■ 学生起業を経験したゆんさん
編集部
ゆんさんの自己紹介をお願いします。
ゆんさん
初めまして、ゆんです。1994年に埼玉県川口市で生まれました。住んでいたエリアは工場が多く、海外出身の方の多い地域なので、幼少期からブラジル人や中国人の友人に囲まれていました。9歳からは親の都合で東京に引っ越し、大学も東京の大学に進みました。
大学2年生の時に父親が事故で突然亡くなり、「 自分は生きている間に後悔しないように、色々なことをしよう 」と決意しました。
当時、学生起業ブームで、周りに在学中に起業する友人がけっこういたんです。それで、自分も起業してお金を稼ごうと思い、学生時代からウェブメディアを立ち上げや、システム開発の受託をやっていました。その後、経産省のIT人材支援プロジェクトに採択頂いたり、エンジェル投資家から出資してもらったりしたのをきっかけに、WEBサービス開発を始めました。
極東船長さん
すごくアクティブだよね。
ゆんさん
恐縮です。ところが、あれこれと活動していた大学4年生の時に母親がガンを患い、私が大学院1年生のときに要介護状態になってしまいました。WEBサービス開発の方でコストがかかったことや、母親の状態から仕事に専念する時間が減ってしまったのもあり、段々と生活の為に単価の高い仕事をするようになりました。
その流れで、北陸のハウスメーカーのマーケティング支援の仕事を受けたことが、不動産に関わった最初だと思います。そこの会社の社長が色々と人を紹介してくれる方で、住宅メーカーから仕事をぽつぽつともらうようになりました。
極東船長さん
どんなことをするの?
ゆんさん
例えばハウスメーカーの仕事では、競合分析や市場分析、過去の顧客のインタビューといったリサーチを行った上で、ブランド戦略や企業目的を再定義して、そこからその戦略に合ったWEB制作・広告やSNS運用を提案し、制作や運営代行を行っていました。
そんな中で、母が2020年に他界したので実家を相続し、諸事情から短期間賃貸に出しました。それも不動産賃貸業に関心を持ったきっかけです。
極東船長さん
両親を亡くして悲観して暮らすこともできたと思います。前向きになれたきっかけは何かあったんですか?
ゆんさん
親が突然亡くなってしまった経験はものすごいショックでした。自分も明日には死ぬのではという焦燥感が生まれました。友達と会っていても、「 この人は明日死ぬのでは 」とさえ思っていました。
そういう焦りから、何もしなければ、ただ生きた、死んだになってしまうと考えました。そこから、学生のうちに起業するなど、今までの自分であればリミットがあってできなかったことにチャレンジしてみようと思いました。
極東船長さん
生きているうちに全部やろうという感じですか?
ゆんさん
はい、そうです。ただ、生活する為に高い受注単価の案件を取る必要があったので、色々と知恵も絞りました。例えば、Googleでターゲットを絞って広告を出したんですが、その時にたとえば「 年収上位10%、スポーツカー好き、資産運用 」と言ったターゲットの関心を細かく設定して、集客したりしました(笑)
極東船長さん
それで、いいお客さんはきた?
ゆんさん
はい、建築雑誌で連載を持っており、都内でハウスメーカーや工務店の経営者向けのセミナーを定期開催している、地方ハウスメーカーの経営者の方に最初にご依頼いただき、その方の案件で成果が出ました。その成果を元に合同セミナーをやった結果、参加された他の企業さんからも複数依頼をいただくことができました。
ただ、やっていくうちに、「 自分で実行までやりたい 」と感じるようになりました。いろいろな分析や、お客さんの声からリサーチした上で、長期的に利益が最大になるやり方をクライアントに提案し、それが受け入れられても、きちんと一定の期間をもって効果測定する前に、短期的な利益に目線が戻ってしまうことが多々あったからです。
「 やっぱり前のやり方がいいんじゃないか 」という議論になることもありました。その都度、関係者の方すべてを説得し、軌道を戻すのですが、それにかかるコストが非常に高いと感じました。住まいづくり自体にはとても関心が高まっていたので、そのうち、間接的に住まいを作る企業を支援するのではなく、自分で建てて、自分で運営したいと考えるようになりました。
■ 集合住宅を建てるのに優れている札幌に行こうと思った
極東船長さん
札幌にはどうして越してきたの?
ゆんさん
ハウスメーカーの仕事を経験したことで住宅の新築企画に興味を持ちました。ただ、ハウスメーカーのように売るだけではなく、住まいが人に与える影響に関心があったので運営までやりたいと思い、賃貸業をやる上で色々な面で優れている札幌に行こうと思いました。身内が北海道大学出身で、日頃から札幌のいい面を聞かされていた影響もあります。
極東船長さん
札幌が賃貸業をやる上で色々な面で優れているというのは、どんな面?
ゆんさん
札幌は地方でも約200万人の人口を抱えている日本有数の大都市である上に、30年後の人口分布でも今の人口をある程度は維持すると予測されています。また、全国有数の恵まれた大自然へのアクセスの良さ、コンパクトシティで利便性が高いことも魅力です。
それだけでなく、かなり長期の話ですが、このまま地球温暖化が進むのであれば、亜寒帯エリアの価値は上がっていくと思いました。札幌のような夏でも比較的涼しい場所の人気が高まるのではないかと予想しています。個人的な実感としても、東京の夏はあまりにも暑すぎて住みにくいと感じていて、とにかく少しでも涼しいところに引っ越したいと思っていました(笑)。
不動産投資という面でみても、ポータルサイトで利回りを並べた時に北海道は高利回り物件が多く見つかります。人口を見れば都内が強いのは当然ですが、東京は利回りが低いのでいまの自分が都内で不動産賃貸業をやるのは現実的ではないと思いました。
健美家コラムの影響も大きいです。札幌にはメガ大家さんが多く、私がやりたいようなハイグレードマンションを作って運営している方が何人もいらっしゃいます。実際に札幌に来てみると金融機関も多く、新築RCから郊外戸建投資まで、様々な可能性があると感じました。
■ 開始から1年で5棟60室を取得
極東船長さん
現在の所有物件数や家賃年収はいくらですか?
