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【新連載】大家と借主、本当に強いのはどっち?〜立退問題と信頼関係破壊の法理〜

山村暢彦さん_画像 山村暢彦さん 第1話

2021/1/25 掲載

■1. 自己紹介

はじめまして、弁護士の山村暢彦と申します。まだまだ若輩ものではありますが、不動産に注力した弁護士として、常日頃、賃貸・売買といったトラブルや、不動産の絡む相続トラブルと向き合っています。

弁護士を目指したのも実家で目にした不動産・相続トラブルがきっかけでした。学生時代に、不動産や法律って不思議だなと感じた興味から、紆余曲折を経て弁護士を志した経緯があります。

自分自身も不動産投資家です。後から「 こうすればよかった 」と物知り顔で指摘して、当事者の気持ちが分からない弁護士にはなりたくなかったので、思い切って弁護士2年目くらいに、収益不動産を購入してみたのです。

小さいながらも、思い切って賃貸アパート経営をスタートしてみて、弁護士目線だけでは分からない、契約の流れ、関係者とのやり取り、そして、大家さんとしての心情を学べました。非常に良い経験になったと思います。

と言いながら、赤字ではないものの、最近は購入時に感じなかった潜在的なリスクが色々見えてくるようになり、タイミングを見て出口戦略を考えなければと思う今日この頃です・・・。

■2. お金を払わないのに、出ていってもらえない?

さて、今回は私が子どもの頃に不思議に感じた賃貸トラブル、いわゆる立退問題について紹介したいと思います。

私の実家はもともと小さな農家の家系です。徐々に農作業離れをするにつれ、田んぼにアパートを建てるようになりました。実家の近くには古びた借家もありました。

今考えると、突っ込みどころが多々あるのですが、留守番をしていると、よく知らないおじさんが訪ねてきて、「 借家のお金だ 」といって、数枚のお札を置いていきました。

ある日、父親が晩酌している時、「 ●●のおっちゃん、また家賃払えへんな。困ったもんやな 」とぼやいていました。私は「 家賃払えへんなら、出ていってもらったらええんちゃうん? 」と父親に言いました。

お金を払って物を買う、お金を払って住居を借りる。子どもながらにこの程度のことは理解していましたので、お金を払わないなら出ていってもらえばいいというのは、至極当然の疑問だったと思います。

この時には、「 たまに家賃を持ってくるときもあるし、簡単には出ていってもらえへんねん 」と父親から言われ、親が言うんだし、そういうものかとしか思いませんでした。

■3. 信頼関係破壊の法理

時は流れ、私は法学部で法律を学び、弁護士になりました。そして、子どもの頃の疑問は一応の解決をみました。

既にアパート経営をされている大家さんならご存じかもしれませんが、仮に賃料不払いや、賃料支払いの遅延があっても、大家の側から賃貸借契約を解除するのは非常にハードルが高いのです。

賃借人が、判例により認められる「 信頼関係破壊の法理 」というものに守られているからです。「 信頼関係破壊の法理 」の概要は次のようなものです。

住居という生活の本拠になる賃貸借契約においては、多少の契約違反があったからといって、即刻出ていけというのは厳しすぎる。だから、大家の側から、賃貸借契約を解除できるのは、「 信頼関係が破壊された 」といえるほどの重度の契約違反があった場合に限られるのだ。

このため、結果として、賃料の支払いが約束の期日より遅れたり、1回や2回程度の賃料支払いがなかったりした程度では、大家の側から「 出ていってくれ 」とは言えないのです。

■4. 大家と借主、本当に強いのはどっち?

軽微な契約違反で住居を失ってしまう賃借人を保護しようという「 信頼関係破壊の法理 」自体は、もっともな理屈だと思います。ただ、現実のトラブルを見ていると、また新たな疑問も生じてきます。

弁護士のもとには、「 賃料を払わない 」「 ペット禁止なのに猫を飼う 」「 騒音等の近隣トラブルを起こす 」などの、いわゆる悪質賃借人に対する立退の相談が常日頃舞い込みます。

賃料不払いなども、内容を聞くと本当に金銭に困っているわけではなく、ギャンブルにはお金を使うのに、家賃は払わないというような、本当に困った人も多くいます。

ところが、「 信頼関係破壊の法理 」によって、類型的に法律に守られている賃借人に立退いてもらうのは容易なことではありません。そもそもそのような属人的な理由を主張するにも、証拠の収集から一筋縄にはいきません。

また、裁判で立退を認めてもらうにしても、「 立退は認める。しかし、対価として、家主が立退料を●●万円払いなさい 」みたいな判決が出ることもあります。

「 大家と借主、本当に強いのはどっち? 」。学生の頃は疑問に思わずに学んできた判例、法理論の考え方も、弁護士となり実務家として活動するにあたり、そんな疑問を感じることも出てきました。

「 大家と借主、本当に強いのはどっち? 」という気持ちは、賃料関係だけでなく、様々な場面で生じます。しかし、これまでの裁判例と実際の問題を知ると、悪質賃借人が発生した場合に、大家から見て一番理にかなった対応は次のようになります。

  1. ①早急に立退交渉を開始して
  2. ②引っ越し代程度の立退料を提示して退去をまとめる

あくまで損切にはなりますが、賃料不払いの状態が1年も続いてしまうとか、訴訟までやって弁護士費用もかかってしまう等のほうが、経済的損失が拡大していってしまうのです。

■5. リスクを抑えるアパート経営のために

厳しいですが、法律が大家を守ってくれないと感じることは多くあります。むしろ、ときには過重な負担も課してきます。そのため、大家さんは自ら情報収集をして、できる限り自発的にトラブルを解決していかねばなりません。

そのための情報の一つとして、私の連載では今後、不動産のトラブル事例と、その解決方法をご紹介していきたいと思います。

皆様にはこのコラムを通じて、不動産投資のリスクを一つでも多く知ってもらい、あちこちにある落とし穴にはまることを防いでいただければ嬉しく思います。

プロフィール

■ 山村暢彦さん

山村暢彦さん

弁護士
不動産投資家

事務所 ホームページ
https://fudousan-lawyer.jp/

フェイスブックページ
https://www.facebook.com/profile.php?id=100011023749150

不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。
不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。
不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。


■ 主な経歴

祖父母の代からの大家の家系に生まれる。
古い借家で家賃滞納などのトラブルを経験し、「不動産・相続」の悩みを解決したいという思いから弁護士を志す。
自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。

多数の不動産会社の顧問弁護士を務めており、また、そのネットワークから建築・リフォーム会社、運送会社等の顧問先企業の数も増加している。
昨今、「働き方改革」の反面、労働トラブルが増える中で、企業側の労働者問題の対応が増加しており、企業研修などでは「副業」について話す機会も増えている。

趣味はウイスキー、読書、靴磨き。
大勢でお酒を飲むのも好きだが、一人の時間を作り、頭の整理をする時間も好き。
好きな言葉は、「運と縁」。

山村法律事務所
神奈川県横浜市中区本町3丁目24−2 ニュー本町ビル5階C号室

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