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空き家・空き地の隣地の売買がスムーズに(?)「所有者不明土地管理制度」とはー実例からみる民法令和5年民法改正(3)その2

山村暢彦さん_画像 山村暢彦さん 第41話 著者のプロフィールを見る

2022/11/24 掲載

1、令和5年( 2023年 )4月の民法改正

今回ご説明する「 所有者不明土地管理制度 」は、従来の解決方法に+αとして加わるような形の制度です。前回の記事と併せてお読みいただけると幸いです。

参照:「所有者不明土地の利用の円滑化」で予想されるトラブルとは?実例からみる民法令和5年民法改正(2)

参照:所有者不明の空き家・空き地問題に対する従来の対応法。実例からみる民法令和5年民法改正(3)その1

令和5年改正のテーマとしては、「 所有者不明土地の利用の円滑化 」をあげていますから、不動産界隈に与える影響は大きいですね。私も令和5年改正の条文とにらめっこする日々がまだまだ続いております。

2、従来の方法の問題点

前回の記事で、「 空き地・空き家 」について裁判所を通して「 中立的な代理人 」を選任してもらい、その「 中立的な代理人 」との間で、

  • ① 境界確定測量の手続を行う
  • ② 通行・掘削承諾をもらう
  • ③ 土地の売買または時効取得の主張

を行って、問題を解決していくというお話をしました。

具体的には、本当に行方不明・所在不明な方が所有者の場合は「 不在者財産管理人 」を、相続した全員が放棄をしている状況の場合は「 相続財産管理人 」を、存在していた会社が解散している場合は「 清算人 」を、「 中立的な代理人 」として選任して対処します。

また、時効取得など裁判を前提にする手続きの中で、被告が不在の場合には、「 特別代理人 」を選任して対処することが可能になります。

所有者不明の空き家

まず、「 特別代理人 」制度から説明します。この「 特別代理人 」制度は、「 訴訟 」手続きの中でしか利用できません。

土地を時効取得したい( ※取得時効に基づく移転登記請求訴訟 )とか、清算した会社の抵当権を抹消したい( ※抵当権抹消登記請求訴訟 )など、訴訟を前提とする手続きの中での利用が想定されているもので、隣地の境界確定測量への立会や、土地を任意に購入したいといった場面で「 特別代理人 」制度を利用するのは難しいということです。

次に、「 清算人 」を念頭にその意義について説明します( 清算人に特に関わってくるため )。

本来、隣地の境界確定測量に同席して欲しいとか、土地を任意に購入したいといった場合、「 その問題となっている対象土地のみ 」を管理してくれる中立的な代理人がいればよいはずです。

しかし、清算人、不在者財産管理人、相続財産管理人というのは、原則として、その「 対象土地のみ 」だけの管理人として選任することが難しく、その「 立場 」の方の全体財産を管理する管理人としての選任を行うことになります。

つまり、不在者財産管理人であれば、その不在者の財産全て、相続財産管理人であれば、その被相続人の財産全て、清算人であれば、その清算された( 又は放置された )法人の財産全てを、管理する必要が生じるのです。

本来なら「 対象土地のみ 」の管理業務をやってほしいのに、これまでは、その他の( 申立人としては興味のない )財産全体に対して管理人を選任しなければならなかったわけです。

「 財産管理人の業務範囲が広くてもいいじゃない。それができないのは、何か申立人側に不都合があるの?」という声が聞こえてきそうですが、あります。

一つ目は、業務範囲が広いと、土地だけの情報が欲しくても、その前に財産全体額を把握してからでないと「 対象土地 」の処分に移れないので、結果が出るまでに時間がかかるということです。

二つ目は、コストの問題です。中立的な財産管理人の「 報酬 」は、申立人側が「 予納金 」として裁判所に支払う必要があり、この「 予納金 」額が、業務範囲が広ければ広いほど、高額になりやすいという傾向があります。

そのため、従来の制度では、「 対象土地のみ 」の権利を確定したくても、申立人側は、対象とする「 不在者 」「 人 」の財産額全体にかかる手続きと重いコストを支払う必要が生じていました。

※ 問題点を分かりやすくするために、理論上の従来の制度の問題点を指摘しましたが、現実的には、特に「 清算人 」制度において、この問題点は裁判所の「 運用 」レベルにて解決されています。例えば清算人については、「 スポット清算人 」という制度運用があり、会社財産全体ではなく、「 対象不動産のみ 」に業務範囲を絞った清算人選任が認められるに至っています

このように、これまでは制度上の問題から、やむをえず運用レベルで対処していたものが、今回、立法的に対処しようとメスがいれられたのが改正法の「 所有者不明土地管理制度 」です。

所有者不明の空き地

3、所有者不明土地管理制度

改正法の「 所有者不明土地管理制度 」について、従来の制度と新しくなった制度を比較すると、以下のようにまとめられます。

  • ① 新制度では「 対象土地ごと 」に「 中立的な代理人 」を選任できる
  • ② その申立人になれる資格である「 法律上の利害関係人 」の範囲も広くなる
  • ③ 理論上は申立時に必要となる「 予納金( ※中立的な代理人の報酬相当額 )」は低くなる傾向がある( 実際の運用がはじまらないと不透明な点もあり )
  • ④ 従来、不在者財産管理人、相続財産管理人、清算人等々、場面によって使える制度等が異なっていたが、これらが統一的に「 所有者不明土地管理制度 」に( 概ね )一本化できる可能性がある

この結果、認知度・周知度もあげやすくなるのではと思います。
かなりニッチな分野ですが、従来の制度をより実用化しやすくなる改正という意味で、私は非常に好意的に受け止めています。

さらに従来の制度の問題点として、概ねその「 中立的な代理人 」の判断に裁量が多く、申立人側からすると予測可能性が低い( 希望どおりにしてもらえるかわからない )という懸念がありました。

それが今回の改正では、裁判所の許可を取れば「 売買等 」も代理人を通じて行えるという条文ができました。そうすれば「 売買等の許可 」を取れる基準も明確になり、予測可能性が高まっていくのではという点も期待しています。

時間とお金を利用して「 問題あり土地 」を正常化できれば、不動産の流通の促進に加え、「 負動産 」を正常化できることにもなります。この制度はもっと周知されていくべきだと思います。

今回の令和5年改正は不動産業界への影響も大きいので、分量が多く、私も大変なのですが、一緒に勉強して、少しでも不動産トラブルを減らしていきましょう!!

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

山村暢彦さん

山村暢彦さんやまむらのぶひこ

弁護士
不動産投資家

不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • 祖父母の代からの大家の家系に生まれる。
    古い借家で家賃滞納などのトラブルを経験し「不動産・相続」の悩みを解決したいという思いから弁護士を志す。
    自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。

    多数の不動産会社の顧問弁護士を務めており、また、そのネットワークから建築・リフォーム会社、運送会社等の顧問先企業の数も増加している。
    昨今、「働き方改革」の反面、労働トラブルが増える中で、企業側の労働者問題の対応が増加しており、企業研修などでは「副業」について話す機会も増えている。

    趣味はウイスキー、読書、靴磨き。
    大勢でお酒を飲むのも好きだが、一人の時間を作り、頭の整理をする時間も好き。
    好きな言葉は、「運と縁」。

    山村法律事務所
    神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2 ニュー本町ビル6階

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