前編に続き、神戸で戸建てや中古アパートを買い進めている ちえざぶさん にお話を伺います。本日の後編では、借金が嫌いだった ちえざぶさん が、融資を受けて拡大することを決めた理由、会計事務所勤務やDX大家の会事務局という立場からの、不動産投資初心者へのアドバイス等もお聞きしました。
■ コスト削減のためのDIYに半年もかけるという失敗
華子
一棟目の新築アパートとは違い、次に買った戸建ては中古です。リフォームはどうしましたか?
ちえざぶさん
その戸建はそんなに傷んでいなかったので、植栽の伐採やベランダの手すりの塗装、襖の貼替を家族でDIYをしました。あとは管理会社紹介の業者に30万程の予算でリフォームしてもらいました。ここまでの2棟が個人所有でした。
そして法人を設立して初めての物件も戸建で、こちらは「 リフォーム済み 」で売りに出ていました。ところが、よく見ると仕上がりが中途半端で、なぜか壁が綿壁にリフォームされていたんです。
これはどうかなと思い、お金もなかったので家族で協力して、シーラーで固めて上からクロスを張りました。他に、グレーに塗られていた棚を白いペンキで塗り直すなど、がんばってDIYで直しました。
華子
働きながらのDIYでは、時間の確保が大変だったのでは?
ちえざぶさん
そうなんです。コストは抑えられたんですが、時間をかけすぎて募集できたのは半年後。しかも、私は土日の休みに加えて平日も週に一日くらい仕事を休んでリフォームしていたんです。時給で働くパートですから、休んだ分だけ給料が減ります。
今考えると非効率だったと思います。でもこの経験のおかげで、職人さんの仕事の大変さを知ることが出来ましたし、DIYで自分たちで安くきれいに出来るところとプロに頼んだ方がいいところとを判断できるようになりました。
外注してリフォームを終わらせて、早く家賃収入を得たほうがよかった、仕上がりだって圧倒的に業者のほうが上手なんだから、と気づけたのもこの経験があればこそです。
DIYでシートを貼ったキッチン
DIYで洗面台の扉にシート・壁にタイルを貼った
華子
DIYで節約するつもりが、思ったより時間がかかってしまうという話はよく聞きます。
ちえざぶさん
まさにそれです。この経験を生かして、それ以降の戸建てはプロにもお願いしました。私が宅建士の試験勉強をしていて、時間がなかったという理由もあります。
完成した部屋を見ると、やっぱり仕上がりが全然違う! それ以来、自分たちで簡単にできるところ以外は業者さんに外注するというスタイルでやっています。
■ リフォームが家族の体力づくりになり、楽しみにもなった
華子
ぜんぶ外注するのではなく、DIYでのリフォームも残されているのですね。
ちえざぶさん
はい。法人2戸目の戸建は、階段にクッションフロアや滑り止めを貼ったり、天井や外のガレージの手すりを塗装したりしました。そういう簡単なことだけ家族でやって、大変なところはプロに任せたら、効率よくパッパと出来たんです。私にとってはこれがいちばんいい形かなと思いました。
それともう一つ、DIYをして良かったことがあります。娘がDIYをしてすごく楽しかったようなんです。「 今度の物件は何かせえへんの? 」って聞いてくるんですよ。体力作りにもなりますし、しかも楽しいんだったら、続けていこうと思いました。
娘は成人してからも、気圧などの影響を受けやすく、朝起きられない日がよくあります。でも、DIYなら体調のいい日を選びながら進めることができますからね。

娘さんが枝切を手伝ってくれているところ
華子
娘さんのためにと始められた不動産投資ということですから、よかったですね。
ちえざぶさん
娘にはいつも私がやっていることを説明しているので、不動産のこともだいぶ詳しくなってきました。公庫に行って、こんなことを言われたとか、全部伝えています。
今では「 お母さん、この物件ならもっと安く指値せなあかんやん 」などと言ってきます( 笑 )。まだ役員には入れていませんが、いずれは引き継ぎたいです。
華子
いい大家さんになりそうですね( 笑 )。その戸建ての後は、どんな物件を買われたのでしょうか?
ちえざぶさん
昨年、小さなアパートを2棟買いました。6月に買ったアパートは2K×4戸、12月に買ったのは3K×2戸のメゾネットタイプです。やはり規模を拡大するには融資を受けてアパートを購入するのが不可欠だと考えたためです。
また、去年は最初に買った戸建てを売却し、2棟の戸建てを新たに買い増しもしています。我が家は夫がもうすぐ定年ということもあり、悠長にやっている時間はありません。
実は、不動産投資を始めた当初、スタートから5年になる2020年には5室は持っていたいという目標を持っていました。月に20万〜25万円のイメージです。今の時点で、それはクリアすることができました。
華子
融資を受けることには抵抗はなかったですか?
