こんにちは、ぺんたです。
アパート経営で非常にお世話になるのがプロパンガス屋さん。供給元のガス屋さんからあれこれと設備をご提供いただくことで、我々の負担の一部を支えていただいているありがたい存在です。
弊社も数社のガス屋さんと良好な関係を築いていますが、とかくプロパンガス業界は良い業者さんとお行儀の悪い業者さんが混在している世界です。そういうお行儀の悪い業者さんを排除するためには、その会社が提示する「 ガス供給契約書 」を精読することを強くお勧めします。
今回のコラムでは私がこれまでに目にした、明らかに大家さんが不利になる契約書を3つご紹介します。他にもいろんなパターンがあるかもしれませんが、ひとつの事例としてお読みください。
■ ガス業者のビジネスモデルは・・・
家庭用ガスには主に大都市で使われている「 都市ガス 」と、地方で広く使われている「 プロパンガス 」の2種類があります。
こちらの街でも都市ガスエリアがあるのですが、都市ガス業者さんは一切サービスをしてくれません。給湯器自体も大家さんが有償で設置、エアコンなどのサービス提供は一切なし・・・という対応です。
どうしてこうなるのかというと、都市ガスはメタンガスが主成分で液化しにくい( =ボンベで供給出来ない )ため、ガス管経由の供給となるからです。広いエリアにガス管を隅々まで敷設するための膨大な費用負担が必要なために、大家さんへのサービス品を提供する原価的な余裕がないんですよね。
いっぽうプロパンガスは8気圧ほどで液化しますのでボンベに充填して持ち運べます。そのため、ガス管網を整備する設備負担がない分、原価的に余力がある・・・ということが一番のベースにあるかと思います。
そして、プロパンガス屋さんにとってアパートやマンションは戸数がまとまっているだけに供給契約が取れれば「 おいしい 」顧客となります。そのため、多少無理をしてでも( =サービス品を提供してでも )契約を取ったほうがよい・・・という判断となり、いろいろな設備をご提供いただくようになったのだと思います。
無償提供していただいたさまざまな設備は、概ね10年かけて定率償却するパターンがこちらでは標準的です。意訳すると「 いろいろサービスするからさぁ、10年は他社に転換しないでね 」という意味になるかと思います。
では次項から、私が「 これはおかしいな 」と思ったプロパンガスの供給契約書の事例をご紹介します。
1、シレッとダマすパターン
最初の事例は私が最近購入したアパートで前オーナー様が4年前に締結した契約書の内容です。新築時からガス供給をしていただいているガス屋さんとの間に契約を交わしていなかったため、4年前に締結した・・・という話でした。
契約書の内容を見ると、ヘンなところは一瞥しただけでは見あたりません。
居室数=16室に対してガス給湯器とリモコン、配管カバーを新品で無償提供してもらい、その総額が232万円という内容です。別項には解約するときのルールが書いてあり、契約締結時からの経過月数を元に精算する計算式も明記(↓)してありました。
一見したときは、「 妥当な内容だな・・・ 」と感じました。ところが、この契約書の大前提に問題があったのです。というのも、実際に取り付けられている給湯器の製造年を調べたところ、建築当時の2000年製のものが大半だったのです。
契約を締結した2019年当時で既に19年経過しているわけですから、ガス会社内部の簿価はとっくに1円評価になっているはずです。実使用上もこの先、どのくらい使えるかわかりません。
それにもかかわらず、契約書ではそのような古い設備を、大家さんに対して「 新品 」の価格で契約させる内容です。万一、大家さんが他社に転換した場合には高額で買い取らせる契約になっているという点でアンフェアです。
古い給湯器のままであれば契約書に記載する価格欄に「 1円×16戸 」と書くべきですし、新品価格を記載したければ、契約締結と同時に新品交換しなければスジが通りません。記載価格をつり上げて転換防止をしようという意図なのでしょうね(^_^;
2、小さな文字の但し書きで欺すパターン
まだ駆け出しのころ、ある木造アパートを購入しました。新築時から供給しているプロパン屋さんがぜひ継続してください!・・・と言ってきたのでお会いすることにしました。感じの良い営業さんが非常に低姿勢で継続を訴えるので、いささか情にほだされておりました。
ところがその方が提示してきた契約書案をその場で拝見して、( この会社とはお付き合いできないな・・・ )と強く感じました。その契約書にはこのような↓記述がありました。
どこがひっかかったのかわかりますか?
