前回の続きです。法人で1億円の借入(フルローン)があり、300万のCF(キャッシュフロー)が出ている物件を、5年分のCFである1,500万の売却益が出る価格で売却した場合、失ったCFの300万円を、どのように確保したら良いでしょうか?
このケースはレアな話ではなく、3年〜5年前に1億のフルローンで表面利回りが9%程度の物件を法人で購入した方が、仮に一昨年から今年の春にかけて売却をしていたら普通にあった話です。もしかしたら3,000万程度の売却益があったかもしれません。
しかし、売却益がそのまま残るわけではありません。3,000万の売却益には非課税事業者だったとしても35%〜40%程度の税金が発生するため、手残りは60%の1,800万〜2,000万程度になってしまいます。
うまく10年分のCF分である3,000万の売却益が出たとしても、税引き後の手残りだけでは6年分のCFにしかならないのです。ましてや、5年分のCF分で売却したなら、売却益の1,500万が税引後は800万〜900万程度になります。
売却前のCF分で考えたら3年程度で、その手残りした資金は枯渇することになります。何か手を打たなければ、「 こんなことなら、売却などしない方が良かった 」という結果になるでしょう。
それでも、その際に( 躯体構造・空室・修繕・地形・高金利 )などのリスクが高い物件を売却出来たとしたら、利益確定&リスクフリーになったわけで、それは「 成功した一つの投資 」と考えられます。
逆に、ここ数年、属性で融資が付くからと、「 多法人スキーム 」などで短期間に複数棟を購入した方たちがいましたが、彼らはそのリスクフリーになった売主から、高いお金を支払ってリスクだけを購入したのかもしれません。その通りだとしたら背筋が寒くなるような話です。
■ 効果的に売却益を使える事業規模とは?
売却について、オイラが考えるところの結論を言えば、法人として売却をからめて事業を大きくしていく為には、すでに不動産のポートフォリオができあがっていることが、前提条件になると思います。
1棟売却しても動じない安定のCFがあって、初めて売却した資金を効率的にまた攻撃的、かつ戦略的に使えることになるということです。安定した不動産ポートフォリオについては、以前も書いていますが、10棟で総戸数100戸程度が一つの目安かと思います。
ただし、数と規模だけではなく、ちゃんと満室に近い運営ができる物件と、経営者の運営能力が伴ってのポートフォリオが前提となるのは言うまでもありません。法人の場合は、そのくらいの規模になって初めて、売却益が次に生きてくると考えています。
少し話は変わりますが、多法人スキームでやられている方が、仮に10社の法人を持っていた場合( 1棟1法人と仮定 )、それぞれの法人が10棟を一斉に利益が出る状態で売却したら、どうなるでしょうか。
その場合は、売却後に法人税を支払い、法人に残ったお金を配当、もしくは法人を解散して出資者に戻し、再度二重税を経て、のちに個人が売却益を回収することはできます。
または、二重課税を回避するため、物件の売却前に持ち株会社を設立し、その会社に清算資金を吸い上げてから、持ち株会社にて新たな投資をすることも可能でしょう。
しかし、継続して融資を受けて賃貸事業を展開していくには、積み上げた決算書と実績が何よりも効果的な銀行へのプレゼンとなります。目先にとらわれず、コツコツと物件数と戸数を増やし、満室経営を続けることがやはり大切だと思います。
売却はあくまで事業の中の一つのオプションですから、オプションを使えるような事業者ポジションになって初めて、その効果が高まるということです。
■ オイラが失ったキャッシュフローを得るために実践した方法
最初の話に戻ります。法人で5年分( 1,500万 )の売却益を有効利用して、年額300万のキャッシュフローと、税引き後半分の手元資金を残すことは、かなり難易度が高い事がわかります。
売却益を相殺する手法として、少し前の太陽光発電のように全額一括償却できる優位なものが、今は見当たりません。航空機のオペレーティングリースも少額一括償却できる足場リースもありますが、キャッシュアウトを伴います。
4年落ちの高額な車を1年で償却する手もありますが、1棟しか持っていない法人が1棟を売却し、その資金で車を購入して否認されないか、少し疑問もあります。新たな事業として高級車をレンタルする事業を行えば話は別でしょうけど…。
また、車を購入する場合は、期首で購入しなければ全額償却しきれませんし、太陽光もそうであったように、購入も全額ローンで賄わなければ、手元資金がなくなるだけになります。
現在、オイラは売却前のCFを担保するために、新築と中古物件を数棟取得するために動いていますが、結局は税引後の売却剰余金をすべて頭金として投入して、ようやく売却前の2倍程度のキャッシュフローを得ることができそうです。
これが、売却剰余金の正しい使い方とは限りませんし、次にくる波の為の内部留保にすべきだったかもしれません。正解はありませんし、過ぎ去ってからでなければ正解は分かりません。
それでも、お金を残すよりも、新しい事にチャレンジした方が多少の失敗はしたとしても面白いと思っています。
■ 融資が付かない時代のサラリーマン大家の買い方
このように、法人では税率が壁となり、売却したお金を有効に使うには、なかなか難易度が高い事がわかります。
これからの時代は、オイラが当初やったように、個人で物件を購入して残債を減らし、5年超過後に分離課税で税率を抑えての売却をつかって自己資金を残し、そのお金を法人に入れて物件購入の頭金として法人を設立することが、また必要なストーリーかなと思います。
銀行がサラリーマン大家にお金を貸さないこれからの時代は、けっして不動産の冬の時代ではありません。むしろ、正常なあるべき姿に収まっていくのでしょう。
ですから、最初は小さな物件からでもいいので、「 本物の賃貸経営者 」になる為に、これからの先、10年の時間を投資する覚悟を持って、不動産賃貸業に向き合ってほしいと思います。
■ 張田ミツルさんと30才大家さんのセミナーを開催します
最後にお知らせです。オイラも聴講します極東船長プレゼンツ「 湘南再生大家天野さんと波乗りニーノ西野君 」のコラボセミナーの開催日が迫ってきました。参加者の皆様、9月15日( 土 )に会場でお会いしましょう!!
また、11月には健美家コラムニストの張田ミツルさんと、大野靖弘さん( 30才大家さん )のコラボセミナーを企画していますので、楽しみにしてください。詳細・申し込みは以下のリンクから申し込み出来ます。
※詳細・申し込みは⇒コチラ
これから不動産投資を始める人たちにとっては、これから先10年の道標となる2人です。ぜひお参加ください。お楽しみに!!