今回の大家列伝は、36才で約1億円の純資産を築いたという井上はじめさんにお話を伺います。井上さんの投資のメインは投資信託。手取り約20万円の約半分を投資し、独自の運用法で資産を増やしてきたといいます。
そんな井上さんが不動産投資を始めたきっかけは、交通事故にあい、「 給料以外の収入を持たなければ 」と強く感じたことでした。この前編では主に、投資信託でお金を増やした方法を紹介します。
■ 毎月10万円を積み立てて、33歳で純資産1億円を築く
華子
自己紹介をお願いします。
井上はじめさん
宮崎県出身で東京在住の井上はじめです。年齢は36歳で、約1億円の純資産があります。就職した年から投資信託の積み立てを始め、以降コツコツと資産を増やしてきました。金や仮想通貨にも毎月一定額を投資し、2015年からは不動産投資も始めました。
華子
資産1億円とはすばらしいですね。どのような内訳ですか?
井上はじめさん
メインは投資信託で、4,000万円くらいです。それ以外に個別株が500万円、積み立てていた仮想通貨も大きく増えて約1,000万円、以前交通事故にあった時に支払われた保険金が約1,000万円あります。その他に、不動産資産が約9,500万円ありますが、こちらは借金もあるので、それを差し引いて約1億円の純資産という内訳です。
昨年は僕が1億円貯めるまでの過程を紹介した『 33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由 』を刊行しました。
華子
本の題名に「 手取り22万円の僕が 」とありますが、給料が多かったわけではないのですね。
井上はじめさん
はい。新卒時の給料は約20万円でしたし、30代はそれより少し増えたくらいです。いわゆる大企業みたいなところで働いていたわけではありません。そんな中、節約生活で資金を作り、毎月10万円を投資信託の購入にあてていました。いわゆる「 ドルコスト平均法 」というものです。
2017年の給与明細
華子
毎月10万円を作るのは大変だと思うのですが。
井上はじめさん
僕は学生時代、家賃を除くと3万円で生活できていたくらいなので、節約生活には慣れていました(笑)。例えば、ランチは会社の冷蔵庫に食パンを置いておいて、ハムとレタスを挟んでお手製のサンドウィッチを作ったりしています。そして食事以上に大事な、通信・保険・光熱関係などの固定費をしっかり抑えて投資に回すのが、僕のやり方の基本です。ちなみに結婚していますが、妻の給料も20万円以下です。
華子
不動産の方は、現在はどんな物件を所有されていて、それによる収入はどれくらいですか?
井上はじめさん
区分マンションが5軒、アパートが1棟、あとはマイホームです。これらから毎月50万円ぐらいの家賃収入があり、キャッシュフローは月25万円ちょっとです。
■ 就職活動中に見た新聞記事から、世界経済への投資を思いつく
華子
投資で資産を作ろうと思ったきっかけは何ですか?
井上はじめさん
就職活動をする時って、自己分析みたいなものを行いますよね。その時に、自分はなんて平凡な人間なんだろうって思ったんです。21年間生きて、察したんですよね。将来はたいして出世できないだろうし、人並以下ぐらいの給料しかもらえないんだろうなぁと。
そうやって漠然と不安を抱いている時に、新聞でとある記事を見つけました。それは、「 世界の人口が66億人を超えた 」という内容で、「 人口の増加に比例するように世界のGDPもすごい勢いで増えている 」と書いてありました。
読んだときは「 へぇ、そうなんだ 」という程度でしたが、今思えばこれが人生最大の発見ともいえる気付きを与えてくれました。
華子
何を発見したのでしょう?
井上はじめさん
僕たちの世代の人って、「 景気は悪くなるもの 」という認識を持っているのが普通だと思うんです。その認識の元となっているのが、出生率の低さによる人口減少。それが日本のGDPの伸び悩み、高齢化社会、年金問題といったネガティブな問題に繋がっています。
ところが世界を見てみると、まだまだ人口も経済も成長しているんです。自分なりに調べてみると、2050年までの人口予測は、統計学の中ではかなり確実なものということがわかりました。それでシミュレーションすると、「 世界経済に投資しておけば、30年で4倍ぐらいにはなる可能性が十分にある 」という結果が出ました。
毎月10万円でも30年で3,600万円、世界経済に投資すればそれが4倍に増えて億万長者になれると発見したときは興奮しました。一言でいえば、不安しかなかった自分の将来を億万長者という明るい未来に変えられる可能性を発見したんです。
華子
井上さんが資産運用の手法として選ぶ基準はどんなところですか?
