後編では、53さんの物件の購入の仕方や、融資のアプローチ方法なども伺っていきます。また、話題の「 FIRE 」に関しても考えも伺いました。
■ 積算割れのしない新築アパートの建て方
華子
53さんは、物件をどのように探していますか?
53さん
ポータルサイトが半分くらいで、残りの半分は不動産屋さんからの紹介で買っています。私は押しに弱い性格で、勧められると買ってしまうので、オーナーチェンジ物件で未だに見ていない物が3つあります(笑)。
華子
53さんの購入基準を教えてください。
53さん
利回りで言うと、築古戸建ならリフォーム後で最低12〜13%くらいです。そこまで高い水準では買っていません。それよりも共同担保に使えるか、手放す時に売りやすいか、リフォームに費用がかかりすぎないかということを重視しています・・・のはずなんですが、100万円と自分で予想したリフォームの見積もりが現在200万円を超えている真っ最中です!
華子
融資を使って購入する際に、銀行に対してプレゼンはしますか?
53さん
資料を何十枚も作りこんで用意することはないですね。必要な情報を抽出して提示しています。最初は頑張ろうとたくさん資料つくったんですけど、こちらの説明に食い気味にはい、はいと心のこもっていない返事をされるので、もうやめました(笑)
融資付けという意味では、新築アパートではサブリースを利用しているのも有利に働いていると思います。お世話になっているのは建築とセットになっていない独立系のサブリース会社です。
サブリースにネガティブな印象がある方もいると思いますが、企業がサブリース契約をするということは、その水準の家賃が取れるというファクトを調べつくしているということです。銀行へのプレゼンの際もこのことを伝えました。
華子
工務店はどのように見つけられたのでしょう?
53さん
自力で見つけました。自分なりのコツなのですが「 共同住宅 建築請負 」というキーワードで検索すると、アパートの建売業者さんではない、アパート建築の実績のある工務店さんがヒットしやすいなと思いました。
銀行が建物の評価をする時に、木造の平米単価をいくらで評価しているかを教えてくれました。それよりも低い単価で建てられる工務店を探してきて、建物を建てれば、土地の購入費用が高すぎないかぎり融資も否決されにくいのではと。
新築を建て続けると信用棄損になりやすいといわれますが、安く土地を買って、共同担保も入れて積算の底上げをしつつ、銀行評価の建物単価より安い工務店で作れば理論上積算割れしにくくなります。これはポールさんもセミナーで仰っていました。
華子
一棟目の新築のアパートの融資条件はどうでしたか?
53さん
総事業費は15,550万円で、頭金は1,200万円を入れました。融資期間は30年、金利は1.6%です。ちなみにサブリース手数料は家賃の10%です。高く見えるかもしれませんが、入居募集時の広告費や現状回復費もコミコミなので、適正な経費だと思っています。
ただ、サブリースを使うと入ってくる賃料がどうしても相場よりも低くなるので、空室が出るたびに少しずつ家賃を上げています。
■ つらい出来事もネタに昇華できるのが関西人
華子
不動産投資を始めて、良かったことを教えてください。
53さん
良かったことは収入が増えたことです。もしかして、増えたように見えているだけかもしれませんが(笑)。
もともと商売が好きで、前職の頃からヤフオクやebay( 海外のオークションサイト )で転売をしていました。たとえば任天堂DSが日本で発売された時は、アメリカで未発売の期間に輸出転売することを繰り返したり。
夜中に会社から帰宅して12時頃に24時間営業の郵便局に持ち込んだりしていたのですごく労力を使いましたが、その年だけで売上げが1,000万円ほどになりました。
その時に、本業以外の商売をやると本業に知識やスキルが返ってくると感じました。不動産投資も始めてから視野が広がり、本業に役立っていると思います。
それ以外では、ドライブが好きになりました。この道は広いなとか、ここにこういう施設があれば住みやすいなとか自然と考えるので、どこに行っても発見があって旅行も今までより楽しめます。トータルで人生が豊かに、ハッピーになった気がしますね。
華子
逆に、不動産投資でつらかったことはありますか?
53さん
あります。ブログでもネタにしているほど、様々なトラブルがありました。先日も二棟目の新築用地の建物を解体したら、基礎の下から基礎が出てきて追加工事代金がかかったり、一棟目の時も解体業者さんとトラブルに発展したり、一時期は本当に心が折れそうになりました。でも関西人なので、少し時間が経てばなんでも話のネタにして昇華しています(笑)。
振り返ってみるとすべて笑い話です。「 もうアパートなんか懲り懲りだ!」と思ったこともありますが、自分の決めた名前のアパートが無事に竣工すると「 やって良かったなあ 」と思います。
華子
不動産投資をしてみて、想像と違ったことはありますか?
