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「虚偽の決算書」でオーバーローンを引こうとする投資家のリスクと責任

渡邊浩滋さん_画像 第29話

物件を購入する際、自己資金がないからといって、なんとしてもオーバーローンで借りたいという投資家さんが増えてきました。

融資をしてもらう銀行が積極的にオーバーローンで貸してくれるのであれば問題ないのですが、それが叶わず、銀行に虚偽の数字を提出し、オーバーローンを引く投資家さんもいるようです。

■ ウソの決算書でオーバーローンを引くことのリスク

私も、そのために「 銀行に提出する用の決算書を作成してくれないか? 」という相談を持ちかけられることがあります。私は、税理士としてキッパリと「 NO 」と答えます。

そのときに思うのが、「 銀行から融資を受ける立場としての責任をわかって欲しい 」ということです。軽く考えている方が多いようですが、虚偽のデータで融資を引くことは大きなリスクが伴うのです。

大前提として、銀行は税務署に提出した申告書と決算書を見比べて、決算書の数字が申告した数字と合っているかを確認します。そのため、虚偽の決算書であることは通常はすぐにバレます。

仮に、そこでバレなくても、翌年以後の決算書を作るときに、どこかで辻褄が合わなくなります。それだけではありません。

「 粉飾決算に一度手を染めると、もう二度と戻れなくなる 」のです。このことは、不動産投資を行う上で、非常に大きな問題です。次に、私が過去に体験したことをお話します。

■ 粉飾決済をして自宅を差し押さえられた会社社長

私は大学を卒業後、一般の企業( 商社 )に勤めていました。司法書士の資格を活かし、法務部に配属されました。法務部といっても、やっていることは債権回収です。

取引先が破綻したときに、担保がない中で、いかに債権を回収するかが使命でした。( 担保はすべて金融機関に抑えられています )。

ある取引先が破産宣告をした際に、破産の申立書の記述から、粉飾決算をしていたことが発覚したことがあります。

その会社には、すでに財産がなかったため、何とか回収できる財産はないものか、頭を悩ませていました。色々と資料を漁っている中で、社長個人の自宅が何の担保もないまま残っていることがわかりました。

個人保証を取っていれば、簡単に自宅を差し押さえられたのですが、個人保証を取れる関係でもなかったので、どうやって個人の資産から取り立てるかが課題となりました。

そのときに使ったのが、「 取締役責任 」です。当時は商法でしたが、現在は、会社法429条に規定されています。


( 役員等の第三者に対する損害賠償責任 )
第429条  役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2  次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一  取締役及び執行役 次に掲げる行為
イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
( 以下、省略 )



決算書に虚偽の記載をすると、取締役としての損害賠償責任を負うということが明記してあります。

これは代表者だけではありません。代表者ではない取締役でも、虚偽の記載について注意を怠らなかったことを証明しない限りは、責任を免れないことになります。

投資家さんが会社を立ち上げられる際に、奥様などの家族を役員に入れられることがあります。

代表者は通常、金融機関に連帯保証人として保証しているため、個人資産に対しても責任を負うことになりますが、虚偽の決算書を作成することによって、関係のない家族の資産についても責任が及ぶ可能性があるのです。

このときは「 取締役責任 」を追求し、社長の自宅を差し押さえて裁判にまでなりましたが、結果的に和解となり、和解金をいくらか回収することで収まりました。

和解までの間に、関与した役員や顧問税理士も巻き込んで、損害賠償を追わせることまで検討していました。

債権回収は、血も涙もない世界です。取れるところから容赦なく取り立てます。( あくまでも私が債権者としての立場で経験したことです…。)

■ 目先の融資のためにそれ以上に大切なことを失う羽目に

その会社も最初は、多少見栄え良く決算書を粉飾した程度だったのかもしれません。しかし、一度粉飾をすると、その粉飾がバレないように、ウソにウソを塗り固めるしかなくなります。

そして、後戻りができなくなってしまうのです。これが、私が最初に言った「 粉飾決算に一度手を染めると、もう二度と戻れなくなる 」という意味です。

この社長は、破産宣告という苦しい選択を選ばざるをえなかったところに、粉飾決済に手を染めていたために、自宅まで取られそうになる苦しみを味わうことになりました。

目先の融資のためにつく嘘が、それ以上に大切なものを失う第一歩になりかねないのです。私は、真っ当な経営、健全な経営こそが、長続きする秘訣であると信じています。


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健美家不動産投資コラム

プロフィール

■ 渡邊浩滋(わたなべこうじ)さん

渡辺税理士

税理士・司法書士・大家
渡邊浩滋総合事務所代表

サイト「大家さんの知恵袋」

■ 経歴

大学在学中に司法書士試験に合格

大学卒業後総合商社に入社。法務部にて契約管理、担保管理、債権回収などを担当

商社を退職後、税理士試験に合格
その頃、実家のアパート経営(5棟、全86室)が危機的状況であることが発覚。 経営を立て直すために自ら経営を引き継ぎ、危機的状況から脱出する

資産税専門の税理士法人に勤務した後、2011年12月、独立開業

税理士の視点と大家の視点からアパート経営を支援するために活動し、税理士・司法書士のワンストップサービスを提供している

2011年、「行動する大家さんの会」を設立

2013年、「一般社団法人 大家さんの道しるべ」代表理事就任

資格専門学校の講師、賃貸住宅フェアでの講演、セミナー講師等、幅広い分野で活躍中

2017年からは日本全国の大家さんを救うべく、フランチャイズ展開を開始。
同じ志を持つ税理士を求めている。

■ 主な著書


大家さん税理士による 大家さんのための節税の教科書(ぱる出版)


大家さんのための超簡単!青色申告(クリエイティブ ワークステーション)


「税理士」不要時代(経営者新書)

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