今回、登場いただくのは、ご夫婦で競売を中心とした不動産投資に取り組まれているヒロさん&ゆうさんです。16才から株式投資を始め、一度も就職したことがないという自由人のヒロさんと、そんなご主人を楽しそうにサポートするゆうさん。二人のほほえましい雰囲気からは想像もできないようなパワフルで合理的な投資手法や、驚きの利回り、そして素人とは思えないセルフリフォームのレベルにも注目の前編です。
■ 仕入れは競売、リフォームと管理は自分で
華子
自己紹介をお願いします。
ゆうさん
はじめまして。ゆうです。主人のヒロ君と大家業をしています。年齢は私が30才でヒロ君が39才です。物件は主に競売で仕入れて、リフォームと管理は自分たちでやっています。というか、私はヒロ君に言われるがままに手伝わされている感じです( 笑 )。
住まいは埼玉ですが、物件は長野県や群馬県や兵庫県など、本州の各地に点在しているので、マイカーにリフォーム道具を積んであちこちを移動するジプシーのような生活を送っています。

二人で出かけたイベントで書いてもらった似顔絵
華子
楽しそうですね。規模はどのくらいですか?
ゆうさん
所有物件は常に売ったり買ったりで変動していますが、家賃年収でいうと1,000万円くらいです。一番多いときは3,600万円くらいありましたが、ここ数年で売却を進めたので、減ってしまいました。
■ 高校を中退して始めた株で200万円が1億円になる
華子
不動産投資を始めたきっかけを教えてください。
ヒロさん
ここからは僕が説明します。僕は子供の頃から、「 嫌なことはしたくない。人に使われたくない 」という気持ちが強く、大人になっても就職しないと決めていました。成績や評価にも興味がなかったので、夏休みの宿題も一度も出したことがありません。
投資に興味を持ったのは、15才の時、ウォーレンバフェットの本を読んだのがきっかけです。高校には進学しましたが2カ月で中退し、親に「 学費の代わりに200万円ください 」とお願いして、株式投資を始めました。それ以来、一度も就職せず、今に至ります。
華子
アメリカの起業家のような経歴ですね。では、最初は不動産投資ではなく、株で資産を築いたのですね。株の勉強はどのようにされたのでしょう。
ヒロさん
誰かにやり方を習ったことはありません。16才の時、近くの証券会社に口座を作り、売り買いを続ける中で、1〜2週間で売るスウィングトレードが自分に合っているとわかりました。幸い、バブルの波に乗ることができ、元手の200万円が最高で1億円超にまで増えました。
華子
それだけのお金があれば、欲しいものが何でも買えますね。
ヒロさん
それが、僕はお金をあまり使わないんです。海外旅行に何度か行ったくらいで、増えたお金はほぼ再投資に使っていました。でも、30才の時に数千万円の損失を出し、何をやっても株のことが頭から離れない生活が嫌になって、株からは手を引きました。
当時の彼女の親から、「 ちゃんとした仕事に就いていない人 」と言われ、何か始めようと考えた時、思いついたのが大家でした。それ以前にも何かの本で大家業のことを知って、面白そうだなと思っていたんです。
■ 安く買うために競売で不動産投資をスタート
ゆうさん
それで、競売を始めたんだよね。
ヒロさん
はい。平成21年、31才の時に競売を始めました。その時の資金は5,000万〜6,000万円くらいです。なぜ競売かというと、何でも安く買いたい性分だから。一般市場ではいい物は不動産屋さんに回るけれど、競売は公平で、素人にもチャンスがあると思いました。
地元の埼玉の物件に入札すると、最初に戸建、次に全空のアパートを落札できました。アパートはコアラのいる動物園の近くの1K×18戸の鉄骨3階建で、落札価格1,260万円のものを現金で買いました。家賃年収は780万円なので、表面利回りは62%あります。
近所の不動産屋さんへのヒアリングでは、「 埋まらないからやめた方がいい 」と言われたのですが、なんとかなるだろうと進みました。落札後は自分でリフォームをしたのですが、ガラガラだった物件が満室になったときは、充実感がありましたね。
華子
どんなリフォームをされたのですか?
ヒロさん
メインは外壁塗装です。ネットで枠組み足場を買って足場を組んで、自分で塗りました。その他に、フローリングや壁紙の張り替えなどを行い、トータルで約4か月かかりました。


