■ 周辺のライバル物件に合わせると家賃が下がってしまう…
写真は私が所有する一棟RCマンションです。建物の造りや管理の状態は良いものの、立地や内装や設備は取り立てて目を引くものはありません。そのため、入居者さんから見て特別に強みになる部分が少なく、ライバル物件の中に埋もれやすい印象でした。

築20年のタイル張りの外観
そんな中、初めての空室発生。不動産ポータルサイトで「 エリア・築年数・間取り・鉄筋 」など、ライバルとなりうる物件の家賃を調査し、次の値付けの参考にすることにしました。( 出て来た家賃を部屋の平米数(u)で割ると、その部屋の家賃の平米単価が分かります )。
このエリアは大手のアパートメーカーさんが地主さん向けに建てたマンションが乱立しており、平米単価は1,000円( 管理費込み )を切るくらいでした。私の物件の最も近くのライバル物件の平米単価は850円/uと、相場より安めでした。
それを知った私は、「 今回はお金をかけて部屋のバリューアップをするよりも、内装は原状回復程度にして、手頃な家賃にすることで埋めよう 」と決めました。
家賃はライバル物件に合わせる形にし、平米単価850円( 管理費込み )に。結果的に65,000円だった家賃は57,000円になりました。その後、募集をして3か月後に入居者は決まりましたが、今後に不安の残る入居付けでした。
■ 攻めのリフォームで家賃をアップ
その頃、DX@母ちゃんさんのリフォーム( リノベーション )の考え方、物件に付加価値を付ける大切さを学ぶ機会がありました。その中で印象的だったのが「 リフォームで家賃を上げられるのはもちろん良いが、家賃を現状維持するだけでも価値がある 」という言葉でした。
実際に家賃の低下を経験したばかりだったので、強く心に残りました。このやり方だと、周囲の家賃が下がれば、一緒にズルズルと安くなっていく可能性もあります。1億円の借金をして買った物件です。そんな状況が良いはずはありませんでした。
そこからは考え方を変えました。その前の入居付けは、近隣の家賃を調べるなどして考えたふりをしましたが、実際には何もしていないのと同じです。
もちろんコストのバランスはとりますが、家賃の値下げを阻むために、できることをやろうと決めました。具体的に何をしたかというと、壁紙を貼り換える際に、もとの白い壁紙ではなく、デザイン性を取り入れました。ライバル物件では誰もやっていない手法です。
すると、ネットでの閲覧数が通常の3倍となり( 管理会社さん調べ )、問い合わせ件数も増えました。その結果、早いと一週間以内、平均でも2〜3週間以内に申し込みが入るようになりました。目立たない物件が、オンリーワンの物件になれたのです。

天井木目は意外と合わせやすい事が分かりました
この物件の一か月の家賃は89.6万円でしたが、退去のあった3部屋をリフォームした結果、91.4万円に上がりました。このアップした1.8万円の家賃は、付加価値の部分だと思います。これらの部屋の、平米単価は1,100円になりました。
かかったリフォーム費用は3部屋で96万円です。その他に家賃を上げられた要因としては、エアコンを全世帯に取り付けた事も大きいと思います。札幌の築20年前後の物件は、まだまだエアコン無しの物件が多いのです。
この物件のライバル物件には、エアコンはほぼ付いていませんでした。ガス会社さんに相談したところ、一部オーナー負担の約50万円程度で取り付けをお願いできました。
家賃を利回りに換算すると、10.0%が10.25%に上がった事になります。何もしなければ下がり続けていくところを、現状維持どころかプラスに出来た事はとても大きいと感じます。今後も空室の度にバリューアップをすることで、さらに収益を上げられそうです。
3部屋で1.8万円というと小さく見えますが、売却時には大きな違いになります( 売却するかは別として考えておくことは大切です )。築20年程度のRC物件が仮に8%で売れたとすると、1億3,440万円が1億3,710万円になります。270万円もの違いです。
こうして目の前のリフォーム費用の事だけでなく、先々を見ることで行動が変わってきます。
■ 空室が減ると大家業の不安やストレスが減る
不動産投資マーケットは、高値安定の状態が続いています。新規の物件を買うことが難しくても、既存物件の収益を上げる事は出来るかもしれません。今購入を検討している物件も、購入後に利回りを上げられるかもしれません。
人はなるべく楽をして利益を得たいと考えるものだと思います。買う物件の選定と融資付けが済んだら物件には滅多にいかないという大家さんもいます。
だからこそ、購入後もオーナーが知恵と手間を加えた物件はライバルが減り、ひずみが生まれる可能性があると思います。
( ただし、購入後のリフォーム費用や家賃アップは、最終的にはやってみなければ分からないので、あくまでも購入する時には厳しく見積り、それでも収支が合う物件を選ぶ必要があります )。
収益アップは攻めでもあり守りでもあります。他の物件でも同じように退去後にデザインリフォームをしたことで家賃がアップしました。今はもう、空室が出ても、あまり不安を感じないようになりました。「 すぐに決まる 」と思えるようになったからです。
空室が大家業の一番のストレスだと思っています。長い賃貸経営をする上で、このストレスが減らせ事は、精神的にもとても良かったと感じています。
と、ここまでいいことばかり書きましたが、同じことをしてもすぐには申し込みが入らなかった物件もあります。一番大きな違いは、空室が短い物件は部屋の広さが60u〜70uあったのですが、長く空いた物件は30u弱の単身物件だったことです。
こちらも同様の内装を実施しましたが、入居付けまでに5か月を要しました。ライバルが多いエリアだったということも関係していると思います。
あともう一つ、この物件にはエアコンがありませんでした。内装リフォームだけでどこまで戦えるか試してみたかったのですが、このエリアでこの広さでは、内装だけでライバル物件には勝てない事が分かりました。
その後、ダメもとで現在お世話になっているガス会社さんに、エアコンの全室分の貸与契約の相談をしてみると、予想に反して、承認していただけました。とてもありがたかったです。

そして、申し込みには5か月を要しましたが、家賃は42,000円( 管理費込み )から46,000円に上がっています。平米単価は1,460円(管理費込み)から1,600円にアップしました。
その後、空室になった部屋は最初からエアコン付きで募集をかけたのですが、ひと月で入居が決まりました。エアコンの力を感じます。お金をかける部分の優先順位を確認できた事例となりました。
■ 不動産投資は買ってからがスタート!
私は今では物件検討の際には表面利回りだけでなく、購入後にいかに利回りを上げられるか、そんな目線で選定をするようにしています。「 このエリアのこの間取りなら、この設備をつければ家賃が上がりそうだ 」といったことも混みで検討するのです。
初心者の方は特に、買うことを目的にしてしまいがちですが、不動産投資は、「 買ってから 」がスタートです。通常、物件は新しいほど家賃が高く、古くなるにつれて下がっていくというのがセオリーです。
しかし、オーナーが「 収益力を維持するための工夫 」を心がけ、実践することで、購入時よりも利益を上げ、売却するときにはさらに大きなリターンになってくる可能性が膨らみます。
今回は、私の物件で家賃を上げた話を紹介しました。すごく地味な話に見えるかもしれませんが、大家業とはこうした小さな行動を積み重ねていくものだと思っています。今、できることをやっていきましょう!
■ スクール4期の募集開始のお知らせ
最後に告知があります。健美家パートナースクールのオンライン不動産経営講座「 やっさんスクール第4期 」の募集を開始しました。ご興味がある方は以下のリンクからご確認ください。
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