迅速に指示を出さないといけない場面ですが、判断に困る場合もよくあります。というのも管理会社さんの報告が漠然としていたり、明らかに入居者寄りのスタンスだったりするからです。
今回はそうしたケースで私がどう対応しているか、実例をいくつかご紹介しますね。私が意識しているのは、当たり前ですがとにかく事実確認を正確に行い、原因を「 切り分ける 」ことです。
■ 管理会社さんは入居者寄り!?
地方の管理会社さんは人材の入れ替わりが非常に激しく、新しく入って来た方は異業種から来られた方だったりする場合が多いので、不動産管理のノウハウが全く無いことが少なくありません。
ようやく慣れたな~♪と思った矢先に転職されたりすると、次の方はまたゼロからのスタートになります。まるで波打ち際で砂像を作っているような気分になることもありますが、そこはもう仕方がありません。根気強く教育するしかありません。
ノウハウが身についていない方の特徴として思い浮かぶのは、
①報告が漠然としていて具体性に欠けている
②入居者の主張を鵜呑みにしてしまう
②入居者の主張を鵜呑みにしてしまう
という2点が挙げられると思います。こちらとしては管理会社さんに
①事実の正確な把握
②不具合の原因が大家責なのか入居者責なのか、原因は何なのか? の切り分け
③対処法の提案
②不具合の原因が大家責なのか入居者責なのか、原因は何なのか? の切り分け
③対処法の提案
を期待しているのですが、経験もノウハウも身についていないので入居者の話を吟味せず、そのまま伝える伝書鳩になってしまっている感じがします。その結果、悪意はなくとも入居者寄りの話に聞こえてしまうのだと思います。
■「 蛇口から水が漏れています 」
では具体例に入りましょう。
あるとき管理会社さんの新人さんから電話がありました。
「 キッチンの蛇口から水漏れしているので、水栓ごと交換していいですか? 」
どうやら入居者から水栓の交換を求められているようです。しかし、水漏れしていることだけはわかりましたが、それがどこからなのか? どの程度なのか? はさっぱりわかりません…。
そのお部屋の水栓は温水と冷水を別々にひねる二栓式の混合栓で、壁から取り付けされていたので、より詳細な情報を得るため質問をしました。
ぺんた「 ちょっと待ってください。水漏れは赤または青のひねるところの根元からですか? それとも鶴首の付け根からですか? あるいは壁に取り付けられた付け根からですか? 」
するとその方は即答出来ませんでした。あらためて事実確認をしてもらったところ、温水のほうのひねるところからポタポタとリークしていることがわかりました。
ぺんた「 それなら水栓交換ではなくて、パッキンの交換をしてあげてください。そうすれば止まりますよ 」
私はそのように指示しました。水栓の丸ごと交換とは大きな違いです。
水栓には何カ所かパッキンが入っており、経年劣化で水漏れを起こすことがよくあります。パッキンの場合は回す部分の根本から、あるいは鶴首の根元から漏れてきます。ところが「 コマ 」のゴムが劣化すると、鶴首の先から水がポタポタとしたたって来ます。
水栓のどこから水が漏れているのかが重要なんですが、新人さんですのでそういうことまではわからなかったようです。
■「 経年変化でシングルレバーが折れた 」
またあるときに別の管理会社さんから、こんな連絡が入りました。
「 洗面台のシングルレバー混合栓のプラスチックハンドルが折れてしまったそうなのですが、経年変化だと思うので大家さん負担で交換をお願いします 」
いやいや、一般的にシングルレバーのプラスチックハンドルは経年変化で変色することはあっても折れることなどなかなか考えにくいです。
ぺんた「 経年変化だと判断されたのはどういう点からですか? 」
と問いかけると管理会社さんはしどろもどろになり、けっきょく入居者がそう主張しているからそのままこちらに伝えて来ていることがわかりました。
更に入居者に詳しくヒアリングしてもらうよう指示をしたところ、
管理会社「 以前からハンドル部分に亀裂が入っており、ながいこと放置していたが、ある日通常使用していたらポキッと折れた・・・とおっしゃっています 」
ということでした。しかし、いくらヒビが入っていたからといっても、こういうハンドルは強い打撃を加えない限り折れるものではありません。そこで・・・
ぺんた「 わかりました。以前から亀裂が入っていて、直近で折れたのであれば破断面の画像を撮影して送ってください。長年ヒビが入っていたのであればヒビの内側も経年変化で変色しているはずですし、新たに折れた部分は真新しい破断面なはずですから入居者さんのお話が裏付けられます。折れた部分に打撃痕がないことも確認出来たら当社で費用負担しますよ 」
