はじめまして。宮崎で農家&大家をしている森雅也と申します。もともとはサラリーマンとして埼玉で営業の仕事をしていたのですが、34の時に宮崎に移住し、農業で起業しました。
施設栽培( いわゆるハウス栽培 )で主にトマト、レタスを作って12年。日々、いい農作物を作るためにがんばっています。
数年前に、加藤ひろゆき先生の「 300万円で大家になって地方でぶらぶら暮らす法 」を読み、大家を目指すようになりました。2013年に一度、アパートに買い付けを入れたものの融資が通らず玉砕、大家デビューしたのは去年です。
所有物件は現金で買った戸建2戸と、融資を引いて買ったデイサービス一棟で、現在、デイサービスの空いている土地に、賃貸併用のメゾネットアパートを新築する計画を進めています。
初期投資がかかる( ゆえに金融機関との交渉能力が必要 )、お金が入ってくるまで時間がかかる、設備の知識が必要、対人スキルが必要など、不動産と農業は共通点が多く、両方を並行して行うことのメリットは大きいと感じています。
百姓とは百の能力が必要などといわれますが、様々なスキルが求められる不動産賃貸業も、同じようなものだと感じます。
そんな私が「 プロ 」として紹介させていただくコラムのテーマは、「 除草 」です。農業はある意味、雑草との戦いです。そして、その経験は物件の除草にも役立つものです。そのノウハウを皆様にもシェアできればと思います。
■ 農場では防草シートや「 カタマSP 」が活躍
まず、農業の現場の除草について紹介します。カギは、いかに楽に、時間をかけず、草を生えにくくするか。もしくは、生えてしまった草を取り除くか、です。
私の場合、野菜はビニールハウスの水耕栽培で育てていますので、土があるのは通路部分です。そして、そこは防草シート( アグリシート )で覆っています。日光を遮断し、飛んでくる種子を土に触れないようにすると、雑草が生えません。
ハウスの外の通路も同じく防草シートで覆っています。
防草シートは平米あたり120円程度と安価なのですが、薄いので人が頻繁に歩くところや、車が通るところはすぐに穴が空き、そこから草が生えてきます。そこは除草剤で対応します。
また、もっと広いスペースについては、「 カタマSP 」という商品名の鉄鋼スラグの再生品を敷き詰めて固めています。特徴は水をまいて転圧すると固まる事、pHが高いので草が生えにくいことです。
「 カタマSP 」は新日鐵住金の製品です。付き合いのある土建屋さんにいえば手配してくれると思います。価格は大型ダンプ1台分( 5.5平米 )で1.3万円程度と、普通の砕石と同じくらいです。
アパートの駐車場はアスファルトを敷くのが一般的ですが、予算がかけられない場合や、取り付け道路、ベランダの下などで、選択肢の一つとして有効だと思います。
■ 除草の基本はやっぱり除草剤
さて、雑草の生命力は強力です。いくら対策を立てても、いたるところから生えてきます。それをどうやって除草していけばいいのでしょうか?
基本は除草剤です。「 ラウンドアップ 」が有名ですが、高価なので、グリホサートという同じ成分の入っている安価な除草剤をホームセンターで買うのがいいと思います。
グリサホートは根を枯らせるタイプの除草剤で、枯れるまで1週間程度かかりますが、次に生えてくるまで1カ月以上はかかるのが特徴です。
農家では裏技として、除草剤に尿素を約1,000倍で添加します。( 4リットルなら4グラム、2つまみ程度 )。尿素は肥料なので、植物が速やかに吸収します。その際に除草剤の成分も一緒に取り入れるため、早くよく効きます。
展着剤を混ぜるとさらに効果的です。展着剤は農薬を散布するときに、農薬が流れ落ちにくくする役割を果たします。除草剤に展着剤を混ぜることにより、水を弾きにくくして、浸透性を高めてより効きやすくします。
尿素も展着剤も農協やホームセンターで手に入ります。( 尿素は肥料コーナー、展着剤は農薬コーナー )。各種ありますが、安いもので十分だと思います。
■ 広い場所で活躍する散布機
広い場所に薬剤を蒔くときは、散布機を使います。私が使っているのは4リットル程度の圧力式の手動の噴霧器です。これもホームセンターに売っています。
グリホサート系は少量かかればいいので、安価な1,000円程度の噴霧器でも十分です。じょうろでかける方も多いようですが、ものすごく効率が悪いので、噴霧器を使うのがおすすめです。
私はプロなので( 笑 )、除草剤専用の少量散布ノズルが付いている、薬剤が泡状になるものを使っています。泡状になるので、かかったところがひと目で分かります。この器具は、5,000円から6,000円程度で入手できます。
4リットル程度の除草剤で1,000坪のハウス周辺に散布することが可能です。写真くらいの大きさの噴霧器で70坪ぐらいの面積に散布できます。
やってみるとわかるのですが、噴霧器を使っても、100坪を超えると大変です。太陽光発電の土地の除草など、広い場所では、エンジン式の20リットル程度のタンクが付いている背負式の散布機を使うと楽に散布できると思います。
と言いつつ、エンジン式は重いので、私はめったに使いませんが…。値段は写真のプロ仕様の散布機で6~7万円くらいします。
ただ、ホームセンターに行くと同じようなものが2万程度で見つかります。広い場所の除草が必要な方は持っておくといいかもしれません。
■ 斜面は除草剤禁止。仮払い機で物理的な処理を
除草の際の注意点です。法面( のりめん )と言われる、斜面に生えている草にラウンドアップ系の除草剤を使用すると、斜面の表面の土を固めている根を枯らせてしまうため、斜面が崩れる恐れがあります。
そのため、斜面には葉と茎だけを枯らせる除草剤を使うか、物理的に刈払機で刈り取るという方法で対処します。
葉と茎だけを駆らせる除草剤は、すぐに草が枯れる反面、根が生きているので、早ければ数日で生えてきてしまいます。具体的な商品名でいうと、バスタ、プリグロックスあたりです。
■ 手ごわいスギナの除草法
また、除草の中でも悩みの種になるのがなかなか枯れないスギナです。ラウンドアップ系の除草剤はスギナにはあまり効かないので、20倍ぐらい濃い濃度でかけるか、バスタを使うとよく枯れます。
もしくは、刈払い機を使うかです。法面や、放置していて藪のようになってしまった場合、そのままでは除草剤が大量に必要になりますし、入っていくのも大変なので、一旦刈払い機で刈る必要があります。
■ 刈払い機の使用には細心の注意を
刈払機は22ccの小型のループハンドルと言われる取っ手のついたものが軽くて使いやすいと思います。刈払い機は見ていると楽そうですが、実際には切った草を腰の回転で寄せる必要があり、結構な体力を消耗します。
また、よく切れる刃物が高速で回転するので非常に危険です。林業での死亡事故の原因のほとんどがこの刈払い機です。特に斜面で作業する場合は気をつけてください。
使用時、肩ベルトは必ず装着します。自分の足を切らないようにするためです。飛び石から保護するためにゴーグル、長靴、必要であれば前掛け等も使用します。
買ったばかりのボロ物件の庭など、草ボウボウの場所で刈払機を使用する際は、さらに注意が必要です。思わぬところに庭石があったり、自転車が倒れていたりするので、少しずつ切っていかないと、チップソーが弾いて大怪我をする可能性があります。
刈払い機の使用は、人の行き来が多い物件などの除草には不向きです。人気のないところで使うときも、完全装備で他人だけでなく、自分自身も怪我をしないようにしてください。
次回はアパートの駐車場に生えてくる雑草や花壇の雑草等の対処法をお伝えします。