります。
ポールさんはあれだけ安く仕入れているから儲けが出るし、リスクも取れるのです。
■ ランチェスターの「 弱い者いじめ 」の法則
では、同じ「 コスパ比較派 」セグメントにいらっしゃるDX@母ちゃんが私の仮想ライバルになり得るかというとそうでもありません。みなさんご承知の通りあの方は築古物件を再生する名人で、一部には魔法使いだと言うウワサもあります( 笑 )
こういう物件が・・・

こ、こう↓なるのですから魔法使いですよね。

参照:DX@母ちゃんのコラム58話
そういうプロデュース力に加え、経験・人脈・資金力とどれを取っても私がかなう相手ではありません。そういう強者に闘いを挑むと負ける可能性が高いので、そこは尻尾を巻いて逃げ出したほうが得策なのです。国力の劣る日本が対米開戦をしないほうが良かったのと同じ理屈です。
では誰を仮想ライバルにするかというと、ズバリ正解は「 自分よりも弱そうな大家さん 」です。実はこういう考え方は私のオリジナルではなく、「 ランチェスター戦略 」といって戦争に勝つための手法を体系化したものです。( ビジネスの現場では広く使われています )
じっさい私はパソコンビジネスのマーケティング責任者をやっていたときに、この手法を応用して国内シェア3位からトップに押し上げることが出来ました(^^ )
ランチェスター戦略にはいろんな法則が含まれているのですが、その一つに「 弱いものいじめの法則 」というのがあります。弱肉強食のマーケットでは、自分よりも相対的に競争力が弱い相手から顧客を奪うのが効率的だとする考え方です。
(※いまはポリコレ的に「足下の敵を攻撃する」という表現に変わっていますw)
■ 具体的な応用は・・・
私が実践した事例はいくつかありますが、紙幅も限られていますので一つだけご紹介しますね。
いま再生中の9階建てRC物件がありますが、この仕様決めをするときには近隣にあるアパートメーカー築の物件( とその大家さん )を仮想ライバルにしました。当時そこはうちの物件よりスペックがよく、満室経営でした。
同じエリアでお客さんを奪い合う間柄なので、その物件の設備を調べあげ、そこよりも充実した設備を追加し、エントランスだけにはなりますが上質な雰囲気にリノベーションしました。また家賃設定もそこにぴったり合わせました。しかもうちの物件はそこよりも背が高いので、上から見下ろす感じです( 笑 )

いまや設備スペックが勝っているうえ、構造の頑強さも背の高さも勝っているのでたぶん負けないと思います。
ここまでいかがでしたか? マーケットの大家さん全員を意識して物件の競争力強化に迷っておられる方をたくさん見て来ましたが、お客さん( =大家さん )のセグメントを意識して、自分よりも相対的な弱者に当たる大家さんを見ながら経営すると、割と簡単に勝てると思いますよ!(^^ )
【健美家より】ぺんたさん物件見学ツアー【第1話】
富沢ウメ男の「不動産投資 突撃ロケシリーズ」でぺんたさんの物件を訪問しました。是非ご覧ください。