前回は、波乗りニーノさんとらいおん大家さんに築古物件リフォームはどこまで修繕をやるべきかという問題についてお話していただきました。今回の大家対談は、実際のリフォーム現場での課題についてお話を伺います。
■ 初心者には難しい「 業者を入れる順番 」
らいおん大家さん
僕、日々ネットで情報発信をしていると、非常に新鮮な返事が来るんです。「 ここはこういう仕組みだよ 」「 ここにはこういうベニヤ貼るんだよ 」といった風に、自分の中では当たり前のように周りから教えてもらってきたことを発信するのですが、「 そうだったんですか! 」なんて返事をもらったりして。
波乗りニーノさん
そういうの、うれしいよね〜。
らいおん大家さん
はい。最初に解体をして、解体した後に電気屋さんや水道屋さんが入って、その後に大工さんが入るんだよ、などと言っても、「 そういう順番だったんですか! 」と言われたり。そうか、これはきちんと説明していかなくては、と思うわけです。
波乗りニーノさん
そう、まずそれがわからないんだよね。どこからどこまでが大工仕事なのか、配管屋の仕事なのか、設備屋の仕事なのか、最初はわからないと思う。そして誰がどこにどういう風に発注して、どういう段取りでやっていったらいいかで、つまずくんだ。
らいおん大家さん
僕もそれを経験してきました( 笑 )。
波乗りニーノさん
僕も最初そうだった。周りの人が何を言ってるのかがわからなくて。だから最初にクロス屋を呼んだり、めちゃくちゃなことしてたから。
らいおん大家さん
「 それは最後に呼ぶ業者だ! 」と怒られる( 笑 )
波乗りニーノさん
例えば、クロス屋さんを呼んでから職人さんに、「 ここはクロス貼れないけど、どうやって納めるつもりなの? 」とか言われて絶句。そこから大工を手配することになったりしてね。そういうことがよくあったな。
らいおん大家さん
「 どうやって納めるんだ 」っていうのは僕も、すごく言われました!
波乗りニーノさん
最初はみんな失敗するものだから、職人さんにいかにうまく訊いてやっていくかが大事なんじゃないかな。
らいおん大家さん
リフォーム屋としてキャリアを積んできて、現場で「 うわ、これ入らない! 」「 え、これやったらダメなのか! 」と何回も失敗して学べたのは、大変ありがたかったです。
■ 職人さんとのコミュニケーションを大切に
波乗りニーノさん
職人さんは人工( にんく:一日仕事をしてかかる仕事量のこと )で動くから、こちらの仕事の段取りが悪くて今日はできないってことになっても、来てもらった以上、半日分の仕事としてカウントされてしまう。
らいおん大家さん
出戻り、ですね。お金を捨てたような感じになってしまうから、本当にもったいないです。
波乗りニーノさん
あと、職人さんって結構難しい人が多いでしょう。だから、そことのやり取りをきちんとできるようになっていかないとだめなので、実は築古戸建て投資って結構ハードルが高いと思うな。
らいおん大家さん
施主側で、こうしたいというイメージを持っていないと、職人さんもどうしたらいいのかわからない、という事態になります。でも、施主も最初は知識がないので、イメージがわかないんですよね。
波乗りニーノさん
そう、あと言葉。専門用語や独特の言葉がわからなくて大変だと思う。
らいおん大家さん
そのへん、てんやわんやですよね。最初何を言っているかわからなかった。サンゴインゴ( 三寸五分のこと )とか、インゴカク( 一寸五分のこと )で45ミリの角材、だとか。大工さんは、ミリとかメーターで言わないですよね。
波乗りニーノさん
あと、僕がよく怒られるのが、「 センチじゃなくてミリで言え 」っていうパターン。1センチとかも10ミリって言うし、全部ミリで言うときがある。そこは尺でもセンチでもなくミリなんですね、という状況です。
らいおん大家さん
統一してくださいよ、と僕も思います。
波乗りニーノさん
あとこれは不動産賃貸業あるあるなんだけど、畳の部屋を洋室化するとき、床のレベルを必ず職人さんは合わせるんだけど、例えば、それがフロアタイルなのか、フローリングなのか、クッションフロアを貼るのか、最初からイメージして言ってないと、職人さんは困惑してしまう。
らいおん大家さん
床面にレベルを合わせて工事するから、そのツラまで何ミリなのかを測る必要があるからですね。
波乗りニーノさん
