「 脇田さんのコラムを読んで長崎での物件購入を検討しています。安くリフォームしたいのでアドバイスをください 」
ある日、関東地方在住の投資家さんから連絡をもらったのをきっかけに、数か月に及ぶ長崎でのお付き合いがはじまりました。
■ 車でのアクセスが容易な高台のアパート
その方は既に物件を見つけられていて、「 間もなく決済予定なのですが、この物件は客付けできるエリアでしょうか? 」とまず、質問されました。
偶然、すぐ近くの物件を私の知り合いが所有していて、満室で運営できていたので、そのことを伝えると、安心した様子で物件を購入されました。
その後、長崎駅で待ち合わせをして物件を見せてもらうと、市内南部の交通の便が良い高台にその物件はありました。物件近くの市道が最近拡幅されたようで、真新しい道路と、そこからの眺望がとてもいい雰囲気の物件でした。
■ 全6世帯の汲み取りトイレを水洗化
物件に到着すると、周辺の雰囲気にふさわしくない( 笑 )汲み取りトイレ特有のにおいがしました。満室にするためには、水洗トイレにすることは必須です。
ただし、全6世帯中3世帯が入居中でしたので、入居中の3世帯の水洗化工事に手間暇がかかりそうだなという印象でした。
私は汲み取りトイレの水洗化の工事は慣れていますが、ほとんどの場合は全空の状態で行います。逆に言うと、大幅な工事を進めるのが楽だから、私は全空物件が好きです。融資を使わないので、全空でも問題ないのです。
入居者がいることは、融資を使うならプラスになりますし、購入後にすぐに家賃が入ってくるという意味で魅力ではありますが、一気に工事を進められないため手間がかかるということは忘れてはいけません。
■ 入居中3世帯も住みながら水洗化する
その方はすぐに水道屋さんと入居者さんに連絡を取り、トイレを水洗化したい旨を伝えました。水道屋さんはさっそく、水道局との折衝に入ってくれました。
幸いにも物件前の市道が拡幅されたのをきっかけに、新しい下水管の引き込み口が物件前に新設されていたため、大規模な掘削工事は行わなくていいとの回答がありました。
ただし、想像していた通り、空室の3室のみを水洗化することは認められないという返事で、全世帯の工事を行う必要がありました。
一瞬心配しましたが、3人いる入居者さんに連絡を取ったところ、3世帯とも自宅のトイレが今風の水洗トイレに換わるということでとても喜んでいただき、工事への協力を約束して頂けました。
■ 入居者さんが汲み取り料金を滞納しており工事が中断
順調に工事が進んでいたはずのある日、水道屋さんから連絡がありました。
「 実は、誰かわからないのですが入居者さんが汲み取り料金を滞納しているそうで、その滞納が解消されない限り下水管への接続工事を進められません 」
誰が滞納しているのか確認したかったのですが、水道局さんは「 個人情報だから教えられない 」という返事でした。自分たちで滞納者を特定して代金を支払ってもらうしかありません。
さっそく、大家さんが入居中の3名へ連絡を取ったところ、すぐに該当者か判明しました。滞納代金は約11万円ありましたが、「 お金がないので今すぐに払うことができない 」といいます。
仕方がないので、この大家さんは11万円を一時的に立て替えて、無事に工事を再開することができました。
■ 水洗化工事は各インフラを更新する絶好のチャンス
現在もこの工事は進行中ですが、今回の水洗化のように敷地内の地面を掘削するようなことは滅多にないので、このような機会は物件の各インフラを更新する絶好のチャンスともいえます。
特に下水管の近くに埋設することが多い上水管については、少なくとも現在の状況確認だけでも目視等でしておくといいと思います。
最近の塩ビ管なら大きな問題が発生している可能性は低いでしょうが、ボロ物件であれば昔の鉄管が使用されているケースもよくあります。その場合はサビが発生する危険があるので、是非交換しておくといいと思います。
下水管を扱える職人さんであれば、上水管を扱うこともできるはずですので、コストを抑えながら将来に備えたインフラの更新工事を実施できます。
■ 最初にお金をかけることも必要
私はとにかくお金を節約するイメージがあるかもしれませんが( 笑 )、最近は物件を購入したらある程度、お金をかけてインフラの工事を行うようにしています。
例えば、赤水が出た物件があったけれど、浄水器をつけてごまかしたりということはありません。配管を取り替えて、その後も長く、安心して使えるようにします。もちろん、買うときにはその分のコストをかけても問題ないという価格で購入してしています。
ですので、この大家さんにも、同じアドバイスをしました。最初にしっかりと直しておくと、もし売却することになった際にも、「 配管が交換済み 」であることがアピールポイントになります。
ボロ物件投資というと、ボロのまま貸しているというイメージを持つ人も多いでしょうが、コストをかけるべきところにはかけるというメリハリが、その後の安定経営のためには大切なのです。