そのように指示したところ、音沙汰がなくなりました( 苦笑 )
けっきょく入居者さんの負担で交換したので、やはり私の推察したとおり、なんらかの打撃を加えてしまったのではないでしょうか? 誤ってヘアドライヤーとかを落としたのかもしれませんね。入居者の中には自己負担を嫌う方がいらっしゃいますもんね…。
■「 ハウスクリーニング業者が手抜きをしています(怒) 」
あるお部屋に新たにご入居された方からクレームが入りました。そのお部屋のハウスクリーニングは私が業者さんに直接発注したお部屋です。入居後に、管理会社さんから連絡が入りました。
「 キッチンの換気扇が汚いままで、本当にハウスクリーニングをしたのか?? 手抜きじゃないのか?? っておっしゃっています 」
ぺんた「 そうですか、申し訳ありません。実際に現場をご覧になりました?? 」
管理会社「 いえ、まだです… 」
管理会社さんには第一報を受けてからまっさきに現地確認をしてもらいたいのですが、現地を見ずに連絡してきたようです。
ぺんた「 では申し訳ありませんが現場を確認しに行ってもらえますか? そして現地から電話してください 」
そう指示したところ、現地に到着した管理会社さんから電話がありました。
ぺんた「 換気扇のプロペラ部分に油が付いたりしています?? 」
管理会社「 いえ、そこはキレイです 」
ぺんた「 じゃあプロペラ周囲のフレーム部分は? 」
管理会社「 あ、そこもキレイですよ 」
ぺんた「 じゃあ一体、どこが汚いとおっしゃっておられるんですか?? 」
管理会社「 外側です 」
ぺんた「 外側・・・というと屋外ですか? わかりにくいので画像を送ってもらえますか? 」
すると、すぐに画像を送ってきてくれました。その実際の画像がこちら↓です。
管理会社「 ご覧いただいてわかるとおり、真っ黒で掃除していないでしょ!? 」
ぺんた「 ちょっと待ってください。この黒い部分にはベトベトした新しい油分が付いていましたか? 」
管理会社「 いえ、サラサラしています 」
ぺんた「 じゃあ、今回のハウスクリーニング業者に非はありませんね 」
ベトベトしていないということは、新しい油分は今回の業者さんが除去してくれていると思われます。黒く見える部分は古い油分が炭化しているものでしょう。
つまり過去のクリーニング業者さんが掃除しなかった油が固体化してこびりついているもので、今回の業者さんとは無関係です。( しかも過去に入った業者さんは管理会社さんが手配しておられましたw )
ぺんた「 ・・・というわけで、過去のクリーニング業者さんが手抜きをした結果がこの黒い汚れで、もしなにかしてもらうとしたらそちらが手配された業者さんですよね・・・(^^ゞ」
管理会社「・・・・」
■ 重要な「 切り分け作業 」
こういうエピソードは数えきれないほどあります。
つい先日も、あるお部屋から「 テレビの特定チャンネルがある日から映らなくなった 」という苦情が寄せられました。
管理会社さんは「 テレビアンテナの調整を発注します 」とおっしゃっていたのですが、私が「 他のお部屋も同様に映らなくなったのであればアンテナが原因と考えられますが、他の入居者さんに確認されましたか? 」と質問すると沈黙されました。
そのお部屋だけの現象であればそのお部屋のアンテナコンセント、またはテレビへの配線の問題と思われますが、他のお部屋でも同じように見えなくなっていたらアンテナやブースターの問題が疑われます。
そういう根本原因を調査し推定して「 切り分け 」するのが管理マンのお仕事だと私は思っています。
ところが地方では「 入居付けのプロ 」はいらっしゃるのですが、こういう切り分け作業までお任せできる「 管理のプロ 」にはお目にかかったことがありません。
建物や設備の構造まで理解しておられる経験豊富なプロフェッショナルが残念ながら多くないという現実があります。
従って、地方で賃貸経営を行うには、大家側である程度の設備知識を身につけて自衛しないとムダ金を多く支払うハメになると思うんですよね。
このアンテナのケースではその後、管理会社さんが他の入居者にヒアリングを行い、同様に特定チャンネルが見えなくなったこと、大風が吹いた日を境にその現象が起こったことが確認できました。
その後、アンテナ調整を行って事象が解決出来たので管理会社さんがおっしゃっていた対処で結果的には合っていたのですが、こういう場合でも事実確認をちゃんと行っていないと外す確率も高かったわけです。
設備の管理というのはつくづく奥が深いものだと日々実感しています…。