東京23区内でマンションを建築するためには「 東京都建築安全条例 」や各区の「 ワンルーム条例・指導要綱 」に従う必要があり、それらが定める部屋の数や配置ルールをマスターする必要があります。
マンションの中身の配置ルールに関しての法的制限で覚えるべきものは以下の「 ワンルーム条例・指導要綱 」「 窓先空地 」「 避難通路 」「 主要な出入口 」の4つです。
なお、今回の話は東京23区内に限定した説明ですので、他の地域の場合には各地域の条例等を確認してください。
■ ワンルーム条例・指導要綱
ワンルーム条例( または指導要綱 )についてまず理解いただきたいのは、建てたい建物が条例の適用対象となる場合、各住戸について最低面積以上にする必要があります。
ほとんどの区は、各部屋25平米以上と定めており、狭小地において最大ボリュームが限定される中で、十分な戸数を確保することが難しくなります。
また、一般的に一戸当たりの専有面積が広ければ広いほど収益性は低くなります。そのため、結論を言うとワンルーム条例の適用対象建物は相対的に収益性が低くなりおすすめできません。
従って、投資家の方には初めからワンルーム条例の適用対象とならない建物を計画するべきです。ちなみに僕がこれまでに計画して完成した建物でワンルーム条例の適用対象となった建物は一つもありません。
「ワンルーム条例の適用対象とならない建物を計画する」というのは鉄則として、ワンルーム条例の適用対象外建物を計画するためには、各区がワンルーム条例の適用対象の建物をどのように定義しているかを確認していく必要があります。
厳密な定義は必ず各区のホームページ等で最新の条例を確認する必要がありますが、主に建物に計画する住戸数( 店舗や事務所を除いた戸数 )で定義されています。以下は、できれば覚えておいたほうが良いでしょう。
15戸未満(住戸14戸まで)江東区、品川区※、大田区、渋谷区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区※
12戸未満(住戸11戸まで)世田谷区、中野区 10戸未満(住戸9戸まで)千代田区※、中央区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、目黒区、江戸川区
それ以下(住戸5~6戸まで)港区、杉並区※
※の区は指導要綱ですが、条例と同様と考えて遵守して計画したほうが無難です。また、千代田区、中央区はほとんどの地区に「地区計画」で部屋の広さを指定していますので注意が必要です。
12戸未満(住戸11戸まで)世田谷区、中野区 10戸未満(住戸9戸まで)千代田区※、中央区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、目黒区、江戸川区
それ以下(住戸5~6戸まで)港区、杉並区※
※の区は指導要綱ですが、条例と同様と考えて遵守して計画したほうが無難です。また、千代田区、中央区はほとんどの地区に「地区計画」で部屋の広さを指定していますので注意が必要です。
土地を探す際には、まず前回と前々回のコラムで説明した法的制限により、建物の専有面積や階数を想定します。その後、その建物にどれくらいの戸数が計画できるか計算します。
例えば、専有面積が200平米確保できる土地であれば、20平米の住戸が10戸計画できます。その上で、計画地が江東区であればワンルーム条例適用対象外ですが、台東区であればワンルーム条例適用対象となるため計画が成り立ちません。
つまり区によって、実際に計画できる建物のボリュームが異なることになります。住戸数14戸まで許容される区では広い敷地や高容積率の土地を探すべきですが、住戸数9戸以下しか許容されない区で同じ土地の探し方をしても無駄が多いと言えます。
各区の特徴を語りだすとキリがないのでこれぐらいにしておきますが、多数のプロや投資家が土地を奪い合っている現状で、各区の特徴を正確に理解して自身がどの区に投資すべきかを分析しておくことは、都内新築RC投資で勝つためのポイントの一つと言えるでしょう。
■ 窓先空地・避難通路・主要な出入口
話は変わって、これから説明する窓先空地、避難通路、主要な出入口については防災安全上の理由で「 東京都建築安全条例 」に規定されており、計画する建物をこれらに適合させる必要があります。
マンションの住戸は、道路又は「 窓先空地 」に直接面する窓を必ず設けることとされています。逆に言えば、道路に面さない住居は必ず窓先空地に面している必要があります。
窓先空地は、敷地内で上空まで開放された、1.5メートルまたは2メートル四方の空地です。道路に面していない住戸を計画する際には、敷地内の1階部分に窓先空地を設ける必要があります。
窓先空地の上空に一切の建築物等の障害物の計画はできませんし、全ての住戸の窓が道路か窓先空地に面している計画とする必要があります。
さらに、窓先空地から道路までは、1.5メートルまたは2メートル幅の避難通路で接続されている必要があります。避難通路の上空には建物があっても問題はありませんが、ピロティ構造の場合は屋外への開放性を求められています。
マンションの主要な出入口とは、主に階段室と屋外を繋ぐオートロックドアを設置するような建物の出入口部分のことをいいます。( 正確な定義ではなく、状況により判断されます )
主要な出入り口は道路に面することを基本とされていますが、道路に面しない場合は、道路と主要な出入口とが1.5メートルまたは2メートル幅の通路で接続されている必要があります。
このように、マンションに道路に面さない住戸を設ける場合は、1階部分に窓先空地を設けて、そこから一定幅の通路を道路まで接続させる必要があり、さらに主要な出入口までも同様に一定幅の通路を道路まで接続させる必要があります。
狭小の敷地になるべく賃貸可能な専有面積を詰め込みたいところではありますが、このルールを理解して1階部分の構成をどのように企画するかでマンション計画自体の収益性が大きく左右されます。
なかなか文章では伝えづらい話ではありますが、数多くのボリューム図面を入手して窓先空地、避難通路、主要な出入り口がどのように設計されているかを検証していくことで、理解ができるようになります。
■ 僕が東京23区にこだわる理由
今回のコラムでは東京23区のマンションに適用されるルールについて説明しました。僕は新築RCマンションに関しては東京23区以外の案件をほぼ取り扱っていません。
投資エリアを絞ることで土地勘や地盤などのリスクも身に付きますし、そもそも各区によってワンルーム条例が異なるため、投資に適しているかも含めて各区の特徴を深く理解する必要があります。さらに建てられる建物のルールも東京独自のルールを正確に理解する必要があります。
投資家の立場で言えば資金調達の都合も加わりますので、付き合いの深い金融機関の得意エリアなども理解した上で、特定の区に投資エリアを絞ることも良いことだと思います。
■ 土地からの新築企画でポイントとなる知識は限定されている
前々回から今回までのコラムで土地からの新築マンション企画で建物プランを作成するために知る必要がある法的制限について説明しました。
用途地域、接道、容積率、建ぺい率、道路斜線制限 、高度地区、日影規制、ワンルーム条例、窓先空地、避難通路、主要な出入口。
これらについて理解すれば、僕と同様に投資家自身でも土地からの新築マンション企画ができるようになります。コラムではそれぞれ本当に重要な要素しか説明していませんので、それぞれ深く勉強してみてください。