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売却した物件の契約不適合(瑕疵担保)についてー築古物件トラブルケース2 ー

山村暢彦さん_画像 山村暢彦さん 第12話 著者のプロフィールを見る

2021/9/6 掲載

自ら大家としての経験も有する、不動産・相続トラブルに注力する弁護士の山村が、不動産トラブルを予防するために、実話を基にした解決事例をご紹介します。

1、築古物件トラブル/ケース2

築古物件特有のトラブル第2回目となります。利回り重視のために、築古物件を購入してアパート事業を営む、相続などで取得した築古物件を賃貸するなど、大家業と築古物件は切っても切り離せないものです。

今回は、最近ご相談の多い、築古物件購入のトラブルをご説明します。大家さん側からすると、「 売却の際の注意点 」ともいえるかもしれません。

2、築古物件、良くある「 契約不適合( 瑕疵担保 )トラブル 」

1)買主からのクレーム

長年保有したアパートを、資産整理のために売却、決済も済んでほっとしたのも束の間。仲介会社から連絡が入り、「 買主さんから、●●の修理代金を請求されているんですが・・・ 」なんて連絡が入ることは、良くあるトラブルです。

私の経験からすると、旧民法下の「 瑕疵担保責任 」のときよりも、民法改正後の「 契約不適合責任 」のときのほうが、このトラブルは増えた気がします。

2)契約不適合責任( 瑕疵担保責任 )

「 契約不適合責任 」、「 瑕疵担保責任 」について簡単にご説明させていただきます。本当は、改正されているように、契約不適合責任と瑕疵担保責任では詳細が異なるのですが、今回は深入りしません。

契約不適合責任( 瑕疵担保責任 )とは、買った不動産が契約内容どおりの物でなかった場合に、その損害を売主に対して賠償請求できる、という制度です。

事例1)アパートの建築用地として土地を1億円で購入したところ、地盤が非常に弱く、地盤の強化工事のために、2,000万円の費用がかかってしまう。

事例2)古い家屋を購入したが、水道ポンプの調子が悪く、その修繕費のために数百万円の費用がかかってしまう。

事例3)中古のアパートを購入したが、その一室から漏水が発見し、そのまま賃貸できないことが判明した。

概ねこのような場合、買主が意図したとおりの性能、性質を有していなかったので、そのための損害を売主に請求できるかどうか、というのが契約不適合責任( 瑕疵担保責任 )の問題です。

★皆さん、1)~3)の具体例をみて、売主が賠償しないといけないものだと思いますでしょうか??

3)契約不適合責任( 瑕疵担保 )の請求の可否

ちょっと意地悪な問題だったかもしれませんが、答えは、「 契約内容次第である 」というのが回答です。一つずつ見ていきましょう。

事例1)アパートの建築用地として土地を1億円で購入したところ、地盤が非常に弱く、地盤の強化工事のために、2,000万円の費用がかかってしまう。

「 アパートの建築用地 」という目的のために購入することが契約内容になっているのであれば、アパート建築のための地盤改良費用は、認められやすい費用と言えます。

もっとも、この土地について、①「地盤改良の必要性が全くなさそうなこと」を前提として、売買代金が定められたのか、②「 地盤改良の必要性があるかもしれない 」というリスクを込みにして、売買代金を設定したのかによって、結論が変わってきます。

言い換えれば、地盤改良等全く心配しなくて良いので、「 1億円 」としたのか、地盤改良等の不安要素があるから、「( 近隣相場より低い )1億円 」としたのか、結論は契約内容によって変化するということです。

事例2)古い家屋を購入したが、水道ポンプの調子が悪く、その修繕費のために数百万円の費用がかかってしまう。

2)も考え方は同じです。例えば背景事情として、水道ポンプを約1年半ほど前に新規に取り換えてあり設備故障トラブルの可能性がないものを前提として代金設定したのか、それとも老朽化していていつ設備トラブルが発生してもおかしくないものとして代金設定したのかによって、結論が変わってきます。