井上はじめさん
売り時や買い時を時間単位や数日単位で見極めなければいけないものはやりません。基本的に、毎月一定額を積み立てする手法を選んでいます。タイミングを見て売り買いしたり、マメに更新しないといけないようなやり方は、痛い目にしかあっていません( 笑 )。
華子
仮想通貨は動きが激しいイメージがありますが・・・。
井上はじめさん
確かに現時点では値動きの激しい投機マネーというイメージですし、危うい印象を与えがちです。ただし、その元となるブロックチェーンの仕組みを考えると非常に有能なものです。将来は仮想通貨がもっと一般的なものとして身近なところに入り込んでくると考えています。だからこそ日々の値動きは一切気にせず、2年前から毎月一定額を積み立て投資しています。
■ 10年間均等に投資をしていけば、どんなリスクも吸収できる
華子
現在、投資信託で約4,000万円の資産があるということですが、コロナかでの暴落など不安はないですか?
井上はじめさん
はい。積み立て続けるだけじゃなく、ある時期から一定のルールの元で売却もするようになって、不安はなくなりました。2007年に積み立てを始めて、初めて売却したのは2013年。それまでの軽減税率が撤廃されるというので一度、リセットしようと思ったんです。
このときに自分の銀行口座にどんと2,000万もの預金残高が入ってきて、すごくドキドキしました。このお金の使い道をどうしようと考えた時、「 ある程度増えたけれど、これで終わりじゃない。自分は2050年に4倍にするために始めたんだよなー 」と、初心を思い出し、また積み立てを始めました。
ただ、過去にリーマンショックで資産を減らした経験があったので、2,000万が1,000万に下がったらどうしようという不安はありました。それで、この2,000万円を再投資する時、新しいルールを加えたんです。
華子
どのようなルールでしょう。
井上はじめさん
過去の景気サイクルを見てみると、10年ぐらいの周期で暴落や恐慌が来ているのがわかりました。それで思ったのが、「 投資するタイミングを10年均等に分けさえすれば、ほぼノーリスクじゃないか 」ということです。
実際、1920年ぐらいから過去の世界の株の指数に合わせて10年間に分けて積み立てた場合のシミュレーションをしてみると、その10年のどのタイミングで始めても、トータルでは損をしないということがわかりました。仮に、始めてすぐに世界恐慌みたいなことが訪れても、すぐに戦争が起こってもです。
それだけでなく、2割上がったら売り、また買い戻すというルールも加えました。もともと、かなり確実といわれる人口予測をもとに世界経済に投資しているため、リスクは少ないですが、これらのルールを付け加えることで、さらに安全性が増したと思います。難しそうと言われることもあるのですが、投資信託に費やす時間は月に1度、10分くらいです。
■ 交通事故をきっかけに不動産投資に興味を持つ
華子
投資信託で資産を増やした井上さんが、不動産投資をしようと思ったきっかけを教えてください。
井上はじめさん
実は、2012年の年末に交通事故に遭ってしまったんです。病院のベッドで2か月間も身動きが取れないくらいの大ケガでした。入院中は時間があるので、人生のことや将来のことをじっくり考えたんです。
アンラッキーなことに、結婚式を3カ月後に控えたタイミングでの事故でした。妻にも大きな心配をさせてしまいましたし、ケガをしたことで以前にも増してお金のことを考えるようになりました。
その中で思ったのが、「 このまま身体が思うように動かなければ、会社員の仕事を続けられないかもしれない 」ということです。そこで、「 給料以外の収入を得なければいけない 」と強い危機感を持って、副収入を得る方法を探しました。
華子
交通事故がきっかけだったのですね。
井上はじめさん
はい。その時点ですでに投資信託では成果が出ていたのですが、それは将来の為の投資で、毎月のキャッシュフローはありません。最初、デイトレードで稼ごうと思ったのですが、精神的に休まらず、一度増えたものの、数カ月でゼロになってしまいました。
与沢翼さんの主宰する「 与沢塾 」でも学んでブログやアフィリエイトも始めましたが、秒速で100万円どころか、2カ月で1円も稼げませんでした。手法がダメというわけではなく、自分に合わなかったと思います。色々なチャレンジに失敗して、次に勉強を始めたのが不動産投資でした。
華子の編集後記
行動のすべてのベクトルが資産を増やすこと、そして自由に生きることに向いている井上さんですが、決してストイックな雰囲気ではなく、とても穏やかな話し方をされるのが印象的でした。16時公開の後編では不動産を人生にうまく活用する方法や今後の目標などをうかがいます。お楽しみに。