今月の大家列伝は、兵庫県内でアパート、駐車場、店舗など、様々なジャンルの不動産投資を手がけるDX@母ちゃんさんに登場いただきます。前編の今日は、管理会社の裏切りという逆風からスタートし、様々なジャンルの物件を所有するまでになった経緯、ど素人から家賃9000万円の大家になるために実践したこと、などをお聞きしました。
■ 相続した物件の管理会社に200万円をネコババされる
華子
自己紹介をお願いします。
DX@母ちゃんさん
神戸で不動産投資をしているDX@母ちゃんです。10年前に不動産の世界に足を踏み入れ、現在は約100戸を所有しています。築古物件を安く買い、デザインリノベーションをして賃貸、もしくは売却をする手法をメインにしていて、その他にコインパーキングや店舗なども所有しています。家賃収入は約9,000万円です。
華子
幅広いですね。不動産投資を始めたきっかけを教えてください。
DX@母ちゃんさん
2007年に母が亡くなり、アパートを1棟相続したのがきっかけです。私は当時、父の会社の手伝いをしていたのですが、賃貸経営にはまったくタッチしておらず、不動産については全くの素人。その後も、管理会社さんに裏切られるなど、逆風のスタートでした。
華子
詳しく教えてください。
DX@母ちゃんさん
引き継いだ時、アパートは6戸中3戸の入居がありました。管理は管理会社にまかせていたのですが、あるときから家賃が振り込まれなくなったんです。母が亡くなり口座が凍結されたのかと思ったら、原因はネコババ。当時はリーマンショックの直後で、仕込んだ土地が売れなくて困った管理会社が、顧客のお金を使い込んでいたんです。
華子
それはショックでしたね。その後、どうなりましたか?
DX@母ちゃんさん
家賃を返してもらうために裁判を起こしたのですが、「 ない袖はふれない 」といわれ、会社もなくなり、代表者も逃げてしまいました。200万円も損をして、私の中には不動産業界に対するブラックなイメージが根付きました。それ以来、ずっと自主管理です。
■ 中古物件をリノベーションする手法で不動産業の面白さに気付く
華子
自主管理に切り替えた後、何から始めましたか?
DX@母ちゃんさん
駅前の不動産会社に空室を埋める方法を相談に行ったところ、リフォームをすすめられ、見積もりを頼むと160万円でした。築10年で家賃5万円の部屋なのに高すぎると思い、主人の知り合いに頼んだら、同じ内容が40万円。この件で「 この業界では知らない人はボラれるんや 」と確信し、勉強を始めました。
華子
管理会社のネコババに次いで、また不動産会社への印象が悪くなってしまいましたね・・・。どのように勉強したのでしょう?
DX@母ちゃんさん
今ほどノウハウが確立されていなかったので、出ていた本を片っ端から読んだり、東京までセミナーに行ったり、先輩大家さんのブログを読んだり、色々です。特に役に立ったのは赤井誠さんとゴンさんのブログ。この時は、できるかできないかというより、「 なんとかせえへんとアカン 」という気持ちで必死でした。
華子
勉強したことで、空室は埋まりましたか?
DX@母ちゃんさん
空室の中には、勝手にペットを多頭飼育されてボロボロになっていた部屋もあり、どうなることかと心配したのですが、アクセントクロスを使ったり、和室のふすまを変えたりして、バリッと直したら、すぐに申し込みが入りました。このときはワクワクしました。思い起こすと、自宅のリフォームも楽しかったですし、もともと好きな分野だったんでしょうね。
華子
苦労もしましたが、がんばったかいがありましたね。
DX@母ちゃんさん
はい。その後、「 賃貸経営ってうまくやれば、安定収入を作ることができるな 」と感じたため、本格的に取り組むことを決め、まずは小額で買える中古物件を探し始めました。


DX@母ちゃんさんがデザインを手がけた物件
左がビフォーで右がアフター。同じ角度からの写真だが違い過ぎて原形をとどめていない
■ 不動産会社を信用できず、自分でできる競売からスタート
華子
最初は、どのような物件を買ったのでしょう?
DX@母ちゃんさん
不動産会社を信用できず、仲介手数料も払いたくなかったので、業者を通さずに物件を買える競売から始めました。最初に落札したのは定期借地権の6SLDKの戸建てで価格は200万円。それを家賃13万円で賃貸で回しました。
初心者過ぎて何もわかっていないレベルでしたが、万が一ダメでも自分で住めば良い位の感覚で落札しました。知らないって恐ろしいですね。今だったらリスクを考えて入札してないと思います。
華子
なるほど。その後も順調でしたか?