事例3)中古のアパートを購入したが、その一室から漏水が発見し、そのまま賃貸できないことが判明した。

3)も同様です。ちょうど天井等をリフォームしたので、雨漏れがないことを前提として代金に反映させて売却したのか、漏水箇所等「 不明 」という条件で取引したのかによって結論が変わってきます。

幾つか事例を見ていただいて分かってきたかと思いますが、「 契約の前提事項やその経緯等 」=「 契約内容 」によって責任の所在がかわるので、「 契約不適合責任 」というものだと理解して差し支えないです。

「 どんな修繕費用だから、契約不適合責任( 瑕疵担保 )の対象になりますか? 」という質問は、契約内容、契約書の記載事項によって、結論が変わってくるというものなんですね。

3、契約不適合責任( 瑕疵担保 )の免責特約

上記の具体例をみて、どのように感じましたでしょうか。机上の問題として考えている分には、若干アカデミックで面白いかもしれませんが、現実の問題として考えると、こんな不安定かつトラブルになる要素は排除しておきたいと思います。

そのため、特に築年数が古い物件であれば、「 契約不適合( 瑕疵担保 )責任 」を免責するとの特約を入れるほうが一般的です。

ディベロッパーなどが販売する新築マンションであれば、逆に、瑕疵や修繕箇所がないことが前提で販売するほうが普通です。

しかし、老朽化物件については、このような契約の前提事項等によって責任の有無が分かれるようなことがあれば、売主さんとしても、いつ責任を負われるか分からない不安定な立場になりますから、一般的には、「 契約不適合免責条項 」を入れて、進めていきます。

また、非常にざっくりとした基準ですが、築年数20~30年を経過した物件での瑕疵担保責任( 契約不適合責任 )を認めた裁判例は極めて少ないです。

そのため、大家さんは売主側として老朽化物件を売却する場合には、必ず契約不適合責任の免責条項を付ける。老朽化物件を購入する場合には、「 契約不適合責任免責条件 」でも仕方がない、何かあっても裁判例上も責任追及できないというリスクを込で、価格交渉すべきだと言えます。

4、まとめ

難しくしようとすれば、ドンドン難しくなる「 契約不適合責任( 瑕疵担保 )」の問題ですが、今回は、具体例を用いて、分かりやすくご説明させていただきました。

余談ですが、法律の専門書を探すと、「 契約不適合( 瑕疵担保 )」責任だけで、分厚い書籍が何冊も慣行されているような分野です。

今回の記事で「 契約不適合( 瑕疵担保 )」責任について、イメージをもっていただければ幸いです。この問題は決済後に問題が生じている際には「 法的な問題 」なのですが、契約時点では「 価格交渉等経済的要素の一つである 」という点が、個人的には興味深い問題だと感じています。

今回は老朽化物件の売買に関連する「 契約不適合( 瑕疵担保 )」責任についてご説明させていただきました。

大家さん側としては、事前の情報収集と、いざとなったら早期に専門家に相談するということを肝に銘じて、リスクを抑えるアパート経営に励みましょう!

☆お知らせ

不動産大家さんのトラブル専用のホームページを公開しました。今後は定期的にセミナー、無料相談会等も開催していきますので、興味がある方はブックマーク等お願いいたします!( ※おそらく、自然検索では辿り着かないと思われます・笑 )

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

山村暢彦さん

山村暢彦さんやまむらのぶひこ

弁護士
不動産投資家

不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • 祖父母の代からの大家の家系に生まれる。
    古い借家で家賃滞納などのトラブルを経験し「不動産・相続」の悩みを解決したいという思いから弁護士を志す。
    自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。

    多数の不動産会社の顧問弁護士を務めており、また、そのネットワークから建築・リフォーム会社、運送会社等の顧問先企業の数も増加している。
    昨今、「働き方改革」の反面、労働トラブルが増える中で、企業側の労働者問題の対応が増加しており、企業研修などでは「副業」について話す機会も増えている。

    趣味はウイスキー、読書、靴磨き。
    大勢でお酒を飲むのも好きだが、一人の時間を作り、頭の整理をする時間も好き。
    好きな言葉は、「運と縁」。

    山村法律事務所
    神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2 ニュー本町ビル6階

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