今回の大家対談は、健美家コラムでもおなじみの岡元公夫さんと、約700名の不動産投資家が参加する「 狼旅団 」を率いる人気ブロガー、森野狼太郎さんに登場いただきます。初回の今日は、かぼちゃの馬車や通帳改ざん、「 共食い大家 」の台頭など、話題に事欠かなかった2018年を振り返ります。
悪い奴らに食われちゃった初心者の話をよく聞いた一年でした
岡元公夫さん
森野さん、今日はよろしくお願いします。ご存じない方のために説明すると、森野さんは都内の不動産会社の役員で、業界の闇をえぐる辛口ブログが人気のブロガーさんでもあります。
数百名の不動産投資家が参加する「 狼旅団 」を率いていて、セミナーは100席が一瞬で埋まるという人気ぶりです。
私が8月に川村龍平さんとの対談の中で使った「 キラキラ大家 」「 共食い大家 」という言葉は、実は森野さんのブログから生まれた言葉です。あの時は勝手に使ってしまってすみませんでした( 笑 )
参照:狼旅団の地下に潜った不動産ブログ
参照:川村龍平さんと岡元公夫さんの対談
森野狼太郎さん
いえいえ、むしろ、あの言葉がメジャーになってよかったです。それにしても、自分が不動産ポータルサイトに出て話す日が来るなんて思いもしませんでした。
今回は、長いお付き合いのある岡元さんとの対談ということで、喜んで引き受けさせてもらいました。公開できないこともたくさん言うと思いますが、よろしくお願いします( 笑 )
岡元公夫さん
ハハハ。そのあたりはうまくやってくれると思いますよ。ところで森野さんは、かなりディープな世界から、真っ当な不動産投資業界へと転進された稀有な業界人ですが、当時は相当、大変だったんじゃないですか?
森野狼太郎さん
そうですね。昔はBtoBがメインの不動産売買の仕事をしていて、新橋の喫煙率100%の喫茶店などで、人のばかしあいを毎日、見ていました。
今年話題になった五反田の地面師物件も何度か「 これ売りモノだから 」と騙されかけましたし、地上げや何やら何でもやっていたので、あのままだったら今頃、警察に捕まってたか東京湾に沈んでいたかもしれません( 笑 )。
何の因果か今はサラリーマン大家さんたち相手にも仕事をしていますが、あっちとこっちでは、同じ業界でも、世界が全然違います。あ、でも、息を吐くようにウソをつく不動産屋は、こっちにもゴロゴロいます( 笑 )。
ブログを書き始めたのも、当時、ブログランキングの上位にいた不動産屋とかが適当なことばっかり書いていたので、「 このタイミングで本当のことを書いたら面白いかも 」と思ったのがきっかけでした。ソイツは今年、廃業しちゃいましたけどね( 笑 )
岡元公夫さん
そうだったんですね。それにしても今年は色々なことがありました。
森野狼太郎さん
本当にそうですよ。ワタクシが気になるのは、悪い奴らに食われちゃっている初心者が増えていること。自分のブログではずっと警鐘を鳴らしてきたつもりなんですが、そこに辿り着く前にパクっとやられる人も多いんです。2018年は本当に、その手の話をよく聞きました。
圧倒的に知識が足りないままデカい借金を作っている人が多すぎる
岡元公夫さん
かぼちゃの馬車や、某上場企業の社員が関与する通帳改ざん事件もありました。
森野狼太郎さん
かぼちゃね~。3年くらい前に彼らが不動産の仕事を始めた時、「 この業界もヤバいのが入ってきたな~ 」と仲間内でウワサしていたんですよ。影の主犯のSさんはリーマンショック前から知っています。当時からひどいやり方をしていて、有名人でした。
でも、ワタクシ、かぼちゃの馬車に引っかかる人がいるのが信じられないんです。家賃が30年も変わらず入ってくるってありえないでしょ。第一、シェアハウスをやっている人から見たら、自分で土地を買って新築すれば半額でできるっていうとんでもない値段ですよ。なんでわからないんだろう。
岡元公夫さん
森野さんはウソを見抜くのが得意でしょうし、私も元銀行員で、人を見るのが仕事みたいなところもありますから、怪しい人や儲け話はわかります。
今回、買ってしまった人には、属性の高いサラリーマンが多いので、これまで優等生に囲まれて、性善説の中で生きてきたのかもしれないですね。それに、かぼちゃの馬車はTVCMを打っていましたし、そのほかのケースでも上場企業だったりすると、信用してしまうんでしょう。
ターミナル駅の立派なビルにオフィスを構えて、CMも打っている会社は儲かっているからそれができる。本当は、そのお金がどこから来るかを考えなければいけないのに、「 ちゃんとした会社だ 」と思ってしまう人が多いんですね。
森野狼太郎さん
そうそう、ガッツリ養分になるだけなのにね。あとひとついえるのは、圧倒的に知識が足りないままデカい借金を作っている人が多すぎるっていうことです。
