富山市内を中心に新築アパートや新築戸建て等15棟69室を所有する波乗りニーノさんこと西野浩樹さんに登場いただきます。地元ではない富山に投資する理由、新築木造物件のメリットとデメリット、入居率100%を維持するための秘訣など、個性的な物件の写真とともに解説していただきました。
■ 彦根市在住なのに富山市内に新築アパートを建てる理由
華子
自己紹介をお願いします。
ニーノさん
ギグエコノミストの西野 浩樹といいます。趣味がサーフィンなので、仲間からは「 波乗りニーノ 」というニックネームで呼ばれています。1973年生まれの44才で、不動産投資歴は10年。富山と彦根に15棟69室の収益物件があり、年間の家賃収入は約4,400万円です。

華子
ギグエコノミストとは、どういう意味ですか?
ニーノさん
深い意味はないんです。高城剛さんがハイパーメディアクリエイターと名乗っていて、カタカナの肩書がカッコいいかなと思ってつけました( 笑 )。
普通に自己紹介をすると、アパート経営をしながら、ファイナンシャルプランナー( 以下FP )としてセミナーなどを行っています。元は流通系のサラリーマンでしたが、今年の夏にセミリタイアしました。
華子
ニーノさんの不動産投資の特徴を教えてください。
ニーノさん
15棟のうち、6棟が新築アパート、4棟が新築戸建てと、新築が過半数を占めます。あと、住まいは滋賀県彦根市ですが、新築物件はほとんどが富山市内にあります。
華子
その理由は何ですか?
ニーノさん
10年前に会社の社宅制度のルールを作ったとき、北陸地方の土地値や家賃について調べたんです。その時に、富山には「 土地の値段が安いのに、家賃が高い 」という歪みがあることに気づき、ここでアパート経営をやってみようと思いました。
アパートを建てる時のこだわりとして、@土地は現金で買う、A元金均等返済、Bカッコいい物件、という3つがあります。写真は平成26年に新築したアパートですが、利回りは12%以上。他の物件も、土地から買って10%以上をクリアしています。


華子
個性的な外観で、アパートのようには見えませんね。そして、利回りの高さに驚きです。
ニーノさん
利回りが高いのは、家賃の高さのおかげです。富山は大手企業の法人需要が多く、田舎のわりに属性のいい入居者さんが多いんです。もちろん、その価格で選んでもらえるような工夫もしています。
一つ例をあげると、どの物件もマンションのような中廊下の構造になっていて、入口に全室のインターホンをつけています。オートロックと同じ仕組みで他人が勝手に入ってこないという防犯上のメリットがあります。また、各部屋で違う壁紙を使い、部屋を選ぶ楽しさを感じてもらえるようにしています。


華子
遠隔地のアパートということで、何か注意していることはありますか?
ニーノさん
共用部や花壇があると手入れが大変なので、そういう部分は極力減らしています。あとは管理会社さんの力ですね。最初は比較のために複数のところにお願いしていたのですが、今は信頼できる管理会社さんに絞ってお願いしています。
ただ、僕は吉川英一さんの主宰するサンデー毎日倶楽部のメンバーで、しょっちゅう勉強会などで富山に来ているので、「 遠隔経営ではないよね 」と言われることもあります( 笑 )。
■ 新築の木造アパートが一番お金が残ると思う
華子
中古から始める方が多い中で、新築でスタートし、その後も新築を中心に増やしているのはなぜですか?
ニーノさん
地方の5,000万円以下の新築木造アパートを何棟か持つパターンが、トータルで一番お金が残ると思うからです。新築は立地、設備、間取りを選べるので入居付けに有利で、融資も付きやすい。金額が小さいので、出口をとりやすいというメリットもあります。
中古の方がずっと安ければ買う意義はありますが、新築でこれだけ利回りが取れるので、わざわざ競争力の低い中古を買う理由がないんです。幸い、建ててからの入居率は100%。入退去の入れ替わり以外は常に埋まっています。
新築は修繕などのリスクも低いです。サラリーマンはただでさえ忙しいわけですから、故障などでお金だけでなく時間資産、家族との人間関係資産を使ってしまうのは損です。その点まで考慮すると新築に軍配が上がると思います。

