• 完全無料の健美家の売却査定で、できるだけ速く・高く売却

×

  • 収益物件掲載募集
  • 不動産投資セミナー掲載募集

買付証明を入れてからのキャンセルってアリ?契約解約に関するトラブル<その1>

山村暢彦さん_画像 山村暢彦さん 第17話 著者のプロフィールを見る

2021/11/25 掲載

自ら大家としての経験も有する、不動産・相続トラブルに注力する弁護士の山村が、不動産トラブルを予防するために、実話を基にした解決事例をご紹介します。

1、不動産相談で最も多い「 解約トラブル 」

不動産売買に関する解約トラブルの第1回目となります。不動産取引としては一番多い相談かもしれません。「 買付証明とキャンセル 」「 手付解約 」「 融資特約 」等を順におってご説明していきます。

今回は、「 買付証明 」と大まかな不動産売買契約の流れを整理していきます!

2、買付証明とキャンセル

1)「『 買付証明 』を出して一番手だったはずなのに、理由なくキャンセルされた。これって損害賠償請求できますか? 」

「 まだ契約前なのに、『 買付証明を出したんだから購入しろ 』と売主さんに強行に言われています。買わないといけない義務があるのでしょうか? 」

これらは、度々あるご相談です。結論からいうと、「 契約前 」であり「 買付証明書( 買入れ申入書等 )」を入れただけの段階であれば、理由は関係なく基本的にキャンセル可能です。

裁判例も多数ありますが、基本的に正式な売買契約の締結前であれば、契約関係に入るかどうかは契約自由の原則であり、買付証明を入れていたとしても撤回可能というのが多数の裁判例です。

関連するご相談として、「 買付証明を入れたのが第1順位だったのに、第2順位の人に売っているようだ、これはおかしいんじゃないのか? 」。この相談もよくあります。

しかし、契約前で拘束力が発生していない以上、道義的にはよくないことであったとしても、法的な責任まで追及できないというのが私の考えです。

もっとも、仲介会社等が自社の利益のためにこの手の順位を操作するという話もあるようで、この辺は倫理的にはあまり好ましくないことなのかなとは思います。

2) よく調べられている方は、「『 契約締結上の過失 』という理屈で、損害賠償請求ができるんじゃないですか? 」という疑問が浮かぶと思います。

「 契約締結上の過失 」というのは、契約するまでには、双方契約条件内容のすり合わせや、その準備行為を契約に先立っておこなうことは通常です。

そのため、その後契約に至らなかったとしても、契約が成立することを前提に支出させた費用や準備行為は賠償すべきだろう、という考え方の下、契約前であっても他方に損害賠償請求できる、といった理屈です。

契約前の場面で何とかできないかと調べた結果、この理論を見つけたというお話を聞きますが、一言でいうと「 かなりハードル 」が高いです。

有名な判例である「 最判昭和59年9月18日判時1137号51頁 」をご紹介します。

概要:マンションの購入者を募ったところ、クリニックに利用するために電気容量が一般住居以上に必要になるということで、売買契約締結前に電気容量を増大する工事を売主側に要求し、施工させた。その後、契約に至らなかったという事案。

この判例では、「 契約準備段階に入ったものは・・・相互に相手方の人格、財産を害しない信義則上の注意義務を負う 」として、買主側への賠償請求を認めています。

この裁判例では工事費用という実損が発生しているのでこの理屈で公平をはかりましたが、一般的に、「 買付証明が入ったことにより、その間他の相手への売却機会を喪失した 」とか「 打ち合わせのために生じた、時間や労力 」といった程度のことでは、この理屈を用いた請求はできません。

まとめると、かなり特殊な理屈であり、使える場面は限定的だと考えるべきでしょう。「 正式な売買契約の締結前であれば、契約関係に入るかどうかは契約自由の原則であり、買付証明を入れていたとしても撤回可能 」という基本を改めて認識しておくべきでしょう。

3、契約後の解約

次に、「 売買契約後 」の話に移ります。基本的に「 手付解約以外 」の解約方法はないと考えて良いでしょう。その他は「 融資特約 」という話もありますが、これは別の記事にまとめます。

概ね、契約までは自由に撤回可能、契約後から決済までは手付解約可能、と整理しておくと良いと言えます。

手付解約とはどういうことかと言いますと、契約時に、代金総額の5~10%程度を手付金として買主から売主に支払うことが一般的で、これを「 手付 」と言います。

買主側が解約したいと思えば、手付金を放棄すれば解約することができます。他方、売主側が解約したいとすれば、手付金を倍返しすれば、解約することができます。

( 手付 )
第五百五十七条 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。

契約後に、大きなトラブルなく解約できるのは手付解約程度なので、それ以外は、特殊な融資特約、それを除くと、「 債務不履行解除 」または双方同意しての「 合意解約 」程度しかありません。

今回のことをまとめると、「 売買契約の前後 」で大きく法的な責任が変わるんだな、ということを皆さんに知って欲しいです。

持ち回りでの売買契約などを行うと、売買契約書の取り交わしも、事務手続のうちの一つのように思ってしまうかもしれませんが、売買契約時点で大きな法的責任が発生しますので、この点は留意して契約手続を進めるべきでしょう。

4、まとめ

今回は、ご相談の多い、契約前のキャンセル、買付証明時点のキャンセルを解説させていただきました。不動産の売買は流れることも多いですが、それで労力を損したと嘆いていては良い取引に巡り会えません。

法的にできることできないことを把握して、良い取引につながるよう、頑張りましょう!大家業を行う際は、事前の情報収集と、いざとなったら早期に専門家に相談するということを肝に銘じて、リスクを抑えるアパート経営に励みましょう!



■ お知らせ

下記のように、不動産大家さんのトラブル専用のホームページを公開しました。今後は定期的にセミナー、無料相談会等も開催していきますので興味がある方はブックマーク等お願いいたします!( ※おそらく、自然検索では辿り着かないと思われます・笑 )

https://fudousan-ooya.com/
無料会員登録

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

アクセスランキング

  • 今日
  • 週間
  • 月間

プロフィール

山村暢彦さん

山村暢彦さんやまむらのぶひこ

弁護士
不動産投資家

不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • 祖父母の代からの大家の家系に生まれる。
    古い借家で家賃滞納などのトラブルを経験し「不動産・相続」の悩みを解決したいという思いから弁護士を志す。
    自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。

    多数の不動産会社の顧問弁護士を務めており、また、そのネットワークから建築・リフォーム会社、運送会社等の顧問先企業の数も増加している。
    昨今、「働き方改革」の反面、労働トラブルが増える中で、企業側の労働者問題の対応が増加しており、企業研修などでは「副業」について話す機会も増えている。

    趣味はウイスキー、読書、靴磨き。
    大勢でお酒を飲むのも好きだが、一人の時間を作り、頭の整理をする時間も好き。
    好きな言葉は、「運と縁」。

    山村法律事務所
    神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2 ニュー本町ビル6階

閉じる

ページの
トップへ