ワタクシは中級者以上の人たちと集まって濃い話がしたくて、ブログの読者に呼び掛けて「 狼旅団 」というグループを作ったんです。それが、実際に会ったら、利回りだけで物件の良し悪しを語るような初心者の人が意外に多くてビックリしました。
「 え~、この人達、大丈夫? 」「 この業界ってこんなに素人ばっかりなの? 」って。売り物件の利回りなんて、いくらでも操作できるのに。これじゃ業者から見たら格好の草刈り場じゃんって、当時はずっと思ってました。
岡元公夫さん
不動産投資はもともとは、資産家や事業家などのアンテナの高い人がやるものでした。でも今はメディアの影響などもあって、裾野が広がっていますからね。
森野狼太郎さん
そうそう、「 〇〇でもできた! 」とか、「 買うだけ、簡単! 」とかね。
岡元公夫さん
それに、以前は不動産を好きで不動産業界に入ってくる人が多かったのに、今はそうではなくて、不動産投資を釣り針にして、投資家相手に儲けてやろうという人がどんどん増えています。
例えば、融資の扉が閉まった途端に看板を下ろした不動産会社がありましたが、主業が別の方が、副業としてたまたま儲かりそうだから不動産会社を経営していたと考えれば、つじつまが合います。別に不動産を扱いたかったんじゃなくて、儲かるから始めて、儲からなくなったから終わっただけでしょう。
情報が玉石混交でホンモノを見つけるのが大変な時代
森野狼太郎さん
そういうヤツが専門家ヅラして本を出して、何千万円、何億とする不動産を売りまくっていたんだから恐ろしいですよ。それにしても、昔は業者が大家を騙していたのが、今は大家が大家を騙してますからね。いつからこんなことになったんだろう。
岡元公夫さん
有名なアフィリエイターが作った某塾に、大家さんが加入し始めた頃からだと思います。その頃から「 共食い大家さん 」が増えてきました。最近は、そういう人を排除するために、入会希望者にプレゼンしてもらって、事前に審査している大家の会もありますね。
森野狼太郎さん
ワタクシがやっている「 狼旅団 」も、入団希望者には論文を書いてもらっています( 笑 )。文章を見れば人間性がわかりますよ。ちなみに、ときどき悪い人じゃないんだけど、すごい長文で気持ち悪い人がいます。もちろん褒め言葉ですけど( 笑 )。
そういえば過去には、旅団の中でマルチ商法の台所用品を売っていた人がいたこともありましたねー。ワタクシはこの業界が長いから金に汚い奴は見分けがつきます。「 ああ、こいつ、あっち側に行くな 」と思ったら、100発100中で当たります。この手の人達って、独特のにおいがあるんですよ。
岡元公夫さん
わかります( 笑 )。あと、昔は良質な本やセミナーが多かったんですが、ここ最近はホンモノを見つけるのが大変なくらい、情報も玉石混交になっています。本も出しているし変な人じゃないだろうと思って勉強会に入ったら、見事に釣られちゃったという話もよく聞きますよね。
森野狼太郎さん
確かに。「 なんだこいつ 」っていうような何にも知らない奴がアッチ系の出版社で自費出版をして、サクラ評価を従えてアマゾンキャンペーンとかやってますよね。
ワタクシもいろんなところから出版しないかって言われたけど、ブログを読んでくれる人だけがわかってくれればいいし、一から原稿書くのが面倒なので断っちゃいました。ま、そういうめんどくさがりな人向けに最近はゴーストライターさんまでいるそうですが( 笑 )。
岡元公夫さん
自費出版が得意な出版社でも、いい本を出している場合もありますから、一概にそこの本がダメとはいえないですけどね。ただ、半端な本を読むよりは、森野さんのブログを一通り読む方が勉強になるでしょうね。
森野狼太郎さん
ワタクシのブログはすごい分量だから読むのが大変ですけどね( 笑 )。ちなみにブログの文字数が多いのは、読者に長い文章に慣れてもらい、重要事項説明書の内容をしっかり読み込み、契約の場できっちり突っ込める人になってほしいという願いが込められています( 笑 )。
稀に「 要点だけ簡潔に書いてくれ 」っていうご意見をいただきますが、すべては読者の皆様の「 修行 」のためです( 大笑 )。
編集後記
お付き合いが長いというお二人。タイプは違えど、甘い話ばかりではないこの業界で、不動産投資初心者が不幸にならないようにと心配する思いは共通です。明日の第2回は、森野さんが見た三為取引の厳しい現実等を紹介します。お楽しみに。
全4回のテーマ
【第1回】悪い奴らに食われちゃった初心者の話をよく聞いた一年でした
【第2回】買主のサラリーマンが「墜落する飛行機に乗っちゃった人」に見えた
【第3回】多様化する共食い大家。本当に怖いのは「悪意の賢者」よりも「善意の愚者」
【最終回】この世に向こうから飛び込んでくる儲け話は存在しない