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退去トラブルで大家が勝てる場合とは?!

山村暢彦さん_画像 山村暢彦さん 第6話

2021/6/8 掲載

自ら大家としての経験も有する、不動産・相続トラブルに注力する弁護士の山村が、不動産トラブルを予防するために、実話を基にした解決事例をご紹介します。

1、「 出ていって欲しい! 」で大家が勝てる場合

今回は、アパート経営において頻繁に起こる退去トラブルについて、大家側が勝てる場合を解説します。

「 迷惑な入居者に、どんな場合に出て行ってもらえるのか? 追い出せるのか?! 大家側が勝てるのか? 」

気になるその答えですが、一言でいうと、「 賃料の不払いが3カ月分以上ある場合 」のみ、といっても過言ではありません。さすがに、「 のみ 」と言い切るのは、言いすぎではあるのですが、その証拠に弁護士費用を調べてみてください。

「 賃料不払い 」を理由にする建物明渡事件と、「 その他の理由 」による建物明渡事件とで弁護士費用が異なる事務所がほとんどだと思います。どちらが高いかといえば、「 その他の理由 」の方です。

それに比べて、「 賃料不払い 」の方はそれほど高価ではないはずです。それくらい、「 他の理由 」による立退は難しいのです。簡単には出ていってもらえないのです。裁判例相場も、大家業を営む上では、心構えとしても知っておくべきだと思います。

2、賃料不払だったら、出ていってもらえる?!

唯一、出ていってもらえるケースとして、「 賃料不払3カ月分 」という基準を示しました。しかし、この条件を満たせば必ず明渡の判決を出してもらえるわけではない、という残念な事実を説明せねばなりません。

まず、1カ月や2カ月の不払いがあった後、再度、賃料を支払ったという事案であれば、一時的な賃料不払いをもって、裁判所が明渡の判決を書いてくれることはまずありません。別記事にて解説させていただきました「 信頼関係破壊の法理 」という特殊法理によって賃借人有利な判断がなされるためです。

では、なぜ「 3カ月以上 」という基準を用いているかといいますと、3カ月以上の不払いがある方は、今後も支払いが難しいケースが多いですし、3カ月以上の滞納があってから弁護士に相談し、上立退交渉ないし訴訟をスタートすれば、その段階で、「 賃料不払半年以上 」に移行している可能性が高いからです。

そのため、大家業を営む方には、「 賃料不払3カ月 」というメルクマールは覚えて欲しいものの、その基準が絶対ではないということも説明せねばなりません。

裁判所では、「 ●カ月以上だから 」必ず「 ●● 」というような形式的な裁判はほどんどありません。たとえば、3カ月の不払いがあったとしても、事故にあい意識不明となり払えなかった。回復した後または気づいた親族が後に賃料を払った。こんな状況であれば、立退の判決はまずでないでしょう。

くどいですが、ケースバイケースというのが前提にありながらも、「 賃料不払3カ月 」が出ていってもらえる、一つのメルクマールになる、ということは覚えておいて損はないと思います。

3、実際上の初期対応

実際に、賃料不払が起きた場合には、必ず、大家ないし管理会社から、迅速に督促状を送るべきです。自主管理の場合に、「 何か事情があるのだろう 」なんて悠長に構えていてはいけません。優しさから督促しなければ、自分の首を絞めることになります。

とはいえ、最初から争うことを前提に内容証明郵便まで出さなくとも良いかもしれません。1カ月の不払いがあれば、まずは書面( できれば追跡できる配達記録付郵便やレターパック等 )で督促しましょう。

その上で、反応がなければ、次回は内容証明郵便で督促すべきだと思います。内容証明郵便というのは後に紛争になったときに、送った内容と送った配達記録を残しておく郵送方法になります( 配達記録は、つけるように郵便局に依頼しましょう )。

弁護士が係争に介入する場合、裁判になることを踏まえ、最初の通知は、内容証明郵便を送る場合が多いです。そして、2カ月目の不払いに発展すれば、赤信号です。

1カ月の不払いは、ルーズだった、たまたま金策が上手くいかなかったなど、イレギュラーによる不払いの可能性がありますが、二度目はそうではありません。

二度も賃料が払えないほどの問題を抱えているか、払う気がないほど、おかしな考えに至っているか、通常の状態ではないと考えられます。この段階に至ったら、弁護士等に相談の上、弁護士名で裁判を提起しますよ、という内容証明郵便を送付しても良いと思います。