ゆんさん
現在、5棟60室を所有しています。家賃収入は満室想定で3,850万円で、固定資産税や火災保険、管理費などランニングコストを考慮した場合のキャッシュフローは満室想定で月に約130万円あります。
ゆんさんの所有する物件
極東船長さん
多くの人は、月のキャッシュフロー100万円を目指してから達成するまで何年もかかるものだけど、ゆんちゃんは1年で到達したんだね。
ゆんさん
3つ理由があると思っています。
1つめは、実家を売却した資金などがあり、さらにそれをコロナ禍初期に米国投資信託に投資したところ、たまたま大規模金融緩和で大きく値上がりし、20代としては資金力があったこと。
2つめは、もともとやっていた法人が零細ながら無借金で5期続いていたこと。
3つめは、札幌に越してきてから本当に運がよくて、いろいろなことに恵まれたことです。
引っ越してきてすぐに、札幌で不動産会社を経営している女性を尋ねたら、取引先の銀行8行を紹介していただいたり、たまたま購入した物件の仲介会社の代表が友人のお父さんで、その後、運営面で強力にサポートいただいたりしました。
そうやって出会った金融機関の融資担当者様をもぎじゅんさんに紹介したところ、「 札幌イチ熱い担当者 」と言われました。そのくらい、熱心な方でなんです。この方から、この1年で3棟ご融資いただきました。自分の実力ではなく、成り行きや運の結果でしかないと思っています。
極東船長さん
札幌ではどんな物件を購入したんですか?
ゆんさん
1棟目は千歳市で中古の木造のアパートを購入しました。1棟目は絶対に失敗したくなかったので、土地値以下のファミリー向け高利回り、6世帯中の4世帯の入居で満室想定16%以上の物件を選んだのですが、高利回りで満室に仕上がったものの、大規模修繕や客付などがなかなか大変でした。
それで2棟目は札幌市内の地下鉄駅近の築浅のRC物件を購入しました。単身向けで1棟目より入れ替わりがあり、退去のたびに家賃を上げられるメリットもありましたが、原状回復費や、札幌の広告料の重さも実感しました。
その経験をもとに3棟目は若干駅からは遠いですが、駐車場が多くファミリー向け中心の、やや築古のRCを購入しました。こんな風に、どんどん買うものが変わっています。物件の購入基準としては、築浅から築古まで様々で確固たるものはありません。
多様にすることで、ポートフォリオが強くなるし、実際の経費率や平均入居年数、エリアに関するデータも集められ、今後に活きると思っています。相場を調べ、割安感があるもの、家賃の上げ幅があるものを中心に見に行っています。
もぎじゅんさん
まるで、コンビニで買い物をするような感覚で不動産を買っているよね。
ゆんさん
いや、いまの市況でコンビニで買い物をする感覚で不動産を買ったら、破綻間違いなしです(笑)。事前に結構、調べていると思います。
例えば、近隣の賃貸仲介の店舗をまわってヒアリングしたり、WEBに掲載されている検討中物件の競合になりそうな物件の賃貸情報をプログラムで収集して市場分析をしたりしています。物件の立地や入居状況に関する資料を作って融資資料に添付したこともあります。
金融機関に提出した近隣物件のデータ(1)
金融機関に提出した近隣物件のデータ(2)
■ 不動産賃貸業はお金持ちになるのに、時間がかかる
極東船長さん
若くしてお金持ちになっても、すぐに使ってしまう人もいるじゃないですか。もぎじゅんさんやゆんちゃんは、お金を増やすための勉強はどんな風にしましたか?
もぎじゅんさん
もし仮に、僕がポーカーで勝って10億円を手にしていたら、一気に溶かしてしまうと思うんです。その点、不動産賃貸業はお金持ちになるのに時間がかかるところがいいと思います。自分の器と共に資産規模が広がっていく気がするからです。
ゆんさん
うちはテレビを見ていると、「 そんなバカらしい番組を見るな 」と言ってくるような厳しい家庭で、早く家を出て、一人で好きに暮らしたいと思っていたんです。自由のためにはお金が必要だと強く思っていました。
それで、高校1年のころには「 金持ち父さん 」を読んだり、株式運用のシミュレーションゲームをやったりしていました。校内のバーチャル株運用コンテストに参加して1位になったこともあります。当時から、四季報も買って読んでいました。
極東船長さん
すごい高校生だね。
ゆんさん
変な高校生でした(笑)。たしか、その時に読んだ「 金持ち父さん貧乏父さん 」の中だったと思いますが、「 大金持ちじゃなくても、大金持ちのような気持ちで暮らせ 」と書いてあって、学生時代から謎にそういうマインドで生きていました。なので色々あってまとまったお金が入ってきても、生活水準を変えないで冷静に投資できたのかと思います。
今も、賃貸業法人の役員報酬はほぼ0で再投資に回しており、連続購入によってどんどん現金が減っています。いかに出費を抑えて再投資に使えるかは、賃貸業では特に重要だと思うので、節約を心がけたいです。
編集後記
第3回は明日16時の公開予定です。極東船長が新築RC物件を建てる時に意識していること、そこに至るまでの道のりなどを中心にお届けします。