難しいと思いますので種あかししますね。ポイントは2つです。
ひとつは「 金額 」です。実は前オーナー様とそのガス会社の契約を先に入手していたのですが、その内容がこちら↓です。
前オーナー様との契約では「 ガス供給消費設備一式 」の項に給湯器が含まれていたので、同じ内容の項目同士を比較すると64万円 vs 112万円!倍近く金額を吊り上げてきています。しかも給湯器自体は古いままで、「 新品には取り替えない 」と言っていたので、新しいオーナーをダマして貸与品の金額をかさ増ししようという意図なのでしょう。
それよりももっとカチンときたのが二点目です。上であげた2つの表の下に、小さな文字で「 但し書き 」が書いてありますよね。スマホの方は読みにくいと思いますので、以下に再掲します。
「 但し、本契約中は乙が維持管理する為にこの合計金額の償却はないものとして変動しない。」
と書いてあります。
最初の事例では、契約期間を10年として、経過期間に応じて提供設備を償却していく。他業者に転換する場合は償却後の残価ベースで精算する・・・ということになっていましたが、こちらの事例では、「 償却しない 」と小さな文字で書いてあります。
何年経過しようが新品価格を満額支払わなければ転換できないという契約書になっていたのです。
上記について、営業さんに「 おかしいですね」と指摘したところ、アワアワしてまともな返答が出来なくなってしまいました。「 こういう契約を提示してくる業者さんとはお付き合いできません 」と言ってお引き取り願いました。
3、転換すると告訴されるパターン
これは私自身ではなく仲間の大家さんが体験した事例です。所有物件で既に7年間お付き合いしているガス屋さんと契約が未締結だった方なのですが、急に相手が「 契約を締結したい 」と言ってきたそうです。
その方から、「 他社に転換されたくないので書面で締結したいと言っているのですが、文案を見るとめちゃくちゃな内容なので、ぺんたさんも一度読んでいただいて感想を聞かせてもらえませんか?」と言われたので、拝見させていただきました。
するとまあ、かなり大家さんにとって不利な内容でした。箇条書きしますと・・・
- 契約期間は15年
- 設備機器は新品価格ベース( 実際には古い機器です )
- 機器は15年で償却し、転換する場合は1週間以内に現金で設備買取りしなければならない
- アパート売却の際はガス屋に事前通知すること
など、大家さんに不利な内容ばかりが書き連ねてありました。なかでも1週間以内に現金払いという点が気になり、うちの従業員さんに聞いてみました。( うちの従業員さんは元プロパン営業です )すると、「 あ、そこは危ないから付き合わないほうがいいです 」と即答。理由も明確でした。
「 この契約書に色々な無理難題が書いてあるでしょ!?この会社は転換されたらすぐに大家さんを相手取って訴訟を起こすんですよ。すると、この契約書に同意した事項を大家が守っていないことになるので大家さん敗訴します。だからハンコを押してはダメです!」
このガス屋の社長には数度の逮捕歴があることもわかりました。ご相談者の方には「 絶対にハンコを押してはいけない 」ことをお伝えし、他の業者さんを紹介して差し上げました。( 転換までの間に、脅し・すかし・泣き落としがあって大変だったそうです )
■ 大家さんも反省すべき点が・・・
続けてこのような事例を紹介したことで、「 ガス会社ってのはヤクザなところばかりなの?」と心配になったかもしれませんが、善良で真面目な会社さんがほとんどなので誤解なきよう。
それから、大家さん側にも大いに反省すべき点があります。契約書のなかみをきちんと読んでいない方が大半なので、上記のようなトリックに騙されてしまうのだと思います。契約書はちゃんと読むのがビジネスの基本です。改めてご留意ください。
また、大家さんがガス供給契約を守ってくれない場合が多いから、プロパンガス屋さんは苦肉の策で上記のような自衛手段を講じているとも考えられます。契約はちゃんと守りましょうね。
■ 私の防衛策( 余談 )
新たにアパートを購入する際は、事前に前オーナー様が締結したガス供給契約を必ず拝見します。その内容が今回ご紹介したようなものだった場合、重要事項説明書や売買契約書の特約欄に「 XX社のガス供給契約に関しては継承しない 」とわざわざ記入してもらいます。
それから、宅内のガス配管に関して所有権を主張されるガス屋さんが時々いらっしゃいます( 新築時にガス屋さんの費用負担でガス管を宅内敷設するのが一般的だからだと思います )ので、それについても対応しています。
具体的には、「 宅内のガス配管に関しては築年数から考えて既に償却済みである点も勘案し、本件建物の附属設備として同時に売買する 」というような一文を特約に明記してもらいます。
こうしておけば「 ガス管は私のもの 」、「 契約は継承しない 」ことが明文化されますので、揉める要素がありません。課題が残っている場合はガス屋さんと前オーナーの間で解決していただくことになります。
賃貸経営では、事前に知っておくことで防げるトラブルが多くあります。参考になれば幸いです。