今回の大家列伝は、神奈川県を拠点に不動産賃貸業を行っている、きょうへいさんに登場していただきます。大学卒業後、銀行に入社したものの、朝8時から夜8時まで会社に拘束され、60才までこの生活を続けるのは無理だと気付き、不動産投資を始められたそうです。
■ 様々な副業を経験し、最後にたどり着いたのが不動産投資
華子
自己紹介をお願いします。
きょうへいさん
神奈川県で不動産賃貸業をしながら暮らしているきょうへいと申します。所有・転貸物件併せて160室( 所有68室、転貸92室 )ほどを賃貸しています。
所有68室に対して、借入は約1.7億円、家賃収入は4,500万円で、税引き前キャッシュフローは満室想定で2,200万円です。その他、転貸の収益があります。
経歴としては、大学を卒業してからメガバンクに入りました。憧れて入った会社だったのですが、入ってみると保守的な組織風土に全く肌が合いませんでした。また一人での新人芸を強制されるような体育会系カルチャーも苦手でした(笑)。
華子
一人での新人芸はなかなか大変そうですね。そもそも銀行員になろうと思ったきっかけはなんでしょうか?
きょうへいさん
銀行員になったのは、「 金融の仕組み 」自体が好きだったからです。今から振り返ってみると学生だったのでよく理解していませんでしたが、預金を集めてそれを発展途上の会社に融資し、その会社が成長するということに社会的意義があると思いました。
学生時代は、途上国開発に興味があり、東南アジアの成長している会社にリスク取って融資し、その会社が大きく育つリスクテイクは意義があると思っていました。
華子
実際に銀行ではどの様なお仕事をされていたのですか?
きょうへいさん
最初は支店に配属され、中小企業への融資、投資信託や保険の営業を行っていました。法人営業を3年経験し、その後は人事部や本部で大手企業の営業担当となり、会社員を辞める直前は審査部門に所属していました。
華子
きっと、優秀な銀行員さんだったのですね。きょうへいさんはお勤めをされながら、不動産投資を始められたとのことですが、どの様なきっかけだったのですか?
きょうへいさん
先ほどもお話ししたように、会社のカルチャーが合っていないことや、性格的に誰かに指示をされて生きるというのが苦痛でした。そこで、何とか早く会社を辞めたいと思い、投資信託の積み立てを開始しました。
最初は月4万円、そのうち月10万円に増やしました。1億円まで積み立てを増やしていければ、その1億円から、投資で年利5%位稼げれば、年間500万円。それによって何とか暮らしていけると思ったのです。
しかし、シミュレーションをしたところ、順調にいっても1億円貯まるのは40代〜50代になってしまうということが分かり、それでは遅すぎると感じました。そこで様々な副業も経験しましたが上手くいかず、最後にたどり着いたのが不動産投資でした。その頃には、投資信託の積み立てで作った種銭が800万円程ありました。
■ 会社を辞めることを目標に、シェアハウス投資を開始
華子
最初に買った物件はどの様なものですか?
きょうへいさん
2014年に区分マンションを購入しました。しかし、キャッシュフローは月に1.5万円ほどで、これでは会社を辞められるのは程遠い状態でした。たくさんキャッシュフローが出る投資法はないかと探し、見つけたのがシェアハウス投資でした。
2015年に都内で、シェアハウス用の戸建を880万円で購入しました。リフォームも入れた総額は約1,500万円で、自己資金700万円、残りの800万円を借入しました。実質利回りで19%、キャッシュフローとしては月に17.6万円ありました。
華子
一つ目のシェアハウスから、高利回りを実現したのですね。リフォームはご自身でもされるのですか?
きょうへいさん
実質利回り20%を目指して、購入しました。実質利回りの計算方法ですが、分母は物件価格+リフォーム費用+諸費用、分子は満室想定賃料ー月々のランニングコストです。築古を買って、一部自分でリフォームし、ほとんどを業者さんに頼んでいます。
木部塗装をしたり、家具を組み立てたりと簡単な作業は自分でやったりもしましたが、当時は勤めながらやっていたので、時間もありませんでした。
華子
その後もシェアハウス物件を購入されたのでしょうか?
きょうへいさん
はい、その後も関東で4戸購入し、シェアハウスにして運用しました。一つ目は、2015年に購入した埼玉の戸建です。これは、実質利回り18%、キャッシュフローは月12.3万円に仕上がりました。970万円の物件で、900万円融資をしてもらい、リフォーム費用もローンを組めたので、手出し100万円程で購入できました。
その次が、2016年に横浜で実質利回り23%、キャッシュフロー月10.6万円、と実質利回り23%、キャッシュフロー月18万円の物件を購入し、2017年に埼玉で実質利回り15%、キャッシュフロー15.2万円の戸建を購入しました。
華子
高利回り、高収益な物件ですね!
