共に家賃年収1億円を超える赤井誠さんと松田ひであきさんの対談の4回目。サラリーマン時代に不動産投資を始めた二人ですが、セミリタイアするまでの年数は赤井さんが10年超、松田さんが2年と、大きな開きがあります。二人がセミリタイアを決めた理由とは何なのでしょう? その他、不動産投資とは違うジャンルで長く続けている投資と、二度とやらないと決めている投資、赤井さんの次の目標等について、話が続きます。
不動産投資を始めて2年でセミリタイアした理由
赤井誠さん
不動産投資を始めてどのくらいで、専業大家になったんですか?
松田ひであきさん
2006年に一棟目を購入して、2008年に会社を辞めました。2年間で5棟買って、辞めた時の家賃年収は約5,000万でした。その頃はフルローンで融資がついたので、勢いで突き進んだ感じはあります。
赤井誠さん
2年でセミリタイアとは、早いですね。会社を辞めたのは、仕事が面白くなかったから?
松田ひであきさん
その当時、朝5時台に起きて、夜12時に帰る生活をしていたんです。朝から晩まで研究所にいて、パソコンと試験装置とにらめっこ。正直、この生活から逃げたいという気持ちがありました。面白くないわけではないけど、ずっとこの仕事を続けたいというようなトキメキもなかったです。
赤井誠さん
僕もそのくらい、働いていました。すごく忙しくても10年以上兼業で続けたのは、何億円という予算を組んで世界と戦うプロジェクトは、個人ではできないから。「 プロジェクトX 」とか「 ガイアの夜明け 」の世界が好きなんです。
松田ひであきさん
僕のいた会社は工業ガスを扱っていて、仕事は研究職です。電機メーカーのように年に1回、新製品を出す必要もなく、雰囲気もゆるめでした。ただ、一人で作業をするのはいいんですが、チームに属して何かをやるというのが得意ではなかった…。
だから不動産を買って賃貸業を始めたときに、一人の経営者として自分で100%ハンドリングできることが快感でした( 笑 )。やり始めた瞬間から、もう絶対にこれをやりたい! と思いました。
それで、取り組んでいたプロジェクトが2008年3月に終わると分かっていたので、それが終わったら辞めようと思っていました。ただ、実際に辞めたのは2008年6月です。有給を2カ月がっつり使ったので、実質は3月末で仕事に行かなくなって、4月・5月は有給消化で、ボーナスをもらうというやり方で卒業しました。
会社を辞めた時は、マンガみたいに、「 やったー!俺は自由だ! 」とジャンプしたい気分でした。ただ、1カ月もするとやることがなくなってしまい、資格を取ったり、関西でも大家さん同士のコミュニケーションの場を提供したいと思い、関西大家の会を立ち上げてセミナーを主催するようになりました。
お金が儲かる仕組みが見えない投資はやらない
赤井誠さん
少し話は変わりますが、松田さんは不動産投資以外の投資ってしていますか?
松田ひであきさん
知人から誘われて、不動産とは関係のない案件で、年利18%という案件に投資したことがあります。ただ、1年で解約しました。お金は増えたんですが、不動産と違ってお金が儲かる仕組みが「 外から見えない 」のが怖かったからです。その時の教訓から、ブラックボックス的な投資はやらないと決めました。
赤井誠さん
ちゃんとプラスで終わるところがさすがですね。どこで手を引くかなんですよね。
松田ひであきさん
ギャンブルって、100勝していても、101回目で1敗したら、負けなんです。100万円が110万になったら、10万円は残しておいてとか、100万が200万円になったら、100万円はとっておいて残りの100万で遊ぶとか、できればいいんですが、実際はそれができない。欲が勝るからです。
赤井誠さん
私は危ない投資はやったことはないですね。うちは昔、親父がギャンブルで借金を作って、僕が高校のとき、借金取りが家まで取り立てに来ていたんです。自宅の権利書も持っていかれたくらいでした。
ただ、大学時代はお金のために、麻雀やパチンコはやっていました。理系だったせいか、麻雀は負ける気がしませんでしたし、パチンコも調べて勝てるものだけやるという感じでした。ただ、最後に卒業旅行でラスベガスにいって、負けてきましたけど。
松田ひであきさん
僕も学生時代、パチンコをやりました。やってみてわかったのは、これは確率論のゲームなんだなと。今は一切やりません。赤井さんは株はどうですか?
株、FX、海外投資へのスタンス
赤井誠さん
やりましたよ。でも、30年くらい前のブラックマンデーのときに700万か800万くらい飛ばしてしまって、それ以来、大きくはやっていません。まだ20代で、お金を短期間で増やしたいと思っていたから、学生時代に持っていたお金とか、ボーナスとかを全部株にして、それが全部消えちゃったんです。
松田ひであきさん
赤井さん世代の方って、たいていそこを経験していますよね。
赤井誠さん
途中まで儲かっていたのに、最後にガアーッとなくなるんですよ。僕はFXもやるんですが、最初のころは馬鹿みたいにリバレッジをかけて最後はロスカットというパターンでした。最近はだいぶ勝てるようになりました。2割増えるくらいですけどね。
松田ひであきさん
どのくらいの金額でやっているんですか? 1,000万が1,200万になるくらい?