53さん
思ったほどモテないですね(笑)。基本的に人妻とデートすることを目的に生きているのですが、実際は全然できていません。不動産をやっていると怪しく見えるのか、以前より警戒されている気さえします(笑)。
華子
・・・それは聞かなかったことにいたしまして、不動産を始めたことに関して、ご家族の反応はいかがでしたか?
53さん
奥さんとは22歳の時に結婚したのですが、いい意味で「 私に依存している 」ところが彼女の良いところです(笑)。
仕事面で私の足を引っ張ることはないですし、独立する時も不動産を始める時もいろいろ質問はしてくるのですが、きちんと説明すれば納得してくれます。好きにしたら?という感じで、嫁ブロック的なものはありません。
若いときから、わたしが夜中まで作業して副業で1,000万円売り上げている姿を見たりしているので、仕事ぶりに信頼をおいてくれているのかもしれません。
■ 必ずしも不動産投資をする必要はない?
華子
セミリタイア、FIREについての考えをお聞かせください。
53さん
私は不動産の収入だけで生活するだけのFIREには反対なんです。分かりにくい例えかもしれませんが、この地球上に100人しかおらず、100人しか生産労働人口がいない状況で、1人だけ全く働かず、家賃収入だけで暮らすとなったら、どうでしょうか?そしてそんな人どんどんが増えていったら誰が働いてくれるのか。
学校の文化 祭でもそうですが、みんなで何かを作り上げていく中で、働いていない人がいるというのは、個人的には良くないことのように感じます。労働力を投下するタイミングが違うだけなのかもしれませんが、身体や脳みそがきちんと動いて働けるなら働いた方がいいのではないでしょうか。
セミナーなど、人に教える仕事は学習塾と同じようなもので立派な職業だと思いますし、他にも色々な方法がある気がします。無茶をする必要はないですが、部屋にこもって隠居生活ではなく、何らかの活動を通じて社会に価値を与えていくのがいいように思います。
華子
今後のビジネス面での目標はありますか?
53さん
本業や不動産からの収入があるうちに、新規ビジネスを立ち上げたいです。通常、新規事業のスタート時は月々に出ていくコストがありますが、それを不動産の家賃収入で賄えれば、今までできなかったチャレンジができます。
新規ビジネスの内容は定まっていませんが、通販でも清掃業でもなんでもいいので、家賃収入以外の収入を自ら生み出していきたいです。そのためにも、不動産投資での失敗は避けたいところです。
華子
今後の人生面での目標はありますか?
53さん
将来はどのような形で働くか未定ですが、仕事をしながらも、時間と場所を自由に選べる環境を作れたらいいなと思います。北海道から沖縄まで各都道府県に物件を持って、「 視察 」と称して旅をするのもいいですね。もちろん、助手席には美しい人妻が乗っており・・・。
華子
( 話を遮るように )はい。ありがとうございました。これから不動産投資を始める人へのアドバイスをお願いします。
53さん
まだ駆け出しの可愛い大家さんなのでアドバイスというのはおこがましいですが、零細企業経営者の端くれとしてご意見しますと、物件が高止まりし、サラリーマンへの融資も厳しい状況が続いています。
行き詰っている人がいたら、物件を買って、リフォームして、それを貸して家賃収入を得るということから一旦、離れてみることをおすすめしたいです。
買えずに悶々とした日々を過ごすのではなく、例えば先輩大家さんにくっついて清掃やリフォーム、未払い家賃の取り立てを手伝うなど、不動産業に関わる別のことで収入を得る方法を検討してみるのがいいと思います。もしかすると、家賃以外の収入を得る方法を研究したほうが、早道になるかもしれません。
華子
詳しく教えてください。
53さん
私の発言を聞いて、「 53は年収が高くて、創業者利益の現金を持っているから、買えているだけじゃないか 」と思う方もいると思います。ただ、わたしは単に不動産投資で有利な属性の一つをたまたま持っていたに過ぎません。大切なのは、自分を活かせるものを使うことだと思います。
よく融資の工夫をほめてもらいますが、私は最初の戸建でリフォームに350万円もかけてしまいました。ここだけ見ればDIYができる器用な人からすれば笑われると思います。
各自が持つ能力やスキルの中に、不動産に活かせる要素があるはずなので、それを発見して不動産投資にどうつなげるかを考えてみてはいかがでしょうか。
極論を言うと、べつに不動産を買わなくてもいいと思います。過熱する市場で無理に戦うことをせず、別の道で不動産に関わっているうちに、何かの拍子でいい物件情報が入ってくるかもしれません。
ゴールドラッシュの時にツルハシやジーパンを売っても良いわけです。遠回りに見えることが、近道になる可能性もあります。
編集後記
エリートサラリーマンといった風情が印象的な53さん、家賃収入を得ることから、一旦離れて考えるというお話は、起業家ならではですね。各自が得意なことや有利なことを生かせばいいというお話は勉強になります。53さん、ありがとうございました!理解のある奥様を大切にしてくださいね。(取材担当:アリ)