■ かぼちゃの馬車事件を契機に転貸開始
きょうへいさん
ここまで買った段階で、満室想定キャッシュフローが75万円くらいになりました。この金額では、やや心もとなかったのですが、会社を辞めたいという気持ちがどうしようもなく強くなっていました。
そんな折、2018年に「 かぼちゃの馬車事件 」がおきました。かぼちゃの馬車というシェアハウスを多額のローンを組んで購入していたオーナーたちが、賃料が保証されるはずだったのに運営会社が倒産し、サブリース料が支払われなくなり、返済のみが残るという大変な状況になったのです。
私はかぼちゃの馬車オーナーの方々からブログ経由で問合せをいただき、無料で相談に乗っていました。そして、自主管理が難しいという方に対して転貸をさせていただけないかと提案してみると、何名かの方から転貸を依頼されました。
華子
なぜ、無料相談をしようと思ったのですか?
きょうへいさん
まず、現場で何が起きているのか把握したかったということがあります。シェアハウスという、自分がメインで勝負している商売でどう影響があるか調べようと思いました。
もう一つは、新たな商売になるかもしれないと考えたためです。コンサルという形か、買い取りか、もしくは転貸かと様々な方法を考えました。混乱の中に自ら入っていき、価値を提供し、何か商売に繋がればと考えました。
華子
人助けをしつつも、そこから新たな商売の種を見つけに行ったのですね。
きょうへいさん
最終的には、オーナー様より転貸という形を取り、私が客付けと運営をすることにしました。全室借り上げる形ではなく、入居率に応じて賃料を支払う形にしました。正直、市場にかぼちゃの馬車物件が溢れて、賃料相場が一気に下がることも考えられ、どうなるか全く予測が立ちませんでした。
華子
そういった事もありつつ、同年に退職されたのですね。
■ セミリタイア後も不動産を買い続ける
きょうへいさん
その転貸の収益も加わり、念願だった会社退職を実現しました。不動産投資を始めたのが2014年だったので、初めて物件を購入してから4年が経過していました。
華子
セミリタイアをしてからは、どの様な物件を購入したのですか?
きょうへいさん
会社退職後の2019年には、以下の3つの物件を神奈川で購入しました。
- テラスハウス:実質利回り19%、キャッシュフロー月5.3万円
- 戸建て:実質利回り36%、キャッシュフロー月5.4万円
- 借地権アパート:実質利回り34%、キャッシュフロー月21.5万円
また、2020年には、以下の2物件を購入しています。
- 借地権戸建て:実質利回り30%、キャッシュフロー月5万円
- 築2年シェアハウス:実質利回り11%、キャッシュフロー月15万円
昨年は、以下の3物件を購入しました。
- アパート:表面利回り10%、キャッシュフロー月3万円
- 築古借地権ビル:実質利回り15%、キャッシュフロー月50万円
- ベース賃貸用戸建て:実質利回り20%予定( リフォーム中 )
華子
すごいですね、毎年物件を購入されていますね。築古借地権ビルは、どの様な経緯で購入されたのですか?
きょうへいさん
横浜市内の某所で、立地としては大通り沿いにあり道路付けの良い物件です。借地権なので、安く購入することができました。元々9,450万円で出ていたものを指値して、7,250万円で購入しました。賃料として毎月102万円入り、地代が毎月4.8万円です。
物件としては、1階にテナントが2つあり、その上に3DKのレジデンスがついている、築40年超の5階建て物件です。共同担保が戸建2つと、購入時に満室で収支が回っていたこともあり、借入額は7,800万円、期間は18.5年で借りることができました。
華子
いい条件で借りられていますね。
きょうへいさん
はい、物件的にも5年くらい前に外壁塗装をし、空室が多かった部屋をリノベーションして満室にしてありました。そこは買取再販業者が5年前に購入し、満室にしたところで売却しようとしていましたが、借地権且つ築古ということで融資付けが難しく、買い手がいなかったそうです。
不動産投資家であれば、持ち続ける選択肢もありますが、業者さんとしては在庫になってしまい銀行からの見方も悪くなったそうです。そこで、当年中に売り切るという社内の方針が出て、大幅な指値がききました。
編集後記
とにかく会社を辞めることを念頭に、不動産投資に専念されたきょうへいさん。そこで辿り着いたのが、高利回り高収益なシェアハウス投資だったそうです。かぼちゃの馬車事件の時は、オーナーさんの相談に乗るなど、お人柄の良さも感じられるエピソードでした。(取材担当:アリ)