それで僕、いつも職人さんと言い合いになるんです。「 もう全体が築古だから、ちょっとくらい床が低くてもいいんです 」って僕は言うんだけど、「 低くするとその分、スキマが見えて僕らが恥をかくから、それはできない! 」なんて言われてしまう。
らいおん大家さん
本当はできないわけはないのですけどね。プライドですね。
波乗りニーノさん
これはピタッと同じレベルにしないとダメ、という感じ。それが例えば3ミリなのか5ミリなのかによって、下地をどういう風にするかというのが決まってくるから、職人さんにそういうことを言われたらパッパッと言い返せるようにしておかないといけない。
らいおん大家さん
今ならわかるけれど、最初はわからないですよね。
波乗りニーノさん
どうしてほしいのか、と聞かれるんだよね。「 どちらでもいいです 」と返すと、「 いや、どちらか決めてくれ! 」と言われる( 笑 )
■ 築古と新築、それぞれの難しさ
らいおん大家さん
自分でもよくこれだけのことを覚えたなって思います。だから、今、会社の新人やこれから大家になるという人に「 教えてください 」って言われても、すぐには教えきれないです。「 見て覚えて! 」と言うしかない。
でもリフォームは面白い。現場でいろいろ言い合っているときは、正直面白くないですが、やはり自分の頭の中でイメージしたものが出来上がると面白いですよ。物件が恰好よくなったと思いますから。
波乗りニーノさん
新築でもそれは思う。何もないところから作り上げていくのが、実に面白いよ。
ニーノさんが企画して所有しているアパート( 上は外観、下は共用部 )。中はとてもオシャレ!
らいおん大家さん
逆に、僕は新築物件をほとんど手がけたことがないので、その新築の喜びを感じたことがないんです。最初に何をするのかもわからない。同じ建築でも全然違いますね。
波乗りニーノさん
僕は新築をやってから中古へ行ったんだけど、ポールにはよく「 逆走してる 」って言われるよ。手がける物件がどんどんボロくなってきてるって。「 みんな最後に新築やるんです。ニーノさん逆走してるんですよ 」って( 笑 )
らいおん大家さん
ニーノさんはどうして新築だけじゃなくて中古も手がけるようになったんですか?
波乗りニーノさん
中古の方が利回りが高いからだね。あと、僕はいろいろ不動産の勉強するのが好きなので。だから、中古という今までやったことがないことをやりたかった。先日も初めてRC物件を買ったんだけど。とりあえず今はこのジャンルを勉強してみたい。そうしたらそのメリット、デメリットを言えるようになるじゃないですか。
らいおん大家さん
確かにそれぞれ比較もできますしね。
波乗りニーノさん
そう。すると、いろんな球を打てるようになって、なかなかいいかな、と思ってやってみています。僕なりの不動産投資の醍醐味だね。
らいおん大家さん
ちなみに築古戸建てって今、とても流行っていますが、よく初心者向けって言われますよね。ちまたでは手持ちも少なくて済むから、数百万円で不動産投資ができてキャッシュフローができる、という風に言うじゃないですか。
でも僕、本当は築古戸建てって、修繕リスクの見極めと回避方法がとても難しいんじゃないかなと感じてるんです。新築も、もちろん難しいところがあると思うのですが、ニーノさん、新築はどこが難しいと思いますか?
波乗りニーノさん
それはやっぱりファイナンスじゃないかな。お金を借りるって、難しいんだよ。築古戸建てだとそのハードルが低くなる。普通日本人ってお金借りるの、怖いって思うじゃない。僕が最初に3,750万円借りた時、手が震えたから。もし本当にずっとアパートの空室が埋まらなかったら、どうしようって。
らいおん大家さん
そうなったら毎月、何十万円もの支払いに追われて、ガクブルですね。その点で言うと、確かに戸建ては全部キャッシュで買ってしまえば、入居者が入らなくても、何かに追われることはない。確かにそこは初心者にやさしい部分かもしれないです。
波乗りニーノさん
借金がないと追い込まれることもない。新築は急いで埋めないと支払いが始まるから、そこが違うかな。
らいおん大家さん
築古と新築、難しいポイントが違いますね。みんながぶち当たる壁、すなわちどこまで直せばいいのかとか、修繕のリスクとかというのが僕は分かるので、そこはもう最大の武器を生かして築古をやっていければいいな、と思っています。
編集後記
今回はリフォーム現場で陥りがちな問題について、語りあっていただきました。次回は対談最終回。ニーノさんの本を引き合いに出しながらお金と人生の時間について話しあっていただきます。
( 取材担当:T )