1996年( 平成8年 )築で当時築17年。売り出し価格は1億円でした。福岡市人気駅徒歩7分、6階建エレベーター付きのRC造で、オートロックありの物件です。
全部で30戸で、内訳は1R×28、テナント×2。駐車場は4つついており、満室時表面利回りは12%で売り出されていました。当時、空室は1Rが10部屋ほど。1階に2つあるテナントはイベント会社事務所と宅配ピザ屋でした。
時代はリーマンショック後で、派遣切りなどのニュースも多く、世の中全体が下降トレンドのようでした。
極東師匠の名言の中に「 不動産はいつの時代も高かった 」というのがあります。この当時も不動産価格はまだまた下がりそうだし、入居率も下がっていくから、もっと安くなるまで買うべきではないという声が多かったです。
■ 10室の空室がある単身中古マンションとの出会い
さて、この物件はすでに4〜5棟購入していた、懇意にしている営業マンからの紹介でした。売主は高齢の男性で、本業がリーマンショックで打撃を受けたため、不動産を整理して現金化したいとのことでした。
最初の価格は1億円でした。しかし空室も多く、3点ユニットで、室内にもベランダにも洗濯機置場がなく、最上階に共同の洗濯機が4台と乾燥機が1台設置されているという心配な点が色々ある物件でした。

その頃から、築年数が経った3点ユニットの空室期間が長引き、不人気になってきたような気がします。これは3点ユニットに限らずですが、福岡市の単身物件の家賃も少しずつ下がり始めていました。
( 2010年頃の福岡市では、単身物件でも家賃3万円以下は見たことがなかったのですが、今は家賃9,800円+共益費6,000円という訳の分からない家賃もたまに見ますw )
何を言いたいかというと、価格は1億円でしたが、人気が落ちている単身間取りということで9,000万円で買い付けをいれました。他に購入希望者がいなかったのか、それでまとまりました。
なぜ空室が多いのかを自分なりに分析しました。募集家賃は38,000〜40,000円でした。その当時の相場は30,000〜33,000円。駅徒歩7分ですが、上記のような不人気要素が揃っているのに相場より高い家賃なので、空室が多いと思いました。
( ちなみに新築時から住んでいる方は48,000円でした。かなり値下がりしていることがわかります )
当時は初心者レベルの投資家でしたのが、とにかく満室にするために、打てる手はなんでも打つつもりでした。まず、家賃25,000円+共益費3,000円の地域最安値に設定しました。これで満室にして、様子を見ながら可能なら家賃を上げていく作戦です。
インターネット無料も導入しました。1室あたり1,200円ほどの負担でした。一番のネックの洗濯機置場は、家賃にプラス1,000円で室内かベランダに洗濯機置き場を作るから、どちらがいいか入居者に選んでもらうという作戦にしました。
普通は室内1択なのですが、16〜18uの広さしかなかったため、室内に置くとしたら居室の微妙な場所になります。そのため、ベランダ設置も選べるようにしました。
洗濯機置き場を作る工事費は6〜7万円でした。単純計算で1,000円アップなら5〜6年でペイ出来ます。ちなみにほとんどの入居者は、室内洗濯機置場を選ばれました。
さらに敷金礼金をゼロにしました。ポイントとしては、敷金礼金ゼロにする時は必ず短期解約違約金を付けるようにしています。2年未満退去は家賃1カ月、1年未満退去は家賃2カ月の違約金です。
なぜなら敷金礼金ゼロで仲介手数料も払って数カ月で退去されたら、室内の原状回復工事でマイナスになるからです。この時も同じルールを設けて募集しました。すると、10室の空室が1〜2カ月で満室になりました。
一度満室になってからは、退去の度に家賃を少しずつ上げていきました。購入から8年も経つと35,000〜37,000円ですぐに埋まるようになりました。福岡市中心部の家賃が一時期より上がってきたのも要因の一つです。
家賃アップのおかげで利回りも上がり、購入時に12%だったものが、5〜6年後には13.5%ほどになりました。RC物件だったことも良かったと思います。( 築古の木造単身アパートは当時も今も厳しそうな物件をよく見ます )

■ 恐怖をどうやって克服するか?
こうして振り返ってみると、10戸あった空室も1〜2カ月で埋まり、満室になった後は退去の度に家賃を上げることもでき、順調にいったように見えます。
しかし、当時は自分自身もまだまだ未熟でしたし、物件価格も家賃もどこまで下がるのかと不透明で、9,000万円の借金をするのはとても怖かったです。1部屋16平米で、3点ユニットで、洗濯置き場は屋上。本当に埋まるのだろうか?
最も怖かったのが、1階のテナント2つが退去したら、次の入居が決まるだろうかという不安でした。結果的にテナントが退去になることはありませんが、心臓が痛かったです。それでも、9,000万円の借金をしてこの物件を買いました。
恐怖をどうやって克服するか?
何度もシミュレーションをするしかないと思います。この時も、そうやって恐怖を乗り越えました。
やり方ですが、私はまず、最悪のシミュレーションをします。具体的には、いくらまで家賃を下げれば入居率が90%以上になるかを考えます。この物件の場合、家賃20,000円なら即満室になります。
実際にそこまで家賃を下げることはないと思いますが、シミュレーションでは最悪ここまで下げれば満室になるだろうというラインを見つけ、その家賃で、毎月の返済が出来るかを確認します。
テナントが2つとも退去した場合でも同様にシミュレーションします。この時はテナントが2つ退去したら、収支は赤字でした。次に、赤字の金額と、他の物件からのキャッシュフローで補えるかを確認しました。
その結果、「 家賃2万円でも、テナント2つが開いても、他の物件のキャッシュフローでカバーできるから、最悪死ぬことはない、何とかなるな 」という結論が出ました。あとは勇気を出して飛び込むだけです。
また、私は借金の恐怖よりも、何も挑戦せずに30〜40年と年を取っていく自分を想像するとそっちの方が怖いので、決断できたというのもあります。ロバートキヨサキさんが言う、「 貧乏父さん 」は避けたいと思いました。
何もしないのが1番のリスク。しっかりとシミュレーションをして、最悪の場合でも家族に迷惑をかけることにはならないとわかったら、あとは前に進む、そんなやり方でここまで来ました。
現在も、土地値と建材費の高騰で建築費も高く、中古も割安な物件が見つけにくくなっています。特に今から始める方には難しい時代だと思います。しかし、「 いつだって不動産は高い 」のは間違いありません。諦めずに道を探して欲しいと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました♪ 何かしらの参考になれば幸いです。