「 確定申告で間違えてしまった! 」
何年も確定申告をしているとこんな経験をすることもあるでしょう。少なく申告してしまったのであれば、修正するしかありません。多く申告してしまった場合は、どうでしょう。
仕方ないと諦めることもできますが、「 更正の請求 」をすることで、多く払いすぎた税金を還付することが可能です。しかし、この「 更正の請求 」によって必ずしも還付されないものもあります。
1.更正の請求とは
確定申告期限後に申告書に書いた税額に誤りがあったことを発見した場合など、申告した税額が実際より多かったときに正しい額に訂正することを求める場合の手続をいいます。
この提出期限は、法定申告期限から5年以内になります。5年以内であれば、訂正して還付を受けられるということです。しかし、更正の請求ができるのは、次の2つの場合に限定されていますので注意が必要です。
①国税に関する法律の規定に従っていなかったこと
②計算誤りがあったこと
2.更正の請求ができる場合
減価償却で、定額法で計算するものを、誤って0.9を掛けてしまった。不動産を購入するために借り入れた借入金の利息を計上するのを忘れてしまった。これらは明らかな計算誤りなので、更正の請求をすることで、払いすぎた税金を還付することができます。
3.更正の請求ができない場合
自宅を売却した場合に、売却益から3,000万円を控除してくれる特例があります。新たに自宅をローンで組んで購入した場合には、年末のローン残高の1%を10年間( 居住年により異なる場合があります )税額控除する住宅ローン控除の特例があります。
この3,000万円控除と住宅ローン控除は選択適用になっています。例えば、3月に自宅を売却( 売却益1,000万円。長期譲渡 )して、11月に新しい自宅をローン( 借入額3,500万円 )で購入した場合を見てみます。
3,000万円控除を適用した場合には、1,000万円×20.315%=約203万円税金が安くなります。
住宅ローン控除を適用した場合には、3,500万円×1%=35万円、35万円×10年間=350万円( 実際には、ローン残高は減少するのでこの金額よりも少ない金額が控除額になる )となります。
10年で比較した場合、住宅ローン控除を適用した方が得になります。これを誤って、3,000万円控除を適用した申告をして、住宅ローン控除の申告はしなかった場合、更正の請求ができるかというと、できないのです。
3,000万円特別控除を選択するか、住宅ローン控除を選択するかは、納税者の判断に委ねられているためです。
どういうことかというと、住宅ローン控除の申告をしなかったことは、法律の規定に従っていなかったとはいえません。また、3,000万円特別控除を適用して計算したことは、計算誤りでもないからです。
4.大家さんが気をつけたい更正の請求ができない項目
このように誤った確定申告をしたとしても、更正の請求ができないものがあります。これらは大きく2つのカテゴリーに分けることができます。「 確定申告の要件があるもの 」「 選択適用が可能なもの 」の2つです。
《 確定申告の要件があるもの 》
(1)65万円の青色申告特別控除
事業的規模ある不動産所得者で、複式簿記などで青色申告することで所得から65万円の控除が受けられます。この要件が、「 貸借対照表及び損益計算書を付けて、法定申告期限内に提出すること 」です。確定申告に記載しないと適用が受けられないものになります。
(2)少額減価償却資産の特例、一括償却資産の特例
青色申告者で30万円未満の減価償却資産を購入した場合には、その年に全額経費計上することができます( 年間300万円まで )。
この要件に、「 確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書の添付( または、青色決算書に一定の記載をすること )がある場合に限り適用する 」とあります。
また、取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、取得価額の3分の1の金額を3年間で1/3ずつ経費計上することができます。
この要件に、「 確定申告書に一括償却対象額を記載した書類を添付し、かつ、その計算に関する書類を保存している場合に限り、適用する 」とあります。
どちらも確定申告書にこれらの適用を受ける旨を記載しないと、適用がないことになります。
《 選択適用が可能なもの 》
(3)中古の耐用年数
中古の固定資産を取得した場合には、その資産の法定耐用年数によらずに、購入した中古資産の取得の時以後の使用可能期間の年数を耐用年数とすることができます。
原則は、今後の使用可能期間を見積もって計算することになりますが、それが困難なときは、次の算式で計算した簡便法による年数によることもできます。
「 中古の耐用年数=法定耐用年数-( 経過年数×0.8 ) 」
(注1)計算結果が1年未満の端数が出た場合には、1年未満切り捨て
(注2)経過年数が法定耐用年数を超えている場合には、次の算式になります。
法定耐用年数×0.2=耐用年数(1年未満切捨)
税法には、中古の耐用年数とすることが『 できる 』と記載してあります。つまり、中古の耐用年数を使用するかしないかは、納税者の任意であり、後から更正の請求ができないものになります。
このように確定申告の時点で適用しないと訂正ができないものがあります。「 後から直せるからいいや 」とならないものになりますので、気をつけてください。