私、大家のプーさんのコラム連載26回目をご覧頂き、ありがとうございます! コラム26回目は、「 資産規模5億円の人が破産した話 」をテーマにお伝えします。
■ 資産規模5億円の人がなぜ破産したのか
資産規模5億円。あえてこのように記載させて頂きました。巷では、「 借金の総額 」を「 資産規模 」と表現する事が多いからです。
その方との出会いは、私が不動産会社でサラリーマンをしていた時代に遡ります。某ボータルサイトに自社売主物件を掲載しておりましたところ、問い合わせを頂きました。( 健美家さんではありませんw )
鮮明にその方の事は覚えています。年収900万円、勤続年数は3年以上、年齢は当時30代後半の方でした。有名企業にお勤めの、誰もが羨ましいと思うような属性をお持ちでの方でした。
その方は、お会いするなり、「 先日、家賃収入が4,000万円に到達したんです! 」と仰いました。少年のように素直でいい人だなと思い、そのまま話が弾んだことを今でも覚えています。
しばらくすると、今でも忘れられないキーワードがそこで登場しました。
「 オーバーローンがつくなら何でも買います! 」
すごく嫌な予感がしたので、その方の所有物件の資料を見せていただきました。すると、案の定…といった内容でした。具体的には鉄骨かRC造で築30年以上の郊外の低利回り物件を、5棟ほど持っていました。
たしかに家賃収入は4,000万円を超えていましたが、恐らく年間CFは満室時で800万円前後というところでしょう。そして驚いたのが、空室の多さです。1.5割が空室でした。( あ、私も空室物件を買い過ぎて、空室率は同じようなものでした… )
「 この状態だと手残りが少ないだろうな 」とすぐに思いました。あと少しでも空室が出たら赤字分を給与から補填することになるか、返済が滞ってしまうのでは? そんな瀬戸際のように見えました。
資料を拝見し終わった後、その投資家さんから「 僕の物件は業者さんの目から見てどうですか? 」と訊かれましたが、モゴモゴとごまかしてしまいました。
■「 想定家賃収入 」など、当てにならない
その当時、僕は不動産会社に入社して2年目でした。正直に言って、その頃の僕は不動産のことをよくわかっていませんでした。
「 不動産投資で成功するにはできだけ多くの物件を、融資を引いて購入することが大事。あとは時間が味方になってくれるだろう 」
そんな甘い世界はないということを、ある意味でその投資家さんに教えて頂いたような気持ちになりました。( その投資家さんは失敗事例として自分の物件資料を見せてくれたわけではありませんが… )
「 良い利回りで購入し、なるべく費用をかけずに直して、なるべく早くに賃貸客付をすることが大事だなあ。このどれかが欠ければその分の利益が減り、成功はおぼつかなくなる 」
今の自分には当たり前のことですが、当時、この方の危ない状況を見て、この不動産投資の基本が腑に落ちたような気がしました。
そしてその後、その投資家さんは宣言通り、「 オーバーローンがひけるなら買う 」という条件付きで、指値もせずに地方の大型物件に対して、満額で買付書を出しました。
しかし、銀行に持ち込むと満額の融資はつかず、「 オーバーローン 」を得るためには、僕の方で「 銀行を欺く資料 」を造らないといけない( 文書偽造 )ことがわかりました。
幸いにも私が勤めていた会社はエビデンス偽造を許していなかったので、僕は犯罪の片棒を担かずに済みました。そして、その投資家さんが僕の会社で物件を買うことはその後もありませんでした。
※余談ですが、僕が入社した不動産会社がエビデンス偽造をするような会社ではなくて良かったです。良い会社に恵まれました。20代中盤でしたから社内で常態化していたら流されていたと思います。
■ そして先日。見覚えのある物件が売りに出された
プーさんは、その人を助けなかったの? と思った方もいるかもしれません。実は、持っている物件がひどすぎて手遅れだと思いました。役に立ちたいとは思ったものの、何もできることが見つからないので逆に距離を置いていました。
そして最近になって、知り合いの仲介業者さんから物件を紹介頂きました。どうも、見覚えのある物件です。そうです。あの時、見せてもらった物件資料の中にあった一棟マンションでした。
「 売主直で預かっています 」というので、「 売主はもしかして〇〇さんですか? 」と訊くと、「 そうです。プーさんも知っていましたか。破産したみたいですよ。あいつ本当にバカでしたよね 」と言うので何とも言えない気持ちになりました。
たしかに言葉を選ばなければある意味、「 バカ 」なのだと思います。しかし、人柄が良い方だったのでとても悔しい気持ちになりました。そして残念ですが、「 やっぱりそうなったか… 」とも思いました。
不動産会社に勤務していた頃、たくさんの経験をさせて頂き、それが今も役に立っています。しかし、「 あの人とは会わない方が気持ちが楽だったな 」という出会いも幾つかあります。その一つが、また増えてしまいました。
その方には、奥様とお子さん二人がいらっしゃいました。独身なら破産しても良いというわけではありませんが、ご家族がいらっしゃる方の破産は、殊更こちらも辛い気持ちになります。
何度でも言いたいのですが、「 借入ができるから 」という理由で不動産を買わないで下さい。
今回のコラムは、自戒の意味もありますし、読者の皆さんがそうならないようにという思いもあって書きました。失敗のない不動産投資もビジネスもないと思っています。しかし、破産レベルまでの失敗はどうか避けて頂きたいと思います。