• 収益物件掲載募集
  • 不動産投資セミナー掲載募集
  • 収益物件 売却査定

10,084アクセス

新型コロナウイルス感染拡大の今、大家さんができること

その道のプロ/伊部尚子さん_画像 その道のプロ/伊部尚子さん

2020/4/13 掲載

新型コロナウイルスの感染が拡大し、国民生活に様々な影響を及ぼしています。人々の暮らしを支える賃貸業界にも影響が出始めており、私たち管理会社にも家賃の相談が増え始めました。

大家さんたちからは「 今後入居している人が家賃を払えなくなり、滞納が起こるのではないか 」という心配の声が上がってきています。日本経済への影響についてリーマンショックと比較され、今回のことが「 コロナショック 」とも呼ばれています。

私はちょうどリーマンショックの時に23区内で約800世帯の管理の現場の担当者をしていました。その当時に賃貸業界に起こったことやその対応について、皆さんの参考になりそうなことをお伝えします。

■ リーマンショックで職を失った人々を救った「 住宅手当緊急特別措置事業 」

2008年9月に起きたリーマンショックの影響で、製造業を中心に労働者の派遣契約が打ち切られ、人材派遣会社が派遣労働者を解雇・雇い止めしたことから、仕事を失った非正規雇用の人が多数発生しました。いわゆる「 派遣切り 」という言葉が世の中に広まったのもこの頃です。

家賃が支払えなくなり住む場所を失った人が無事に年を越せるようにと、日比谷公園に「 年越し派遣村 」が出来たのが同年の大晦日でした。炊き出しの列に並ぶ人々の疲れ切った様子が、多くのマスコミで報道されました。

派遣村が開設されていた6日間に500人もの人々が日比谷公園を訪れたと言われています。賃貸住宅の管理の現場でも「 職を失って収入がなくなったので、家賃支払いを待って欲しい 」という入居者からの申し出が増えました。

そういう方は、再就職を目指すにも社会情勢が厳しく、安いところに引っ越しするにも時間とお金が必要であり、そして何より仕事がないと入居審査に通らないため、身動きできずにいるうちに次の家賃支払いの期日がやって来てしまうという状況でした。

住む場所を失った人や失う恐れのある人が増えたため、2009年10月に厚生労働省が「 住宅手当緊急特別措置事業 」を開始し、全国の市区町村を窓口にして、最長9カ月間の住宅手当を支給しました。

当時私は新宿区の支店に勤務していましたが、住宅手当を受給するための代理納付の書類に印鑑を求める入居者さんが何人も来られました。申告から手当受給までに時間がかかるため、一刻も早く手続きを行いたいという方が多かったのでしょう。

住宅手当の額は、各自治体の生活保護の住宅扶助特別基準額に準拠した上限額が設定されており、住宅手当の額が家賃に満たない場合は差額を入居者が負担します。

管理会社は二口に分かれて振り込まれてくるものを合算して大家さんに支払うのですが、役所名で「 シンジュクク 」などと一様に振り込まれて来るものが誰の分の住宅手当なのかを照合するのが大変でした。

状況が悪化する前に住宅手当を受給してもらおうと、職を失ったことが理由で家賃が払えないという人には管理会社も積極的にこの制度のことを伝えていました。

貯金を取り崩したり、連帯保証人に家賃を肩代わりしてもらったりする人もいましたが、長期間続けるのは無理があります。申請から支給開始まである程度の時間がかかるので、物件所在地の自治体の福祉担当部署に早めに相談に行くように勧めていました。



■ 困っている入居者さんに「 住居確保給付金 」を教えてあげよう

そして今、当時の「 緊急特別措置事業 」と同じように使える制度が、「 住居確保給付金 」です。

「 緊急特別措置事業 」は緊急特別措置と言いながらも長引く不況で継続され、2013年4月に「 住宅支援給付制度 」と名前が変わり、今は2015年4月に施行された生活困窮者自立支援法に基づく制度の一つである「 住居確保給付金 」となっています。

