こんにちは。鉄筋たてたろうです。前回の「 東京で新築RCマンションを建てるハードルの高さ 」についての続きで、金融機関から見た都内新築RCの評価について説明します。
■新築RCの金融機関評価とは
不動産投資を志す理由は人それぞれですが、多くの方は不動産収入で余裕をもった生活をしていきたいと考えているのではないでしょうか。もともとの富裕層でない限り、それを実現するためには、融資を最大限活用して、一定規模以上の不動産を購入する必要があります。
ところが、資産を拡大する過程でこの都内新築RC投資にチャレンジしようとすると、その物件を建築中はもちろん、完成後も保有している限り、次の不動産を購入することが非常に難しくなります。
その根本的な理由としては、都内新築RC投資の「 金融機関評価額 」と「 実際の投資額( 取得原価 )」が大きくかけ離れているためです。
多くの金融機関は土地建物の評価額をいわゆる積算評価をベースにしています。積算評価はさまざまな定義がありますが、ここでは「 土地評価=相続税路線価( 千円/平米 )×土地の面積( 平米 )」、「 建物評価=RCの再調達価格( 20万円/平米 )×建物の延床面積( 平米 )」とします。
この定義により積算評価を計算すると、都内新築RC投資では、土地も建物もどちらも「 積算評価額( =金融機関評価額 )」は「 実際の投資額( 取得原価 )」の半分以下になるケースがほとんどです。
■ マンション用地の評価額と実勢価格
東京の土地はとても高いというのは直感的に感じるところですが、それでも投資として成り立っているのは、賃料単価の高い好立地において、容積率( 土地面積に対して建てられる建物の延床面積の割合 )の高い土地を選んで、その容積率を目いっぱい使った建物を建築するためです。
銀座の中央通り沿いに土地を持っていて2階建ての戸建てを建てるより10階建てのビルを建てるほうが合理的なのは明らかです。
しかし積算評価における土地評価は、あくまで相続税路線価と土地の面積とを掛けることで計算されますので、容積率は計算上考慮されません。( 相続税路線価にある程度反映はされているのですが、同じ地区で容積率が倍になっても相続税路線価は倍にはなりません )
そもそも都心部ほど実勢価格と路線価評価との乖離があると言われますが、容積率が高い土地というのはより利便性の高い場所にありますので、都内新築RC投資における土地の路線価評価は、取得原価から大幅に低い( 多くの場合、取得価格の半額以下の )金額となります。
逆に言えば、路線価を気にして土地探しをしていると、いつまでも良い土地を見つけることはできません。
■ 都内のRCマンション建築費の現実
都内でRCマンションを建築する場合、現在の状況ですと安く建てようとしても、建物の施工床面積に対して坪当たり120万円以上( 平米当たり36万円以上 )を見込む必要があります。
施工床面積とは実際に建築会社が施工する部分の面積であって、積算評価の計算根拠となる延床面積には外階段や外廊下などは含まれません。つまり積算評価ベースでの延床面積のほうが小さく、実際の建築単価は安くても40万円/平米を見込む必要があります。
積算評価ではRCの再調達価格を20万円/平米程度で計算するのが通常ですので、新築時の建物の積算評価は実際の建築価格の半額以下となります。
■ 都内新築RC投資は資産拡大にブレーキ
このように、都内新築RC投資では、土地も建物も積算評価をすると取得原価の半額以下の評価となることが通常です。借り入れを前提とすると、積算評価が大幅に割れる投資を続けることはできなくなります。
例えば新築RCに合計2億円を投資したとして、その積算評価は1億円あれば良いほうです。自己資金を4,000万円投入し、借入金額が1億6,000万円だとすると、その物件単体の金融機関評価はマイナス6,000万円となります。
つぎに別の不動産が欲しいとなったとしても、このすでに自己資金を4,000万円投下した新築RCの評価額がマイナス6,000万円の債務超過ですから、合計1億円相当の金融資産を失った状態で金融機関に融資を打診することになります。
もともと相当な金融資産がない限り、続けての投資をすることはできなくなります。
また、新築RCでは、建築に1年程度の期間が必要になるというのも注意が必要です。建築期間中は、借り入れは発生するものの、建物は完成していませんので建物評価は完成するまでゼロと考えるべきです。
つまり、建物の着工から完成にかけて、投資家の債務超過は拡大し続けます。このように、資産拡大をする過程で都内新築RC投資をすることは、拡大にブレーキをかけることだということを理解しましょう。
■ 都内新築RC投資を資産拡大に利用するためには
では都内新築RC投資で資産拡大を狙うことはできないのでしょうか。方法はあります。前回のコラムでもご説明した通り、都内の築浅RCは相場利回りが低く、売却により大きなキャピタルゲインを狙うことができます。
先の例で、建築直後に2億5,000万円で売却ができたとします。そうすると、売却益は5,000万円。マイナス6,000万円の債務超過から、自己資金を回収して、さらに投資前より5,000万円の現金を金融資産にプラスすることができます。
こうなれば、次の投資の際の融資打診は非常に有利に進めることができますし、より大きな案件に取り組むことができるようになります。
建築したマンションを保有していれば、十分なキャッシュフローは生まれますが、通常借り入れの返済期間が30年~35年と長期にわたるため、金融機関評価上の債務超過を脱するために15年~25年程度の期間が必要となります。保有していても一向に資産拡大は進みません。
このように、金融機関評価の観点から、都内新築RCを新規に取り組むことは債務超過を引き起こし、保有期間中は債務超過し続けるため、資産拡大のためには売却を考える必要があります。
保有か売却かで極端に次の投資のしやすさが変わります。保有をしたくて新築RCを選択するのであれば、その先の資産拡大を目指すのではなく、最後の不動産投資だと考えるべきだと思います。
これまで都内新築RC投資の魅力とハードルの高さについて説明してきました。それらを踏まえ、次回は最終的に都内新築RC投資ができるようになるまでのステップアップ方法について説明したいと思います。