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「契約不適合責任免責」特約ってどうなの?-2021年に多かった売買トラブルの傾向-

山村暢彦さん_画像 山村暢彦さん 第18話 著者のプロフィールを見る

2021/12/7 掲載

自ら大家としての経験も有する、不動産・相続トラブルに注力する弁護士の山村が、不動産トラブルを予防するために、実話を基にした解決事例をご紹介します。

■ 2021年トラブルの振り返り

年末企画として、2021年のトラブルの傾向を振り返ってみたいと思います。今回は、「 売買トラブル編 」です。

賃貸とも類似の傾向なのですが、「 近隣トラブル 」が非常に増加したな、という気がします。コロナ禍で自宅にいる時間が増えたことで、周りのことがいつもよりも気になるのかもしれません。

もう一つは、2020年4月の民法改正によって、瑕疵担保責任から契約不適合責任へ改正となった影響が出始めた印象です。まだまだ契約不適合責任に関する裁判例はほとんどないところですが、弊所でも裁判事案も出始めました。

一つずつみていきましょう。

1. コロナ禍と近隣トラブル

まず、コロナ禍の不動産業界への影響ですが、当初( 2020年3~5月 )の予想に反して、都心近郊不動産の価格下落はなく、また、郊外の需要が急増したという話を( 二次情報ではありますが )よく聞きました。

例えば、都内のマンションで暮らしていた世帯が、自宅勤務も増えたため、より広い郊外の戸建に住み替えを図ったため、郊外の戸建が飛ぶように売れたという話は複数お聞きしました。

コロナ禍は関係ないのかもしれませんが、新築のアパート建設も多かった印象です。投資家の方が、「 土地から新築スキーム 」を取り組むことも増えたのも影響していると思います。

さて、住宅・アパート問わず、新築計画が多いせいか、弊所への相談では「 新築に伴う近隣トラブル 」の相談が多数寄せられました。①境界、②眺望、③通行権、④これらに関連したクレーム等々です。

特に、新築計画を進めたい施主側と近隣土地所有者との紛争という構図が多かったです。境界や通行権については他のコラムでも触れているので参考にしていただければ幸いです。

とはいえ、この手の近隣トラブルは法的手段で解決しづらいので本当に厄介です。絶対的な解決策はないのですが、まずは施主側としては

  • 自分が建築を進めたい以上、交渉上弱みを握られているという発想で、冷静に接したほうが良いといえます。

近隣のクレームを入れる側は、時期的にトラブル解決に時間をかけられますが、施主側は、トラブル解決に時間を割くこと自体ができないケースも多いからです。その上で、

  • 法的にできることできないこと、またその手続にかかる時間とコストを把握して交渉にのぞむほうが良いでしょう。

トラブルは最終的に裁判所で解決せざるを得ないですし、その解決自体が費用的に時間的にできるのか否かという点を考えて、行動していくべきでしょう。

例えば、通行承諾料に10万円を払うのに腹を立てて交渉が決裂した場合に、100万円かけて裁判することになったら元も子もありません。少なくとも、この2段階を踏まえて交渉していけば、何とか落としどころが見つけられることが多いのではないでしょうか。本当に近隣トラブルは厄介です。

2. 契約不適合のトラブル

あくまで私の経験の範疇にはなりますが、「 瑕疵担保責任 」から「 契約不適合責任 」へと変化したことになり、一層、「 契約不適合責任免責 」特約による契約が増加した印象です。

もともと瑕疵担保免責での取引は多くありました。それが、契約不適合責任へと移行したことで、「 契約不適合 」ってよく分からないから、そもそも「 免責 」しておこうという発想なのか、中古物件ですと、売主業者でない限り、ほとんどが「 契約不適合免責の特約 」になった印象です。

売主が宅建業社の場合は、単純に宅建業法の規制によって免責特約をつけられないだけです。実務の印象としては、「 よく分からない 」から、免責しておこう、というのはあながち間違っていないのではないかと思います。

免責特約が増えることで増えたトラブルが、土地や建物の瑕疵( 契約不適合 )を、売主が知っていたのではないかという問題です。

契約不適合責任免責特約があったとしても、下記条文のように、知りながら告げなかった瑕疵( 契約不適合 )については、免責特約の効力が及ばないとされています。

そのために、契約不適合責任免責特約があったとしても、建物・土地に不具合が発見された場合、「 売主は知っていたはずだ!」というトラブルが増加しているのです。

( 担保責任を負わない旨の特約 ) 第572条
売主は、( 契約不適合免責 )の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

更に、売主が「 知っていたはずだ!」と追及されると、今度は、売主が仲介に対して、「 仲介には伝えたのに、仲介が買主に伝えなかっただけだ!」などと、混迷を極める状況になっていきます。

この点を整理する書類は、「 物件状況報告書 」や「 重要事項説明書 」などです。
「 物件状況報告書 」については設備の故障の有無や、故障している/いない、確認/未確認など、契約の前提となっている状況が記載されています。

「 重要事項説明書 」では、接道状況や建築条件等主に建築に関係するものが記されています。

細かくは説明しきれないですが、このように、契約不適合責任免責特約があったからトラブルなく進むわけではなく、売主が知っていたかどうか、仲介が説明したかどうかでのトラブルが生じています。

契約書は当然として、「 物件状況報告書 」や「 重要事項説明書 」等の書類の確認検討が非常に重要になってきている傾向があるといえるでしょう。

■ まとめ

今回は、年末特集売買編ということで、私の感じた2021年の不動産事業まわりで見られた傾向と、そのトラブル時に注意すべきポイントをご説明させていただきました。

現在( 2021年11月末 )の状況ですと、来年にはコロナも落ち着くと良いなと希望も持てる状況かと思います。本当に今までどおりの社会に戻って欲しいですね。

大家さん側としては、事前の情報収集と、いざとなったら早期に専門家に相談するということを肝に銘じて、リスクを抑えるアパート経営に励みましょう!

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

山村暢彦さん

山村暢彦さんやまむらのぶひこ

弁護士
不動産投資家

不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • 祖父母の代からの大家の家系に生まれる。
    古い借家で家賃滞納などのトラブルを経験し「不動産・相続」の悩みを解決したいという思いから弁護士を志す。
    自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。

    多数の不動産会社の顧問弁護士を務めており、また、そのネットワークから建築・リフォーム会社、運送会社等の顧問先企業の数も増加している。
    昨今、「働き方改革」の反面、労働トラブルが増える中で、企業側の労働者問題の対応が増加しており、企業研修などでは「副業」について話す機会も増えている。

    趣味はウイスキー、読書、靴磨き。
    大勢でお酒を飲むのも好きだが、一人の時間を作り、頭の整理をする時間も好き。
    好きな言葉は、「運と縁」。

    山村法律事務所
    神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2 ニュー本町ビル6階

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