吉川英一さんのグループの仲間と隣合わせで建てたアパート( 競争ではなく共走する )
華子
一般的に、新築アパートは融資が行き詰まるイメージがあります。
ニーノさん
土地を現金で買えば、地主扱いになり、何棟でも上物の融資は比較的スムーズに出ます。土地が安い地方ならではの戦略ですね。それと、僕が富山で集中的に物件を買っていることも理由のひとつだと思います。金融機関はそのエリアに根を張っていない人対しては、厳しいですから。
華子
RC物件を検討したことはないのですか?
ニーノさん
RC物件は維持費や税金が高いですし、金額が大きく回収に時間がかかるので、売却が完了するまで、利益を確定できません。僕は借金は手榴弾のピンを抜いて走っているようなものだと思っています。長期のローンを組むということは、その間リスクを抱えるということです。
もともと、地方は土地が広いので、お金をかけてわざわざ縦に積む必要がないということもありますが。
華子
木造でも新築はある程度長いローンを組むのでは?
ニーノさん
僕のアパートは最長でも25年ローンで、返済比率はほとんどが4割台です。土地をキャッシュで買って建物を25年元金払いでシミュレーションすると、10年でもかなり残債が減り、一定のキャピタルゲインが見込めます。10年経つと修繕リスクと家賃下落リスクが増すので、その頃に売却することで、常に安定経営を続けることが可能です。
■ 新築のデメリットは短い融資期間と音漏れ
華子
なるほど。メリットをたくさん教えていただきましたが、デメリットもありますか?
ニーノさん
木造の弱点は、RC物件よりも短い融資期間と音漏れです。融資期間の短さは、それでも利益が出る物件を作ることと、( 次の人に融資がつく )適切な時期に売りに出すことでカバーできます。上下の音漏れは防げないので、メゾネットにする等、間取りを工夫することで対応しています。
また、節税対策としてアパートメーカーが地主に営業攻勢をかけているため、新築アパートが周りに増えています。この点については、デザインや設備で、他にない物件を作ることを重視しています。コモディティ化して価格競争にさらされた商売はつぶれます。「 ここに住みたい 」と思われる物件を作ることがリスクヘッジですね。

アパートの共用玄関にある大きな鏡とシャンデリア

1LDKの間仕切りは透明にして広さを演出。いつでも洗濯物を干せるよう設置したサンルームはコスト削減効果も

1階は洗濯干場として小さなテラススペースを作った。1LDKでも大型バスを設置して差別化を図る
また、新築のデメリットという意味では、なんといっても生みの苦しみがあります。ただ、作るまでは時間がかかりますが、回り始めれば手間も時間もかからないので、苦労する価値はあると思います。それは、参入障壁にもなりますしね。造れば造るほど楽になります。
華子
確かに、ニーノさんの物件を見たら、いわゆる普通のアパートは面白くないと思われてしまいそうですね。ところで、戸建も持たれていますが、その理由は何ですか?
ニーノさん
新築戸建ては、貸しても売っても手堅いと思い、挑戦しました。実際、うまく回っています。中古に関しては立地がいいところに安い物件があったので買いました。古い物件は減価償却が取れるので、今後、売却益が出た年は築古戸建を買って、節税に生かそうと考えています。
ちなみに、中古物件は地元の彦根で買っていて、勉強もかねて自主管理をしています。ルールが整ったら、民泊もやってみたいです。
写真撮影協力:横井賢一さん
場所協力:コワーキングスペースCAPSULE
華子の編集後記
圧倒的な陽性の空気感をまとうニーノさん。FPらしく、数字の根拠を細かく示しながら新築木造アパートが好きな理由を説明してくださいました。見せていただいた物件は、友達に自慢したくなるようなカッコいいデザインと、考え抜かれた機能のバランスが絶妙で、満室になるのも納得といった感じでした。明日の後編は、サラリーマン時代のお話や今後の目標等をうかがいます。お楽しみに。