「 売上最大、経費最小 」という言葉を皆さんご存知でしょうか? これは僕が考えた言葉ではありません。この言葉は日本の最も素晴らしい経営者のお一人、稲盛和夫氏の言葉です。
稲盛氏は僕が知る限り、賛否両論ある方のようでした。しかし、紛れもなく、実績から考えれば日本のトップクラスの経営者のうちのお一人でしょう。
「 京セラ 」「 KDDI(auで有名な)」「 JAL 」。これら全てに関わっているのが稲盛氏です。賛否あれども、この方の実績を超えられる日本の経営者の名前は、そう多くあげることはできないと思います。
僕自身も、その影響を受けています。中でも「 売上最大、経費最小 」は重要です。僕は、「 売上最大、経費最小 」を、「 一つの物事におけるピークパフォーマンスを引き出す 」ことだと勝手に解釈しています。
物件だけではなく、全ての物事に対してこれを常に考えています。
■「 売上最大、経費最小 」で物事のピークパフォーマンスを引き出す
さて、大家業における「 売上 」とはなにか? 「 家賃収入と売却額 」が大きなものとして思い浮かびます。高ければ高いほどいいですよね!これはわかりやすいと思います。
一方で、大家業における「 経費 」とはなんでしょう?
・固定資産税等
・火災保険料
・管理費等
・修繕費、リフォーム費
こういったものがすぐに浮かびます。また、経費ではないですが、原価もこれに当たると考えることができるでしょう。こちらも数字だけ見れば、安ければ安いほど良いですよね。
・購入時の物件価格
・上記に付随する諸費用( 仲介手数料、登記費用、借入手数料等 )
その上で、「 売上最大、経費最小 」をそのまま鵜呑みにするならば、不動産投資家にとっての正解は次のようになるかもしれません。
1)とにかく家賃を高くして、無理やりにでも貸す!!
2)とにかく指値をしまくって、物件を安く買い、管理費を安くし、修繕・リフォーム費を安くし、仲介手数料を安くしてもらう!!更に、人に頼むと経費が増えるので、なるべく自分でやる!
2)とにかく指値をしまくって、物件を安く買い、管理費を安くし、修繕・リフォーム費を安くし、仲介手数料を安くしてもらう!!更に、人に頼むと経費が増えるので、なるべく自分でやる!
おや? こんなことをする大家さんがいたら、なんとなくヤバいような感じがしますよねww。ということは、「 売上最大、経費最小 」は大事なことではあるけれど、これが全てではないということでしょう。
■ 永続した商売をするならば、「 三方良し 」の精神が必要
私が稲盛経営を勉強して心に残ったもう一つの言葉に、「 三方良し 」の精神があります。
※これは稲盛氏ならではの考えというわけではなく、近江商人( 中世から近代にかけて活動した、今でいう滋賀県出身の商人さん達 )の経営哲学として知られています。
「 三方良し 」とは、「 商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる 」という考え方であり、相手に満足感がなければ、商売に次はないという意味です。
特に、永続した商売をするなら欠かせないものとされています。大家業はまさに「 永続した商売 」ですから、先述した「 売上最大、経費最小 」と同じくらい、もしかしたらそれ以上に重要なことかもしれません。
実際、家賃が高すぎれば入居者さんは別の物件に移るでしょうし、リフォーム会社さんや不動産業者さんを値切りすぎれば、「 あの人は自分の事ばかり考えてひたすら値切ってくるから、もう仕事を請けたくない!! 」となるでしょう。
僕はこの「 三方良し 」が成り立つポイントを常に考え抜くようにしています。最初のうちはわかりません。しかし、そのうちに「 全員が納得感を持てるような究極の一点 」がなんとなく見えてきます。
これも稲盛氏の言葉ですが、「 値決めは経営 」というものがあります。究極の一点を探る時、値決めはとても重要です。
僕は、物件の仕入れで迷った経験はほとんどありませんが、この「 値決め 」に関しては毎回、だいたい1〜2日以上は考えています。答えは最初にほぼ出ているのですが、それでも何度も何度も考えます。
・この金額は、入居者さん、購入者さんにとって満足感がある金額か?
・この金額は、仲介業者さんが「決まる!or決めたい!」と思ってくれる現実的な金額か?
・この金額は、貸主or売主である僕にとって、良いと思える金額か?
また、これを考えるためには、「 その物件の現状を知る 」ことと、「 その物件の料理方法を何通りも考える 」過程が発生します。余談ですがこれこそが、不動産会社( 売買業・賃貸業問わず )経営における最も良いトレーニングになります。
■ 超一流の方の書籍を読むことや家族と過ごす時間に人生を使おう
若輩者の私が言っても説得力はないかもしれませんが、多くの経営者に会ってきた私が感じたことの一つに、「 一つのことを極めた人は、他の何をやっても要領良く進めることができるものだな 」というものがありました。
そして、稲盛和夫氏という方は、私が伝えるまでもなく、「 経営を極めた方 」です。「 何かを極めた方 」の言葉には、必ずと言ってよいほど、経験による裏付けがあります。
今回、このコラムでお伝えしたかったことは、「 超一流 」と言われる方の書籍や哲学に触れておくと、ご自身の人生や大家業に生きるかもしれないということです。
最近はSNSを通じて、誰もが発信できるようになりました。素晴らしい時代だといえます。しかし、ジャンク情報も多く、意識的に情報を取捨選択しなければ有益な情報に辿り着けないとも感じます。
そのため、最近は特にSNSに時間を割かないようにしています。それよりも、超一流の方の書籍に触れることや、家族と過ごす時間に人生を使うように意識をしています。
そして最後に付け加えると、稲盛氏は「 賛否両論 」のある方でした。しかし、「 否 」の方ばかりを気にして、良いものを取り逃してしまうことは非常にもったいないと私は思います。
日本が誇る経営者の中の経営者である稲盛氏の言葉は、きっと多くの皆さんの役に立つと思います。今まで稲盛さんの本を読んだことがないという方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

2022年〈令和4年〉8月24日、稲盛さんが亡くなりました。
希代の名経営者 稲盛和夫氏 どうか安らかにお眠り下さい。
日本経済を素晴らしいものにして頂きまして、ありがとうございました。