参照:単身需要に異変、「ワンルーム入居者が決まらない」。所得格差のはざまに落ち込んだ可能性も
ワンルームはコロナ以前から供給過剰気味ではありました。それでも、外国人留学生や都心のサービス業で働く人たちの需要が増加していたため、諸条件をその時々の市況に合わせれば空室が埋まりやすかった、というのがコロナ禍前までの状態でした。
しかし、現在はその前提が大きく変化してきました。新型コロナが2回のワクチン接種後でも諸外国ではさほど沈静化に向かわない状況を見ると、しばらくの間、インバウンドやサービス業の大幅な回復はまず困難と思われます。
それ以外に、例えば大学受験生の地元国立大学志望増加もあるでしょう。これに加えて、首都圏の大学合格後に関して遠距離に実家があるのに一人暮らしをせずにあえて通学する、というスタンスが一般化してきています。
東京国分寺にある大学に山梨県から通学するなど、以前ならワンルームを借りた層が、今は実家に暮らしながら何とか学生生活をこなすという光景も普通に見られます。
■ 私の所有する都内ワンルームの空室状況
私が物件を所有しているJR山手線沿線( 北部エリア )でも、空室は目に見えて増加してきています。例えば今までは外国人に人気で常に満室だった築古の広め( 約30平米 )の一棟マンションが、現在10部屋中半分近く空室です。
この物件はJR山手線ターミナル駅から徒歩15分圏内に位置しており、今までは空室になる事がほとんどありませんでした。今年の3月までに2部屋空き、10月末現在までに埋まるどころか空室が増加という何とも厳しい状況に置かれています。
しかし、こちらはそれほど悲観的に考えていません。本当の苦戦は当然ワンルームです。狭小ワンルームやバブル期ワンルームの受難はまだ始まったばかりであり、今後も大幅な需要回復は難しいと予想しています。
例えば企業や大学の飲み会の開催頻度は今後、コロナが収まっても大きくは回復しないでしょう。東京商工リサーチの企業アンケートでも、7割の企業が「 忘年会を本年開催しない 」と回答していますし、大学のサークル・ゼミ等もその傾向になるのが既定路線です。
私に関しても、例えば友人と競馬場帰路に呑みに行くことを何となく止めています( 明確な理由がある訳ではないのですが )。今後、私自身の外食に関して以前より相当減るのでしょう。
こんなケースが増加した場合、サービス業の従業員は時短勤務の業務になりそうですし、従業員が郊外に実家がある場合は終電を気にせず帰宅できる事から、賃貸物件を借りずに通勤で業務をこなせるでしょう。その方が無駄な出費が減り、節約にもつながります。
こうなると、サービス業や卸売業、配送業や清掃業、機器レンタル業、運輸業まで、幅広い業務需要低下に繋がり得ると考えられます。
このような影響を受ける業種の従業員は家賃が安いエリアに引っ越すか、実家から通うか、もしくは2DKを借りてシェアする事で家賃負担を下げるか、という動きに向かうと予測されます。
■ 今から買うならどんな物件を選ぶか
外国人留学生や旅行者の回復はまだまだ先が見通せない状況が確定的ですし、大学生需要や若手社会人需要も鈍いのが現状です。この状況下で投資するとしたら何が良いのでしょうか?
それは「 まあまあ便利で広い。そして安い 」という物件なのだろうと私は考えています。例えば、JR山手線沿線で30㎡以上のセパレート物件で、リーズナブルな賃料で貸しても利回りが取れる物件がそれにあたります。
JR山手線沿線の狭小物件を所有されている方は、ワンルームを隣室と合併させて、広めの1DK~1LDKに改造するという案もいいと思います。
最近のポータルサイト調査や営業マンへのヒアリングによれば、それに該当する物件はポツポツと出てきます。私自身は現時点で物件を増やす予定はないので調べるだけですが、探せばあるものだなあと改めて思う次第です。
また、ワンルームを二つくっつける案については、私自身も検討をしています。最近、付き合いがある都内の老舗不動産業者さんと打ち合わせした折にもこんな会話がありました。
私 「 社有のワンルーム、埋まっていますか? 」
業者「 うーん、厳しいですね。仕方ないので、社有物件に関してはワンルームを隣室と合併させて広めにする施工をしていますよ。広くするとスグに決まりますね。1週間もすれば申し込みが入ります。なので、管理している物件の大家さんにもこのやり方を勧めようと思っていますよ 」
業者「 うーん、厳しいですね。仕方ないので、社有物件に関してはワンルームを隣室と合併させて広めにする施工をしていますよ。広くするとスグに決まりますね。1週間もすれば申し込みが入ります。なので、管理している物件の大家さんにもこのやり方を勧めようと思っていますよ 」
私は今のところ、副都心部に所有している物件は満室稼働中ですが、その中でも20㎡程度のワンルームに関して、隣室と合併する施工が有り得るのだろうと予測して試案を幾つか考えている所です。
基本的にJR山手線沿線の場合30㎡~50㎡台の賃貸物件でリーズナブルな賃料、例えば10万円未満は数が相当少ない状況です。しかし、自分なりの調査の結果、上記のような物件を求めている方の数は潜在的にかなり多いと感じています。
ですから、中長期的に考えると、「 まあまあ便利で広い。そして安い 」という物件で競争力を出すのが良さそうだというのが現時点での私の考えであり、方針となっています。
本年7月2日掲載のコラムにある通り、私の狙いは「 将来的に価値がある土地を末永く保全する 」ことです。その為には時代に合わせてその土地に建つ上物の中身を変化させ、収益を稼ぎながら保有し、インフレや紙幣減価に対抗していくというのが私の主作戦なのです。
■ ワンルームの区分の今後について
一棟マンションやアパートは、狭い部屋を二つくっつけて時代の需要に応えることができるでしょう。しかし、区分所有の場合はどうすれば良いのでしょうか?
私は現在、区分所有を3戸所有していますがファミリータイプの物件と店舗であり、ワンルームは所有していません。20年前位に不動産投資を開始した時は区分ワンルームからスタートしましたし、それ以後も数年間はワンルームを購入していました。
正確に言うとワンルームを購入する資金力、資金調達力しかなかったのです。しかし、今はそれらのワンルーム物件はすべて売却してしまいました。
もしも私が都内の狭小ワンルームを今でも所有しているとしたら、おそらく都内の主要駅から徒歩3分程度までの物件は持ち続けると思います。空室が発生しても礼金・敷金をゼロにしたり、保証会社加入を条件に審査を緩和したり、フリーレントを導入したりして乗り切っていくと思います。
しかし、駅から徒歩10分を超える物件は売却を実施していくでしょう。オーナーチェンジならば投資家が検討するでしょうし、空室ならセカンドルームや、SOHOでの用途がありそうです。
ワンルームは供給過剰ですが、都内好立地の魅力は今後もさほど衰えない事から、上手に運営しながら土地を保全して、インフレに対抗していきたいと思います。
皆様の運営もうまく行くよう願っています。