赤井誠さん
そうです。元本を倍にしようとするから負けるのであって、1.5倍でいいよとか、1.3倍でいいよと思えば、多少の値動きには耐えられます。FXって外貨預金の代わりにもなるじゃないですか。そういう意味でも、常に少しお金を置いています。
松田ひであきさん
そういえば、赤井さんは海外にも物件を持っていますよね。
赤井誠さん
ハワイとタイにあります。ハワイはAirbnbの規制が変わったり、設備が故障したり、変動要因が多くて大変です。金利が5%ということもあり、繰り上げ返済を進めています。松田さんはハワイに買わないんですか? ハワイはそれほどブラックボックスという感じではありませんよ。
松田ひであきさん
僕は利回りとか見ちゃうんです。ハワイという場所にもプライオリティを感じていないんでしょうね。1回も行ったことないので偉そうなこと言えないんですが( 笑 )
札幌に長期の客がストレスなく泊まれるホテルを作りたい
赤井誠さん
松田さんはどの街が好きなんですか?
松田ひであきさん
札幌です。食べ物も美味しいし、こっちで刺身を食べたら、大阪の刺身は食べられないですね。全然違います。そういえば赤井さんは札幌に去年、物件を買われましたね。こちらでどう展開していくつもりですか?
赤井誠さん
横浜にある物件は子どもたちに任せて、私は札幌でホテル事業をやりたいと思っています。ホテルといえば天野真吾さんが福岡でやられていますよね。本当は季節要因がない福岡が一番儲かるんですが、僕はそれよりも幼少期と大学時代を過ごした札幌に惹かれます。
今はSNSとかいろいろな力がありますから、そういうものを利用して、海外の友だちを閑散期に呼んだりすることで、うまくやっていける気がするんです。1棟で終わるつもりはありません。そのために今年は札幌に事務所用の区分マンションも買いました。今年から、夏は札幌に滞在しています。

赤井さんの札幌拠点、ビフォー

赤井さんの札幌拠点、アフター
松田ひであきさん
どんなコンセプトのホテルなんですか?
赤井誠さん
僕は海外に1カ月とか行くじゃないですか。そこで必ず陥るのが食事問題です。ハワイはコンドミニアムタイプに泊ればキッチンがあるので自分で料理すればいいんですが、ヨーロッパはどんなにいいホテルでも、3日で食事がきつくなる。だから長居できないんです。
それは外国の人から見ても同じで、日本は外食もおいしいけれど、彼らが長くいるためには自分たちの国の料理を自分の部屋で作れる必要がある。そういった意味で、僕オンホテルは滞在型で、長期の客がストレスなく泊まれるようにしたいです。
ゴルフだって、あれだけのコースを5,000円ちょっとで回れますからね。富裕層からしたらかなり安く感じると思います。富良野なども車で2時間も走れば行けますからね。あとは宣伝だと思います。松田さんは何をやっているときが楽しいんですか?
松田ひであきさん
小さいことですけど、こういう車に乗りたいなとか、ハワイにも行ったことがないから行ってみたいなとか、もっと世界を回りたいなとか、色々あります。
赤井誠さん
僕も旅行が好きなんですが、広い世界を見ると新たな発想が生まれて、どんどんアイデアが湧いてくるので、いつまでたっても終わらない( 笑 )。だけど、やりたいと思ったら、抑えないでやってみればいいと思うんです。僕はずっとそんな感じです。
人のためにとか、社会のためにという人もいますが、やっぱり自分が人生を楽しんでなかったら、社会貢献もできないと思うんです。貧乏な人を助けたい、自分が貧乏でもいいからというのは、正直、嘘っばちに聞こえてしまいます。
編集後記
セミリタイアまでの期間も異なれば、海外投資へのスタンスもまったく違うお二人。不動産投資の成功法も、セミリタイアのタイミングにも、コレという正解はなく、すべて自分で組み立てられるのも、不動産投資のいいところなのでしょうね。明日は対談の最終回。購入する物件の基準や経営上、意識している点など、お二人のもう一段深い話をお届けします。お楽しみに。
全4回のテーマ
【第1回】13年で家賃年収1億4千万円の松田ひであきさんが35才で大家を目指した理由
【第2回】一棟目は2億3,000万円の札幌物件。たかが利回り、されど利回り
【第3回】公売、競売物件の再生なら今でも高利回りが可能
【第4回】2年でセミリタイアした理由。二度とやらないと決めた投資法
【最終回】売れるものしか買わない。重視すべきは規模ではなく「税引き後利益」