華子
足場用に枠組み足場を購入したのですか? セルフリフォームをされる大家さんは多くいますが、そこまでやる方はあまり聞いたことがありません。
ヒロさん
自分で足場を組んで外壁を塗ったというと驚かれるのですが、借りると高いですし、他にすることもないので自分でやっただけです。足場は置き場所を取りますが、一度買えば何度も使えて便利ですよ。足場以外のリフォームの材料もヤフオクで安く仕入れて、やり方はネットで調べました。

■ 様々な工夫で難アリ物件を満室物件に変える
華子
実際に、大家になってみた感想はどうでしたか?
ヒロさん
満室になればやることがないし、いい商売だなあと思いました。家電をつけて家賃をプラス3,000円にしたり、台所用品を入居者にプレゼントしたり、色々と工夫することで入居率や売上が上がっていくのも面白かったです。
ゆうさん
それで、どんどん物件を増やしたんだよね。
ヒロさん
そうです。翌年、アパートを担保にして、日本政策金融公庫で融資を受け、群馬県のアパートを一般仲介で購入しました。なかなか落札できず、この頃から一般市場の物件も熱心に見るようになったんです。
物件のスペックは、テナント×2戸、2DK×3戸、3DK×4戸の計9戸の鉄骨造3階建てで、価格は1,760万円。満室時の家賃は670万円で、表面利回りは約37%です。
華子
随分と安いですね。
ヒロさん
この物件はネットで見つけたのですが、テナントにフィリピンの教会が入っていました。住居部分にブラジルの方やチリの方が多く住んでいたこと、間取りが古いタイプだったことも安い理由だと思います。空室も多くありました。


リフォームはシルバーセンターから元大工さんに手伝いに来てもらい、間取り変更も含めて一通り行いました。元大工さんは訛りが強くて話の半分くらいしか理解できませんでしたが、お手本を見せながら丁寧に教えてくれました。
■ 売れ残りのアパートを特売で購入
ゆうさん
次が長野の築浅アパートだよね。
ヒロさん
はい。33才のとき、競売サイトの「 Bit 」で長野県の上田市にある築5年のハウスメーカーのアパートを見つけました。価格は1,000万円で、表面利回りは27%です。この物件は競売で入札がなく、「 特売 」になっていたものです。畑の中にポツンとある物件だったので、残ったようです。
ゆうさん
特売は早い者勝ちだから、焦ったんだよね。
ヒロさん
ネットで競売結果を見ていたら、このアパートが不売で特売に流れるとわかったので、翌朝5時に自宅を出て長野地方裁判所上田支部に向かい、10時のオープンと同時に入札を入れました。特売は早い者勝ちなので、ライバルがいたらどうしようとドキドキしました。

ゆうさん
でも、実際にはライバルがいなかったんだよね( 笑 )。それで、次に買ったのが、群馬の未完成物件です。
ヒロさん
はい。この物件は1回目の競売で入札がなく、2回目で約半額になったので入札しました。300坪くらいの土地に2DK×4戸、1R×1戸の建築中のアパートが建っており、価格は1,016万。完成後の家賃収入は331万円で、表面利回りは32%です。
落札した時は、水道の引き込みなし・浄化槽なし・建具なし・トイレなしでまともに使えるところはありませんでした。庭に穴を掘ってトイレを作るなど、キャンプのような生活をしながらリフォームを進め、完成させました。


ゆうさん
なぜ建築中の物件が競売に出てきたかというと、地主さんが支払った建築費を間に入った人が持ち逃げしてしまったからなんです。地主さんはいい人そうで、気の毒でした。
ヒロさん
ちなみに、この物件は土地が広かったので、荒れ地を開墾して「 家庭菜園を楽しめる賃貸住宅 」として募集したんですが、一人も畑を借りていません( 笑 )。でも、一緒に作ったピザ窯やバーベキューコーナーは使ってくれているようで、良かったです。

ゆうさん
せっかく作ったから、使ってくれると嬉しいよね。
ヒロさん
その次に買ったのが、東京都の町田市にある2DK×2戸のアパートです。こちらは2度目の「 特売 」物件で、価格は1,173万円。家賃は156万円で、表面利回りは13.3%です。都内アドレスに舞い上がってしまい、他の物件よりも利回りは低くなっています( 笑 )。

こんな風に、競売と一般仲介で、安いものを見つけては、8年間で10数棟の物件を買ってきました。
華子の編集後記
ゆうさんがご主人であるヒロ君の日常を綴ったブログが人気のお二人。天才肌のヒロ君と超マイペースなゆうさんが、力を合わせるとすごい成果を生み出すことに驚いてばかりの取材でした。明日の後編では、競売や公売の注意点、競売での融資の活用法など、さらに深い話をお伝えします。お楽しみに。