今回はつい先日、発生した孤独死についてのお話です。ある日、管理会社の担当者から、LINEが届きました。
お世話になります。
〇〇ビル〇〇号室の件で、入居者( 契約者 )が死亡したと弟様より連絡が入りました。
契約は保証人無。身内も相続放棄の状態で請求もできない状況です。
死亡より1ヶ月が経過しているとのこと。
明日、中を確認します。
家賃は3月分まで頂いていますので、3月31日解約で進めます。
内装手配お願いします。
亡くなったのは、入居期間4年の70代男性でした。
入居日はいつですか?
火災保険は入っていますか?
入っているなら、孤独死に対応していますか?
とその担当者にLINEを返すと、
火災保険は更新していません。
もちろん孤独死にも対応していません。
との返信でした (T . T)
ショックでしたが、過ぎてしまった過去を嘆いても何も解決しません。
他人と過去は変えられない。変えられるのは自分と未来だけ。です!
大家として自分に出来る事を一つずつやっていくしかないと、腹を括りました。
座右の銘の「 死ぬこと以外擦り傷 」「 生きてるだけで丸儲け 」を思い出して、気持ちを切り替えることにしました。ちなみにこのコラムの題名にもなっている「 諦めなければ、人生には成功しかない 」が一番気に入っていますが、座右の銘は他にもありますw
周りの人と話すと、「 座右の銘は一つだけ 」みたいな固定観念を持っている人も多いようですが、そんな常識は捨てましょう。「 常識は破ってなんぼ 」です。しかし、当たり前ですが、法律は絶対に破ってはいけませんw
■ 死は忌み嫌うものではない
話を戻しますが、消防士時代に遺体は数多く見てきました。孤独死で最も衝撃を受けたのは、ウジ虫だらけの遺体を見た時でした。現場は木造2階建てのアパートの2階でした。救急車を降りて現場に向かうと、階段を登っている途中で、すでに死臭がしました。
何度も経験しているので、「 この匂いがするということは、救急搬送する事は出来ない。蘇生する可能性はゼロだな 」ということがわかります。室内に入るとウジ虫と同時に、ハエもかなりの数わいており、窓ガラスに無数に張り付いていました。
その他にも、消防士として凄惨な現場は数多く経験して来ました。交通事故で脳が飛び出していたり、割腹自殺で腸が飛び出していたり、初めの頃は毎回、ショックを受けていました…。子供の事故死や自殺現場は特に衝撃が大きかったです。
仕事のおかげで、どんな遺体を見ても、ある程度の免疫がつき、冷静に行動することが出来るようになりました。消防士としての経験が大家業に生きるとは、思いもしませんでした。人生とは不思議なものです。
管理会社の担当者に、室内の写真を送ってもらえるようお願いしました。送られてきた写真を見ると、もちろん遺体はありませんでしたが、床には染みがありました。こちらが頭でこちらが足で、このように横たわって倒れたというのがはっきりわかりました。
翌日、リフォーム業者と現場に打ち合わせに行きました。消防士時代に何度も経験したあの何とも言えない死臭も残っていました。
死は決して忌み嫌うものではありません。
人は必ず死にます。
自分自身も致死率100%です。
■ 残置物の撤去とリフォーム工事
この入居者さんについては、身内も相続放棄をしていますので、室内の荷物は全て大家で処分しなくてはいけません。部屋を見回すと、つい先程まで生活していたような状態です。荷物の中に、仏壇と位牌がありました。このまま処分するのは気が引けます。
お金はかかるけれど、仏壇や位牌専門の回収業者に頼むしかないのかなと考えていました。すると、管理会社から「 仏壇と位牌だけは故人の弟さんが回収に来ます。他は処分をお願いします 」という連絡があり、この件は解決しました。
内装業者には仏壇と位牌以外の残置物の処分と、床、畳、クロスの貼り替え、そしてキッチン、浴槽、洗面台、トイレなども新品に交換してもらえるよう指示を出しました。200万円近いフルリノベーション工事となります。
これがリノベーション工事を実施したばかりの部屋や新築だったら、ショックは大きかったと思いますが、この部屋は工事がまだで、退去があったら同じ工事を実施する予定だったので、仕方ないと割り切りました。
死臭がしたので、少しでも軽減するようにと窓は24時間解放しました。工事を発注すると同時に、募集家賃について、管理会社の担当者と打ち合わせをしました。いくらか減額になるのは仕方ありません。
■ 「 告知事項アリ 」で5,000円下げて募集した結果
ちなみに、自殺でも殺人でもない孤独死は、告知義務の明確な基準はないとのこと。判例では死後4~5日で発見された場合、告知義務はないとされたそうです。4日以内なら告知義務なしで、5日以降に発見なら告知義務ありという、明確な線引きもありません。
何度も言いますが、死は忌み嫌うものではないと思っています。小さな声で、「 自殺でも殺人でもないんですから、告知しなくていいということはないですか?」と管理会社の担当者に訊いてみました。
しかし、「 今回は死後1ヶ月ですから、それはダメです。弊社が告知義務違反で営業停止の処分を受ける可能性もあります 」と言われました。結局、「 告知事項アリ 」として、事情を伝えつつ、家賃を5,000円下げて募集することにしました。
内装写真は前回の同タイプのリノベーション工事済みの写真があったため、写真付きですぐにネット掲載を始めました。するとありがたいことに、わずか2週間で申し込みを頂きました。室内はまだフローリングの貼り替え工事の途中です。
気にしない方は気にしないんですね。そういえば、大家&ゴルフ友達のTさんが最近、事務所を借りたのですが、居室で首吊り自殺があった「 告知事項アリ 」物件でした。しかし、相場家賃より3割近く安く自宅からも近いので気にせず借りたそうです。
「 自殺した前の入居者も、私がここを借りて飲み会とかして楽しんでいたら、きっと喜んでくれると思うよ 」と仰ってました。Tさんのような器の大きな人が増えればいいと思いますw