ちえざぶさん
以前は、借金=怖いというイメージを持っていたのですが、今は変わりました。不動産投資は融資を使わないと拡大スピードが遅くなりますよね。
大家の会でも、平気な顔して何億と借りている人がいっぱいいます。最初は、「 すごい世界に来てしまったな 」と思いましたが、今はだいぶ慣れました( 笑 )。
正直、一棟目の痛手は大きかったですが、その後、戸建てを買って直して貸して、で実績を積み、3期目は決算書が黒字になったことで、融資を受けられるようになりました。
融資はちゃんと返済の計画ができて借りていけば危険は少ないし、仮に返せなくなったら物件を売ってチャラにしたらいい、そういう考え方も教えてもらい、納得ができました。これからも融資は利用させてもらうつもりです。
2戸目の戸建てのキッチン( リフォーム後 )
去年購入した戸建のLDK( リフォーム後 )
2戸目の戸建てのリビングと階段( リフォーム後 )
■ 大家の会事務局として見た、不動産投資初心者へのアドバイス
華子
さまざまな困難を乗り越え、ようやく本格的に規模拡大に向けて動き出したということですね。ところで、ちえざぶさんはDX@母ちゃんさんが主催されている「 DX大家の会 」の事務局もされているそうですね。どういった経緯があったのですか?
ちえざぶさん
1棟目で失敗したかなと思っていた頃、DX@母ちゃんさんに出会い、相談に乗ってもらったんです。そんな折、DX@母ちゃんさんの物件見学会に行った人たちで作っていたLINEグループから発展する形で、2018年からDX大家の会が立ち上がりました。
第1回目のセミナーの準備はDX@母ちゃんさんが一人でされていたのですが、それをお手伝いしたいと思い、自分から申し出ました。
実は、最初に就職した一般財団法人でのメインの仕事が研究会やセミナーを主催し、事務局をするというものでした。ですからセミナー準備の大変さも知っていましたし、会員名簿の管理やセミナー運営の経験があったんです。
DX大家の会は、私が「 こういう場があったらいいな 」と思っていた、楽しみながら情報交換ができるコミュニティーになっていると思います。現在約570人の会員がいて、4割が女性です。年に4回くらい、セミナーを開催しています。
華子
女性が多いんですね。事務局をされる中で、たくさんの大家さんに会ってきたと思います。これから不動産投資を始めようという人にアドバイスはありますか?
ちえざぶさん
機会があればセミナーや懇親会に参加してみることをおすすめします。そして、その時に成功されている方に教えてもらったことは素直に実行してみてください。 私もDX@母ちゃんさんにアドバイスいただいた通りにしたら、色々なことがうまくいきました。成功している人ってすごいなと思いましたね。
それと、SNSで発信していくことをおすすめします。自分の言葉で発信すると、必ず何かが返ってきます。こんな物件を見に行きましたとか、こんなランチを食べましたとか、なんでもいいんです。 発信するとコメントで色々な方と繋がったりするじゃないですか。そういう繋がりって大きいですよ。
セミナーの様子
華子
確かに、SNSのつながりが不動産投資に役立ったというお話はよく聞きます。
ちえざぶさん
そうですよね。それと当たり前ですが、勉強はしっかりすることが大切です。私も最初、知識がないまま始めてしまい、1年間空室という辛酸を嘗めました。また、不動産投資は事業なので、不動産の知識だけではなく簿記3級ぐらいの知識は絶対にあった方がいいと思います。
私は会計事務所に勤めていたので、経理関係のことをよく尋ねられるんですが、お金に関する知識のない方が多くて心配になります。「 貯金がないけどどうすればいいですか? 」という質問も結構多いです。それはもう、「 がんばって貯めましょうね 」とアドバイスするしかありません( 笑 )。
華子
ちえざぶさん自身は、どのように不動産投資に使うお金を用意しましたか?
ちえざぶさん
基本はこれまで貯めてきた私個人のお金です。娘が学校に行けなくなり、県立の通信制高校に入学したんですが、年間の学費が教科書代の2万円だけだったんですね。
だから娘の教育費もひとまず物件購入費に充てました。でも、今すぐ大学に入りたいと言われても大丈夫なように初期費用くらいはおいてありますよ( 笑 )
華子
ご苦労もありましたが、不動産投資を始めて良かったですか?
ちえざぶさん
はい。それはやっぱり、娘の将来に希望が持てましたから。学校に行けなくても人並みに働けなくても、不動産賃貸業でなんとかやっていけると思えるようになりました。
あとは、不動産投資を通じて、世の中を違う角度から見ることができるようになったのもよかったです。大家の会のみなさんと一緒に勉強するのも楽しいです。
将来的には、年間家賃収入で2,000万円を目指しています。私の仕事はリモートワークと相性がよくなくて、コロナで続けにくくなり、会計事務所は辞めました。
でも宅地建物取引士もとりましたし、大家業で少し結果を出せたことで自信がつきました。これからも家族と一緒に、色々なことに挑戦していきたいと思っています。
華子の編集後記
リフォームが家族の楽しみになったというのはいい話ですね。大家の会運営を通して、仲間と楽しく学んでいこうというスタンスは、今後の規模拡大を予感させるものでした。初心者の方へのメッセージも参考になります。ちえざぶさん、ありがとうございました。