今年も残りわずかになってきました。個人の確定申告は1月〜12月の収支を計算するので、節税のチャンスはこの1カ月しかありません。
節税と考えると、「 経費を使わないと損をする 」と思い込んでいる方がいらっしゃいますが、無駄な経費を使うと、お金がなくなります。
( 参照:大家の誤解「 経費を使う=節税 」と信じて手残りを減らす人たち )
では、ふるさと納税は節税になるかというと、2,000円を超えて支払った寄付金( 上限あり )が所得税・住民税から控除されるだけであり、税金の支払い先を変えているだけともいえます。
ふるさと納税をしても、支出金額は変わらないのです( 税金で払うか、寄付金で払うかの違いです )。
ただし、ふるさと納税は、寄付先から返戻品をもらえるということで、注目を浴びています。最近では、テレビCMでも見かけるようになりました。そこで、今回はふるさと納税をする場合の注意点について、解説します。
1.ふるさと納税は今年の所得から上限額が決まる
ふるさと納税をした金額のうち、2,000円を超える分の全額を控除の対象にするには、一定の計算式で算出された上限以内に寄付金を抑えなければなりません。
計算式は、ふるさと納税紹介サイトなどでも掲載されていますし、具体的な金額を算出できます。( ざっくりと計算するのであれば、課税所得金額の2%です。実際の計算式に当てはめると、それ以上の上限額になります )。
ここで注意したいのは、あくまでも今年の所得に応じて上限額が決まるということです。つまり、今年の所得がどれくらいかがわからないと、上限額がわかりません。
今年、修繕費などの経費が多ければ、ふるさと納税の金額を抑えなければならないこともあります。まずは、今年の所得がいくらになるのか、試算してみましょう。
2.ふるさと納税で不動産投資が会社にわかってしまう場合
サラリーマン大家さんで、ふるさと納税をした場合に気をつけなければならないことがあります。
サラリーマンの場合、勤め先の会社から支給される給与から住民税が天引きされます。これを「 特別徴収 」といいます。
この住民税は、全体の所得に対して課税されるため、給与以外に不動産所得があれば、その金額も合算されて住民税が徴収されるのです。つまり、徴収される住民税の金額から、不動産所得があることが会社にわかってしまうこともあります。
方法としては、会社に不動産所得があることが知られないためには、不動産所得にかかる住民税を特別徴収ではなく、自分で納付する「 普通徴収 」にすることができます。
( 確定申告書の第2表で、給与所得以外の住民税の選択を「 普通徴収 」にチェックすることで、普通徴収にすることが可能です )。
この場合、確定申告で「 ふるさと納税 」の申告( 寄付金控除 )をすると、普通徴収の住民税から、ふるさと納税分の控除がされます。
普通徴収の住民税の金額よりも、ふるさと納税による控除分が多い場合には、引ききれなかった分は、給与所得に係る特別徴収から控除されることになっています。
( 市町村によって、取り扱いが異なる場合がありますので、気になる方は必ずお住まいの市町村にご確認ください )。
特別徴収から控除される場合、普通徴収の不動産所得の金額についても、市町村から会社へ通知される場合があります。
3.ふるさと納税で得する場合
ふるさと納税は、節税ではないと言いましたが、ふるさと納税をすることで、返戻品以外に得になる場合があります。
高等学校等就学支援金制度というものがあります。平成22年から高校の無償化が始まりましたが、当初は所得要件がなく、誰でも適用できました。
しかし、平成26年4月入学から所得制限を設け、名称も高等学校等就学支援金制度というものになり、月約1万円( 定時制、通信制の学校などは金額が異なります )の支援金を受け取れることになっています。
この所得制限というものが、市町村民税の所得割額で計算されます。親権者の市町村民税所得割額の合算で判断し30万4,200円以上( 年収910万円程度 )の世帯では支給されないことになります。
夫婦が親権者であれば、2人の合算金額で判定します。この判定は毎年行うことになっています。ふるさと納税をすることで住民税を下げることができるため、判定条件を満たすことが可能になります。
ただし、支援金は年間約12万円ですので、そのために多額のふるさと納税をするというのもいかがなものかなと思います。判定金額を少しだけ上回ってしまうような場合には、ふるさと納税を検討してみるのがよいかもしれません。
このように、自治体の補助金などには、住民税額の金額を判定基準にしているものがありますので、補助金の要件を詳細に調べてみると、意外なところに、ふるさと納税が使える場合があります。
年末までの対策をするためにも、きちんと今年の所得の予測は立てておきましょう。