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「ここはうちの土地だ!通らせない!」通行権問題の現実と対処法。近隣トラブルの基本<その3>

山村暢彦さん_画像 山村暢彦さん 第16話 著者のプロフィールを見る

2021/11/12 掲載

自ら大家としての経験も有する、不動産・相続トラブルに注力する弁護士の山村が、不動産トラブルを予防するために、実話を基にした解決事例をご紹介します。

1、近隣トラブルその3

近隣トラブルの第3回目となります。今回は、「 通行権 」問題の良くあるご相談と考え方についてご説明していきます。

通行権問題も、境界問題と同様、裁判沙汰になる前のトラブルが非常に多いと思います。不動産業界からすると、通行権や上水道等の問題は本当に頭の痛い問題です。



2、現実的な通行権問題

1)頻発する通行権トラブル

前回のコラムでも書いたとおり、高齢化社会が進むについて、通行権に関するトラブルは増える傾向にあります。今後も増えていくでしょう。

ア、共有土地の通行問題
「( 共有状態の土地なのに、)ここは自分の土地だからと道を封鎖された 」

イ、通行権の基本
「 隣の家が当たり前のように車で通行しているが、道路ではなく、私有地だ 」

ウ、通行権と通行料
「 確かに、うちの土地を通らないと道路に出られないみたいだけど、通行料って取れないんですか? 」

このようなご相談が最近、本当に多いです。一つずつ見ていきましょう。

2)共有土地の通行問題

民家が5軒、6軒と並んでいて、公道に出るための家の前の私道を、その5、6軒で共有している、という私道の共有状態は非常に多く見受けられます。

このうち、頑固な方が、「ここはうちの土地だ!通らせない!」などと言って、新規に宅地を購入した方に嫌がらせをする、というのは、嘘のようで本当に良くあるお話です。

「 共有 」と定めがあるように、共有者は基本的に共有物を利用することができます。特に共有の私道に関しては、持ち分をもっていれば、自由に利用できる、といっても過言ではないです。

そのため、共有者の一人が道を封鎖するようなことがあれば、法律違反で問題行為です。

( 共有物の使用 ) 第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

ただ、非常に困るのが、実際に道を封鎖されると違法な状態を是正するのに非常にコストがかかってしまう、ということです。

仮に道を封鎖されてしまうと、「 妨害排除請求権 」という権利によって訴訟を提起し、その後の強制執行手続で道の封鎖を解除する、という手続を取らねばなりません。

どう考えても、新規の宅地購入者には酷な負担です。そのため、実際にこのような偏屈な人が近場に住んでいる土地の売買が白紙になってしまったというようなこともあります。

売れなくなった土地所有者からすると腹立たしいですが、実力行使で封鎖されたバリケードなどを壊すと、今度は「 自力救済の禁止 」という別の問題に触れてしまいます。

このように違法でも、その排除が難しいという事態は度々生じてしまいます。私有地ですので対応してくれないかもしれませんが、このような場合は次のような手立てが考えられます。

①警察に道路封鎖されていると相談して、注意してもらい封鎖をとく
②「 裁判になると損害賠償を請求されるよ 」とプレッシャーをかけて封鎖をとく
③盗人に追い銭ですが、幾らか金銭を支払って、封鎖をとく

このように、現実的な対処というのは、なかなか限られてしまうものです。

他のコラムで「 司法の現実 」など裁判の限界を述べたものもありますが、制度的な真偽の公正さを確保するために、違法状態の是正にも時間的、労力的コストがかかる点は現状の司法制度の抱える問題点だといえるかもしれません。

3)通行権の基本

さて、では法的に通行権を主張する場合、どのような法的関係になっているのかを説明します。

以下の条文にあるように、「 袋地 」になっており、どうしても他人の土地を通らないといけない場合のみ、通行権が認められています。要は「 こっちのほうが便利だから 」、という理由で人の土地を通るのは認められないということですね。

そして、通行する範囲についても、必要かつ最小限の方法とされております。当たり前のように感じるかもしれませんが、他人の土地の利用を妨げないように、最小限の範囲を通行しなければなりません。

良くあるご相談なのですが、このような定めのため、基本的に「 車での通行権 」というのは認められない傾向にあります。

深入りしませんが、裁判例上「車両での通行権」を認めたものもあります( ※東京高判平19.9.23判タ1258-228 )が、特殊な状況があって初めて認められたものなので、原則は「 徒歩の通行権 」だと覚えておくと良いと思います。

( 公道に至るための他の土地の通行権 )
第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
第二百十一条 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

4)通行料

通行料については以下のように定められています。条文ですと、具体的にその金額についての定めまではありませんが、「 通行権 」が発生する以上「 通行料 」が発生するというのが民法の定めです。

あくまで相場でしかないですが、通行料については、近隣の駐車場の相場から、面積割合に応じて算出するなどが一般的でないかと思います。

第二百十二条 第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。

3、まとめ

今回は、近隣トラブルのうち、通行権関連について紹介させていただきました。細かい話をすると色々とあるのですが、まずは基本として今回の内容を抑えてもらえればと思います。

通行権問題も、裁判まで発展させることのできない問題なので、事前知識をもってトラブルに備えていきましょう。

大家さん側としては、事前の情報収集と、いざとなったら早期に専門家に相談するということを肝に銘じて、リスクを抑えるアパート経営に励みましょう!



■ お知らせ

下記のように、不動産大家さんのトラブル専用のホームページを公開しました。今後は定期的にセミナー、無料相談会等も開催していきますので興味がある方はブックマーク等お願いいたします!( ※おそらく、自然検索では辿り着かないと思われます・笑 )

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

山村暢彦さん

山村暢彦さんやまむらのぶひこ

弁護士
不動産投資家

不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • 祖父母の代からの大家の家系に生まれる。
    古い借家で家賃滞納などのトラブルを経験し「不動産・相続」の悩みを解決したいという思いから弁護士を志す。
    自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。

    多数の不動産会社の顧問弁護士を務めており、また、そのネットワークから建築・リフォーム会社、運送会社等の顧問先企業の数も増加している。
    昨今、「働き方改革」の反面、労働トラブルが増える中で、企業側の労働者問題の対応が増加しており、企業研修などでは「副業」について話す機会も増えている。

    趣味はウイスキー、読書、靴磨き。
    大勢でお酒を飲むのも好きだが、一人の時間を作り、頭の整理をする時間も好き。
    好きな言葉は、「運と縁」。

    山村法律事務所
    神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2 ニュー本町ビル6階

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