しかし、延々続くコロナ禍という、コロナウイルスそのものより、政府の過敏反応から至る社会構造の部分的マヒや、思想の分断から大衆間の断絶が起こりつつあるという現象が散見され、そんな事もあってか人々の不安心理はなかなか回復に至らないようです。
依然として、大学生や外国人、若手社会人需要の弱さから、ワンルームの入居率が落ち込んでいます。都心のファミリーマンションは底堅いのにワンルームは空室だらけという、アンバランスな雰囲気の年末となりました。
■ 著名な投資家たちの動き
世界経済に関しては、複数のヘッジファンドマネジャーがハイテク株利食いを進めつつあり、長期的には破局がくるのだろうという懸念を内包しつつ、今はまだリスク資産を保有している様子が開示情報から見て取れます。
スタンリー・ドラッケンミラーやソロスファンドなどはハイテク株をかなり売却していますが、それ以外はさほど大きくは売却を進めていません。
ハイテク株の利食いに関しては、インフレが進み金利上昇リスクが拡大すると、莫大なキャッシュこそあれインフレに乗じた利益上昇が見込めないハイテク株自体が割高、という部分が目立ってくるからだと思われます。
他にレオン・クーパーマンやマーク・ファーバーも「 現在の経済は極めて弱い 」と語っています。しかし、クーパーマンやマーク・ファーバー、( もしかするとジム・ロジャーズも )等は、ドラッケンミラー同様、経済に悲観的でも株式をショートしているわけではありません。
前代未聞の金融緩和を受けて、日々減価する紙幣よりかはまだリスク資産の方がマシだ。むしろ最後のバブルに向けて「 有終の美 」とも言える上げがあり得る、という予測を持っているからなのでしょう。
極端な例で言えば、レイ・ダリオは中国株をむしろ恒大集団破綻危機以降、買い増している程です。私は、このダリオの行動をかなり無謀な話だとは思っていますが、元々中国に入れ込んでいたため、ナンピン買いという側面もあるのでしょう。
中国の不動産バブルはまだ崩壊が始まったタイミングですので、一般的には脅威とはみなされていません。日本のバブル崩壊時も、都心部で値下がりが進んでいるのに郊外等では高騰した時間帯もあったので、タイムラグはどんな時にも付き物という事なのでしょう。
しかし、彼らも皆、最終的にはかなりの調整局面を念頭に置いているのは間違いありません。利食いをして現金比率を高めている行動も同時に抜かりなく平行している様子からもそれを見て取れます。
現金比率を高めつつも、ジョージ・ソロスやジム・ロジャーズはインフレヘッジでのコモディティ投資を進めている様子です。ソロスファンドは米国の不動産株やエネルギー株、ジム・ロジャーズは農産物等のコモディティを推奨しています。
ソロスファンドが米国不動産に強気なのは、米国FRBによる過剰な金融緩和に加えて、
@数度にわたる現金給付で紙幣減価が起きて、それが加速している。
A人口増加が続く米国では、不動産はインフレヘッジになる。
という側面からなのでしょう。
■ タワーマンションの将来について
日本においても、パワーカップルを中心に都心タワーマンションを買う動きが強まっていますし、投資家の投資意欲も相変わらず旺盛で、埋まりにくいワンルーム物件の売買も好調です。
上記の人たちは、お金を借りられるならば遠慮なく借りて現物資産に換えた方が良いだろう、都心部ならばインフレに乗じて不動産の値上がり期待が持てるだろう、値下がりはまずないはず、という思惑があると考察されます。
聞くところによれば、変動金利で最大限借りようとする方が多いそうです。資産家は別として、そうでない方たちは、加速する円安を反転させる為の利上げや、米国金利からの波及で長期金利が上昇するなどの未来もあり得るという事を想像しないのかなと心配になってしまいます。
日本でも高校大学で実施する「 マネー教育 」の必要性が高まっているように感じます。日本の不動産マーケットは米国とは異なり、基本的に建て放題・持ち家重視政策の政策です。人口減少時代を迎え、万年物件供給過剰という状態にあります。
「 将来高く売れるだろう。少なくとも値下がりはないと思う 」というぼんやりとした思惑だけで億を超えるタワーマンションを買う若夫婦を見ていると、将来的にどうするのかという疑問点が幾つも浮かんできます。
元HSBC証券不動産アナリストだった増田悦佐さんは、タワマンについて次のように語っておられました。全く同感です。