DX@母ちゃんさん
次に落札したのが2LDKの区分マンションで、落札価格は260万円。占有者交渉をして占有者に出ていってもらい、リフォームをしたあと、賃貸に出すつもりで営業に行ったところ、「 売れるよ 」と言われ、出してみたらサクッと売れました。そのうち、競売の落札価格が上がってきたので、一般市場や任意売却の物件も買うようになり、区分や戸建て、一棟物などを一通り持ってみました。
華子
色々な物件を買った理由は何でしょう?
DX@母ちゃんさん
やってみないとわからないので、全部経験してみたかったんです。例えば、中古のRC一棟マンションを購入したときは、めちゃめちゃお金がかかるなーと驚きました。固定資産税、エレベーター、受水漕、大規模修繕のための費用など、家賃も高いですが、コストも高い。その後、RC物件を買う時は、その出費を見越して指値を入れています。
華子
確かに持ってみて、はじめてわかることは多いですよね。
DX@母ちゃんさん
その他、木造アパート等はランニングコストは高くないけれど、売却する時は融資が付き難い。区分マンションは管理費のランニングコストが重要で、積み上がっている筈の修繕積立金が無いとえらい事になるので、購入前には管理規約と共に必ずチェックするなど、色々なことを学びました。
その他にも、戸建は一度入居が決まると入居期間が非常に長く、ほとんど手間が掛からない。でも、大きな間取りの家だとリフォームに結構な費用が掛かるので要注意など、実践しながら学んできた感じです。

築古RCの再生事例
■ 管理業務はスタッフに任せて、自分は購入やデザインを担当
華子
物件を購入する際の資金はどうしたのですか?
DX@母ちゃんさん
借金は危ないと思い初期の頃は現金で買っていましたが、他の人のブログを読むと、他人資本であるレバレッジを使ってうまくいっている人が多かったので、融資も使うようになりました。
正直、1億の壁を超えるまでが一番怖かったですね。1億の融資総額を突破した頃から、自分の努力では返せない金額になって来たと思い、腹をくくって規模拡大へ舵を切りました。融資を使うと大きな物件を買えるようになり、購入スピードが加速しました。
そのうち、融資を使って古い一棟物を買い、リノベーションをして賃貸や売却をする、という自分のスタイルが決まってきました。デザインが好きですし、四国のうっちゃんのブログが好きだったので、その影響もあります。売買案件を増やす中で、宅建業も取得しました。
華子
現在は家賃収入が約9,000万円だそうですね。最初に6戸のアパートを相続したときに比べ、資産が大きく拡大しましたが、不動産投資を始めた時、目標は立てていたのでしょうか?
DX@母ちゃんさん
自主管理ということもあり、まずは30戸を目指そうと思いました。やってみると、意外とすぐに到達したので、買い増していったところ、2012年に100戸を超えました。ただ、ずっと一人でやってきたわけではないんです。電話対応だけでも忙しくなってきたので、2011年には専任のスタッフを雇いました。
華子
2007年に相続で一棟目のオーナーになり、最初に競売物件を落札したのが2008年です。本格的に不動産投資を始めて3年でスタッフさんを雇ったことになりますが、心理的なハードルはありませんでしたか?
DX@母ちゃんさん
本業でもスタッフを雇っていたので、抵抗はなかったです。私自身は、購入の意思決定、融資付け、リフォームのプランニング、設備の選定、外観と内部のデザインを担当していて、スタッフには、クレーム対応、リーシングの営業など、管理全般の仕事を任せています。このスタッフがいなければ、仕事が回りません。
不動産投資のいいところは、管理会社などに外注できることなのに・・・、という人がいますが、外部の人間にお願いすることが増えるほど、利益は減ります。スタッフを雇うと固定費が出て行くという人もいますが、トータルで見ればむしろプラスだと判断しています。
華子の編集後記
何事も自分で体験して、ベストなやり方を見つけていくというDX@母ちゃんの行動力とメンタルの強さには脱帽です。それでいて、手がけるデザインは華やかで瑞々しく、女性らしいセンスが輝きます。明日の後編では、多様な魅力を持つDX@母ちゃんさんの物件の買い方、店舗や駐車場の話、子育てと仕事の両立についてなどをうかがいます。お楽しみに。