私、大家のプーさんのコラム連載35回目をご覧頂き、ありがとうございます! コラム35回目は、【 売却契約決済当日にキャンセルした買主とその後 】をテーマに、お話しさせて頂きます。
■ オーナーチェンジの戸建を利回り15%で売りに出す
今回の話題に出させて頂く物件は、北関東に所在する利回り15%の戸建で、金額は約400万円でした。売りに出すと、募集から5日ほどで、買付が入りました。また、買付が入った方以外にも、お問合せは10件以上あったそうです。
この物件は、購入してから2年超が経過しており、親しい賃貸仲介業者さんがいらっしゃらないエリアでした。そのため、空室で購入してから、満室にするまでに3カ月もかかってしまいました。
電話一本で何とかできるような強い繋がりのあるエリアの物件とは違うから、次に空室になったら、リフォームや客付けに手間がかかりそうだな。面倒だから売ろう…という考えに至りました。
■ 契約前にたくさんの質問が届く
買付を入れた方から、仲介さんを通じて色々な質問が届きました。「 不動産投資に慣れていない購入検討者さんみたいだな… 」と思いました。なぜかというと、質問の中に次のようなものが含まれていたからです。
・物件の所有者( 私のこと )は何歳くらいの人ですか?
・物件の所有者は、どんな本業の方ですか?
・物件の所有者は、どうしてこの物件を買ったのですか?
上記の質問については、仲介さんが僕に聞かずに全て回答して下さったようで、後から半分笑い話のような感じで、「 こんなことを質問されていましたよ 」と教えて下さいました。
その他にも、結構細かい質問があったようです。「 え? こんな質問をして、何になるんだろう? 」と思いました。これは仲介さんにも負担になっているだろうと思いました。
そのため、「 この方がまだ迷っていているようなら、他の方で進めていただいても大丈夫ですよ。私は番手を正しく守って欲しいとか、全く気にしませんから 」と仲介さんに伝えました。
ただ、やり取りがかなり進んでいた事もあったのでしょう。そのままの買主さんで、契約・決済の日程調整に進みました。
売り出し開始から5日で買付が入り、2週間後に契約決済の予定が決まりました。計3週間ほどの期間で、この物件の売却は完了する予定でした。
■ 決済前夜から当日にかけ、また質問が届く
決済前夜、買主の方は不安になったようです。大量の質問が届きました。その中には、前に聞かれた内容と重複する質問もあったようです。「 明日の契約決済はなくなるかもしれないな 」と思いました。
仲介さんには、「 この方、買うのが怖いのかもしれませんね。こちらから断っても大丈夫ですよ。金額も低い物件なのに、仲介さんに無駄なコミュニケーションで時間を使ってもらうのも申し訳ないですし 」と伝えました。
ただ、仲介さんには断れない理由があったようです。僕も同業だったのでわかるのですが、この段階までくると会社内で仲介手数料が入金される前提で数字計上をしていますし、司法書士の先生の来社調整も済んでいます。
仲介さんは、今からこの案件を振り出しに戻すのは困ると判断されたのだと思います。
■ 決済当日。やはりドタキャンに
契約決済の当日、僕は家族で最近話題の回転寿司で食事をしていましたw。家族でご飯を食べてから、そのまま契約決済の場所に向かうつもりでした。
僕の大好きなガリ( お寿司屋さんで一番好きな食べ物が、ガリなんですw )を食べていると、仲介さんから電話がありました。
「 すみません、このお客さんヒヨってます…。ダメです… 」
半泣きです。あと1時間もしていたら、僕は電車に乗っていたことでしょう。まだ自宅の近くの回転寿司店にいたので、それだけが救いでしたが、まさかのタイミングでのキャンセル連絡でした。
司法書士の先生は、既に決済会場に移動中だったようです。「 売主さんにて司法書士先生を手配して下さい 」と言われている案件ではなかったのが救いです。私が手配していて、決済の2時間前に、「 やっぱりキャンセル 」なんて連絡はしたくありませんから。
この購入検討者様は、今後、その仲介業者さんとお付き合いすることはできないでしょう。司法書士の先生も然りです。
■ 仲介さんにも買主さんにも文句を言わなかった理由
皆さんは、この話を聞いて、どう思いますか? 今回、僕は仲介さんに対しても、購入検討者さんに対しても、特に異議を唱えませんでした。
・買う気のない人にこれ以上時間や気持ちを使うことにメリットがない。それであれば、自分の時間は家族との時間に使いた
・無理やり購入してもらっても、後から仲介さんを通じて連絡が来たり、トラブルになったりするかもしれないので、買ってもらいたいと思わない
・僕自身がこの取引の為にかけた時間がわずか。仲介さんとの電話をしていた時間の計30分〜60分程度
・自分が手配した取引関係者( 本件ならば司法書士の先生 )がいない
・今回の物件が現金購入者を想定したオーナーチェンジ物件の為、逃してはならない時期( 繁忙期 )がない。家賃も入ってくる
そして、最大の理由はこれです。
「 仲介さんに文句を言ったり、余計な購入検討者様とのコミュニケーションを増やさせたりすることで、僕のことを『 面倒な人 』と認定されたくない 」
今回のコラムでお伝えしたかった事の肝はこれです。
「 不動産を購入する 」ためには、取引関係者の方々( 特に仲介業者さん )に、「 この人に売りたい 」と思ってもらえるかどうかがとても重要です。その時の「 買い方 」によって、その後、先方からの紹介が続くか否かに影響します。
■ 物件ではなく、物件を持ってきてくれる「 人 」を探している
ドタキャンされた3日後、別の方から買付が入りました。そして、その2週間後、無事に契約決済が完了しました。今回の方はスムーズでした。
私にとって、「 ドタキャン 」は自分の忍耐力や寛容さを試されるような出来事でした。嫌な事ではありましたが、それを良い形で仲介さんと乗り越えることにより、ビジネスマンとして、また人としての格が上がったような気持ちになりました。
私たち不動産投資家は、「 物件 」を探しているのではないです。
物件を持ってきてくれる「 人 」を探しているのです。
その観点を持って不動産業者さんと接していかなければ、一生、新規開拓をし続ける事になります。新規開拓をし続けている限り、それは「 事業 」です。「 投資 」にはなり切れません。
「 リピート取引に繋げるための買い方 」というのは間違いなくあるはずです。今回の買主さんはその真逆でした。今回の私の経験が皆さんの「 買い方 」を考えるきっかけになれば嬉しく思います。