「不動産市況に関わらず、タワマンはお勧めできません。アナリスト時代に随分と沢山のタワマンを見てきましたが、余裕あるエレベーターを備えた物件を見たことがありませんでした。
ですので、朝夕のラッシュ時は地上に出るまでにまずまずな時間がかかります。これで大規模な災害が訪れた場合、何が起こるかは未知数です」
10年前の東日本大震災の際、東京では震度5強程度で大パニックでした。私は「 震度5や震度6は歴史から考えると、マイルドな地震とむしろ言えるだろう。それで大パニックで停電、エレベーター停止だからタワーマンションは大変だな 」と感じました。
安政江戸地震タイプの直下地震が起きた場合、震度7程度が予測されていますから、単純に言えば東日本大震災時の30倍、エネルギーが強い地震が起こる事になります。
タワマンが倒壊する事はまずあり得ませんが、中身にどのような被害が出てくるのか。停電で中期的に住めないくらいで終わってくれれば良いのだが…、と願っているところです。
そうはいっても、タワマンも新宿など、堅い地盤のエリアならば悪いモノではないでしょう。ただし、災害リスクから考えると、湾岸や川崎辺りは難しい部分が多そうで、私なら購入しません。

■ インフレヘッジや災害ヘッジに強い資産は何か
では、インフレヘッジや災害ヘッジに強い資産は何かというと、JR山手線近接エリアの土地、もしくはゴールド( 金 )、そしてバリュー株ではないか、というのが私の見立てです。
東京では城東エリアが軟弱な地盤として知られますが、それ以外にも荒川や多摩川下流域に近いエリアも軟弱な地盤が広がっています。関東大震災後に地盤が安定していて被害が少なかった国鉄中央線沿線に転居者が増加したように、また同じことが起きた時には強固な地盤を持つエリアの土地が底堅く推移する事が予測できます。
具体的には、JR山手線の田端〜品川間の内側エリア、同じくJR山手線の田端〜大崎間の地盤が安定したエリア辺りかなと考えています。
中でも新宿は都庁の移転先に選ばれるほど地盤が固く、次に池袋辺りも安定した地盤になります。池袋・高田馬場エリアの場合、部分的に軟弱なエリアもあるので、購入の際は地盤マップを確認していくとより安全に取引きできるでしょう。
このようなエリアを割安に買えれば、長期的に保有することでインフレに対抗することは難しくないでしょう。私は今までに随分と不動産の利食いをしましたが、区分所有は別としてJR山手線沿線で売却した物件は老朽化などの懸念があった1棟のみです。
上記のエリアでもワンルームは苦戦中です。しかし、土地としての需要が旺盛ですので、更地で売却することになってもスムーズでしょう。私は今後もJR山手線沿線物件は売却せず、ワンルームは隣室とくっつける工事を実施して持ち続けていこうと考えています。
ゴールド(金)に関しては、以前も何回か書いた通りです。歴史から考えるに、金と土地以外の資産以外は永続性を望めないとハッキリしています。しかし、金は盗難リスクがある点や収入を生み出さない点がデメリットになるので、余裕がある資産家向けという事になりそうです。
バリュー株のお勧めは、資源やインフレに強い株式で割安な銘柄になります。米国以外、例えば日本にもこの点を満たす妙味ある銘柄は散見されます。この3種でアセットミックスを作れば、安定しつつリターンもある程度望めるポートフォリオになり得るのではないでしょうか。
■ 三国志にも出てくる「 貸家 」
不動産投資に関して、学生時代に読んだ三国志の一節が記憶に残っています。
蜀の劉備玄徳を夷陵の戦いで大敗させた呉の功臣である陸遜の孫の陸雲が、洛陽の壮麗さに驚いた記述があります。同時代に洛陽で家探しをしていた某将軍が「 入居者募集 」の屋敷を見付けて見学に行ったが、もう成約済だったみたいな話もあり、当時から不動産賃貸業は存在していたようです。
同時代前後の刑劭という人は、「 貸家を借りたが、隣人は染物職人 」と書いています。日本の首都東京も洛陽と似たようなもので、人間がまずまず快適に過ごせる貸家を手ごろな値段で供給できれば、成約と安定運営は簡単なことです。
以上は不動産と金はどちらも1000年単位を生き抜く永続性がある資産なのだなと、学生時代に何となく感じたきっかけでもあります。
コロナをさほど恐れず、しかし基本的な防御策を講じつつ年末を乗り切り、来年以降の資産運用を考える12月にしたいと考えています。皆様にとっても充実した12月になりますよう願っています。