一般的に弁護士費用は高額だと考えられがちですが、裁判を行うフィーに比べ、内容証明郵便を弁護士に作成、送付してもらうだけなら、3〜5万円程度のフィーが一般的だと思います。

さらに、それでも動かず、賃料不払3カ月に至った場合には、弁護士を介入させての退去交渉を検討しても良いでしょう。

4、弁護士に依頼した際のスケジュールと解決コスト

あくまでケースバイケースという前置きの上、賃料不払の退去明渡請求事件の概要を紹介させていただきます。想定は、一般的な住居賃貸です。事業テナントですと、執行費用や解決コスト等がより高額になるケースが増えます。

弁護士の交渉によって解決できるとすれば、約2〜3カ月程度の期間を要します。交渉での解決ですが、大抵の場合には、「 引っ越し費用を大家側で用意して引っ越しさせる 」という結末が多いと思います。

これからご説明するように、裁判等をやり切るよりは、盗人に追い銭であったとしても、立退料、引っ越し費用を払った方が「 安い 」からです。どうやっても話がまとまらない場合には、裁判を利用していく必要があります。

裁判上で、「 立退料、引っ越し費用を払う 」として和解するとしても、最短6カ月程度はかかる、という説明をしています。裁判は、訴状という裁判を開始してください、という書面を裁判所に出してから1カ月以上、初回の裁判まで時間がかかります。

そして、初回の裁判では、訴えられた側は「 争います 」と一言書いた書面を提出すれば欠席することもできてしまいます。また、出席しても、被告側は何も準備してきておらず、結局初回は実質的な内容に入ることもできないことが多いです。

そして、裁判は、だいたい1カ月に1度を目途に組まれて行きますから、2〜3回内容をやり取りするだけで、簡単に半年程度の期間を必要とします。そして、裁判で解決しない場合、判決を出してもらうのですが、それでは解決しきれません。

判決をもらっても単なる書類でしかなく、それでも退去に従わない入居者がいれば、大家側は、退去させるための強制執行手続を行う必要があります。その執行手続の費用も大家側が捻出する必要があります。ミニマムでも30万〜50万円程度は発生します。

かなりざっくりとした内容ですが、建物明渡事件の解決スケジュールとその費用感をご紹介させていただきました。このような事態に陥ると、弁護士費用、執行費用に加え、その解決までに要する期間、「 賃料収入が得られない 」というデメリットまで生じてきます。

1件退去トラブルを抱え、その解決費用を支出するだけでも、その部屋の賃料1〜2年分程度が軽く飛んで行ってしまいます。退去トラブルを弁護士、裁判所をいれて解決している時点で、大家業としてはかなりの不採算な状態に陥ってしまうのです。

このような状態にならないためには、入居審査を厳しくする、必ず保証会社をつける、不払いがあったら初動でとにかく動く、というできる限り早期の対応が必要です。
 
不動産賃貸業を営む上では、借り主有利に判断される傾向が非常に強いといえます。大家さん側としては、事前の情報収集と、いざとなったら早期に専門家に相談するということを肝に銘じて、リスクを抑えるアパート経営に励んでいただきたいと思います!

プロフィール

■ 山村暢彦さん

山村暢彦さん

弁護士
不動産投資家

事務所 ホームページ
https://fudousan-lawyer.jp/

フェイスブックページ
https://www.facebook.com/profile.php?id=100011023749150

不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。
不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。
不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。


■ 主な経歴

祖父母の代からの大家の家系に生まれる。
古い借家で家賃滞納などのトラブルを経験し、「不動産・相続」の悩みを解決したいという思いから弁護士を志す。
自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。

多数の不動産会社の顧問弁護士を務めており、また、そのネットワークから建築・リフォーム会社、運送会社等の顧問先企業の数も増加している。
昨今、「働き方改革」の反面、労働トラブルが増える中で、企業側の労働者問題の対応が増加しており、企業研修などでは「副業」について話す機会も増えている。

趣味はウイスキー、読書、靴磨き。
大勢でお酒を飲むのも好きだが、一人の時間を作り、頭の整理をする時間も好き。
好きな言葉は、「運と縁」。

山村法律事務所
神奈川県横浜市中区本町3丁目24−2 ニュー本町ビル5階C号室

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