この制度は、職を失ったことが原因で生活保護受給者になってしまう人を減らし、自立を支援することを目的としており、一時的に家賃が支払えなくなってしまった場合に家賃相当額を一定期間、助成してもらえるというものでした。

申請するためには世帯収入、貯蓄額、本人が主たる生計維持者であること、ハローワークで求職活動を行うことなど満たすべき要件がいくつかあり、支給期間は原則3ヵ月、状況により最長9ヵ月まで延長可能となっています。

今回、新型コロナウイルスによる感染拡大の防止策のために、休業が原因で収入が減少した人や、仕事が減ったフリーランスの人が同様の状況に至った場合にも、対象となるように支援が拡大されています。

また、厚生労働省が2020年3月9日付で各自治体の担当部署に出した事務連絡によると、新型コロナウイルスに関連した住居確保給付金の活用については、外出しにくい今の状況を鑑み、当面の間、面談や面接などの要件が緩和されるとのことです。

参照:住居確保支援金の要件緩和について( 令和2年3月9日 )
※年齢要件、求職活動要件が従来より緩和された

もし、これを読んだ大家さんの物件に、離職や休業したことが原因で家賃支払いが困難になりそうな入居者さんがいらしたら、是非この制度を教えてあげて下さい。

事前に「 所有物件所在地の自治体名+住居確保給付金 」で検索して、窓口を調べておくことで、スムーズに案内ができると思います。( 「 収入が減った人 」向けの施策の施行は4月20日ですが、相談はその前から可能 )。

リーマンショック の時に私が出会った「 住宅手当緊急特別措置事業 」を利用した入居者さんは、多くの方が生活保護受給者になることもなく、悪質な家賃滞納者になることもなく、新たな就職先を見つけたり、安い物件に引っ越したり、実家に帰るなどされていました。

万一、住宅確保給付金の支給要件には満たなくても、他の支援策が受けられる可能性もありますのでまずは相談してみることが大切です。

国民生活への影響が大きくなれば、国が新しい支援策を出したり、今までの支援策の要件緩和などが行われる可能性もありますので、最新情報を常にチェックしておきましょう。



■ 入居者さんの情報を確認しておこう

また、この機会に大家さんには、貸借契約の内容から分かることを一つ一つ確認して頂きたいと思います。

・入居者さんはどんな家族構成なのか
・連帯保証人さんがいるならどんな関係でどこにお住まいなのか
・連帯保証人さんは持ち家なのか賃貸なのか、収入は何から得ているのか
・契約者ご本人や連帯保証人さんの携帯番号やメールアドレスなどの連絡先は?

万一の時に連絡が取れるようにしておくことは大切ですし、収入を得ている先を把握することで、今後コロナウイルス感染が拡大した場合に影響が出そうかどうか、ある程度予測することが出来ると思います。

そして、この機会に思い切って入居者さんたちにご連絡してみるのも良いと思います。自宅待機ということは、大家さんの物件にずっと籠っていらっしゃるということです。「 変わりなく健康で過ごせていますか 」と大家さんから連絡があったら、入居者さんの不安は軽減するに違いありません。

今までコミュニケーションを取っていない場合、いきなり電話はしにくいと思うので、お手紙作戦ではいかがでしょうか。手書きのメッセージでも良いですし、マスクや美味しい紅茶などが同封されていたりしたら、こんな時ですから心に染みると思います。

大家さんの連絡先を改めてお知らせし、相談しやすい雰囲気を作っておくことは、賃貸経営にとってもマイナスにはならないと思います。



健美家サイト会員登録で最新コラムやニュースをチェック!

プロフィール

■ 伊部尚子(いべなおこ)さん

morisan

株式会社ハウスメイトマネジメント
ソリューション事業本部 課長

■ 経歴

独立系の賃貸管理会社ハウスメイトグループで働くこと20年。

仲介営業、仲介店長、管理の現場担当、同社女性初の管理支店長、管理契約の提案営業を経て、現在は賃貸住宅をお持ちの大家さんのお悩みを解決する部署で働く。

金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。

大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。

ページの
トップへ