今回は、地震や災害時の税金関係をまとめてみました。
1.災害義援金
現在、様々なところで義援金活動が行われています。被災された市町村に直接の寄附であれば、「 ふるさと納税 」の対象になりますが、市町村ではなく、任意の募金団体に対する寄附でも「 ふるさと納税 」の対象になる場合があります。
「 募金団体に対する義援金等が最終的に被災地方団体等に拠出されることが募金要綱、募金趣意書で明らかにされているものであること。 」
つまり、最終的に「 被災地 」に寄附されるのであれば、窓口が、どの募金団体でもよいということです。
この場合、寄附の領収書でなくても、「 募集要項の写し、振り込み依頼書の控え 」をもって、控除証明とする取り扱いになっています。なお、募金団体を通じたふるさと納税をする場合には、ワンストップ特例は適用できず、確定申告が必要になります。
詳しくは、総務省のホームページをご覧ください。
⇒http://www.soumu.go.jp/main_content/000415141.pdf
2.受け取った保険金の税金
地震保険で120万円保険金を受け取りました。修繕のための工事費用が100万円かかりました。差額の20万円は利益として計上するのでしょうか?
火災保険や地震保険で、このような質問をよく受けます。所得税法では、次の通り規定されています。
「 損害保険契約に基づき支払いを受ける保険金で、突発的な事故により加えられた資産の損害に基因して取得するものについては、所得税は課税されません 」
つまり、受け取った保険金は非課税になりますので、収入に計上する必要はありません。ただし、保険金でまかなった分の修繕費の100万円については、経費とはなりません。
修繕費として経費にできる分は、受け取った保険金を上回る部分だけになります。修繕費で150万円かかったような場合、「 150万円−100万円=50万円 」が経費になります。
なお、法人の場合には、受け取った保険金は非課税とならず、全額収入に計上することになります。かかった修繕費は全額経費に計上していきます。
3.地震による損害 地震により賃貸物件に損害が生じた場合には、税金上どのような扱いになるのでしょうか?
賃貸が事業的規模( おおむね5棟10室以上 )か事業的規模に満たない場合かで、取り扱いが異なります。
1)事業的規模の場合
取りこわし、除却、滅失( これらの資産の損壊による価値の減少を含む。 )その他の事由により生じた損失の金額は、その年分の不動産所得等の金額の計算上、必要経費に算入されます。
ただし、上記2で説明した通り、保険金、損害賠償金等により補てんされる部分の金額は、必要経費から除かれます。
このとき、損失額が大きくて不動産所得が赤字になる場合には、損益通算( 他の所得との相殺 )の対象になります。また、損益通算しきれない損失は、青色申告をしていれば、3年間の繰り越しもできます。
2)事業的規模に満たない場合
次のいずれかの選択ができます。それぞれの適用要件、特徴が異なりますので、有利不利で選択していきます。
@不動産所得の経費
事業的規模と同じように、損失金額を必要経費に計上することができます。ただし、計上できる損失金額は、不動産所得の金額を限度になります。
つまり、不動産所得の黒字から損失金額は控除できますが、赤字の場合には控除できないということです。損失金額を損益通算の対象にならないことにする趣旨です。
A雑損控除
雑損控除とは、災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合に適用できる所得控除(総所得金額から控除できるもの)です。対象となる金額は、次の二つのうちいずれか多い方の金額です。
(T)損失額 − 総所得金額 × 10%
(U)損失額のうち災害関連支出の金額 − 5万円
災害関連支出の金額とは、災害により滅失した住宅、家財などを取壊し又は除去するために支出した金額などです。雑損控除の特徴は、本人が被害にあった場合だけでなく、同一生計親族が被害にあった場合にも適用になることです。
また、損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後( 3年間が限度 )に繰り越すことができます。( 医療費控除や社会保険料控除などの所得控除は、繰り越しは認められてません )
3)自宅や家財の損害
ご自宅に被害があった場合には、次のいずれかの適用を受けることができます。
@雑損控除
(2)の@参照
A災害減免法による減免
災害によって受けた住宅や家財の損害金額がその時価の2分の1以上で、かつ、災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下のときにおいて、災害減免法によりその年の所得税が次のように軽減されるか又は免除されます。
所得500万円以下・・・全額免除
所得500万円超750万円以下・・・1/2軽減
所得50万円超1,000万円以下・・・1/4軽減
今後、震災による税制の特例が創設されると予想されます。適用することで、今回紹介した税制よりも優遇されるものもあります。国税庁のホームページなどをご参考にしてください。
◯お知らせ
4月に行った拙書「 ライフサイクルから考える賃貸経営税務Q&A 」をテーマにしたセミナーの反響が大きかったため、5月21日( 土 )に大宮で開催することになりました。ライフサイクルから見た法人化のタイミングについてもお話しする予定です。よろしければご参加ください。
⇒https://www.kenbiya.com/seminar/t=G/15308wml/
