3月に入り、確定申告もラストスパートと思いきや、新型コロナウィルスの影響で確定申告期限が4月16日になったとニュースが入ってきました。
所得税だけでなく、消費税や贈与税も期限が延長。振替納税の口座振替日も延長されるようです。
税務署に足を運んで申告される方にとっては、影響があるのでしょうが、電子申告でパソコンから申告する我々会計事務所には、大きな影響なし。予定通り、3月16日までに仕上げていきます。
この時期、うちの事務所で作成した確定申告を、私が最終チェックしています。今回は、私が経費をどのようにチェックしているかをお伝えしていきます。
1.経費になるかならないかの判断基準
「 どこまで経費にしたらよいのでしょうか? 」という質問をよく受けます。大家さんの場合、物件の固定資産税、火災( 地震 )保険料、借入金の利息、修繕費、管理費、水道光熱費などは、頭にすぐ浮かぶと思います。
「 これは落とせるとか、これは落とせないとかを具体的に教えて欲しい 」と言われます。これは難しい質問です。
なぜなら、例えば、冷蔵庫を買った領収書があった場合。自宅で使う冷蔵庫であれば、経費になりません。しかし、賃貸物件に置いて、家具付きのお部屋として貸し出すのであれば、経費になるのです。
経費になる、ならないとは一概に言えないのです。ですので、その判断基準だけをお伝えしています。それは、「 賃貸経営をしているが故にかかるものかどうか 」です。
過去の裁判事例で、サラリーマン投資家さんが、不動産所得に、不動産ファイナンス情報を提供する協会の会費を必要経費に計上していたものが、否認されました。
その理由が、「 証券会社の社員であったことに鑑みれば、不動産貸付業に関する記事が会報に掲載されることがあり得るからといって、その会費が不動産貸付業に係る必要経費に当たるということはできない 」ということ。
証券会社の社員時代から、その必要性に応じて、協会の会費を払っていたのであって、「 賃貸経営をしているが故にかかるものではない 」という判断なのかと思います。
ですから、例えば、賃貸経営を始める前からとっていた新聞代を、賃貸物件を購入したことをきっかけに、不動産所得の経費に入れると否認される可能性があるということです。
一方、賃貸経営を開始してから購読するようになった業界新聞などは経費として認められることになります。
2.税務調査では経費はどのように調査されるか?
税務調査は限られた日数( 個人の場合は、通常1日 )で調査されます。一枚一枚、領収書と帳簿を付け合わせていくこと、到底1日では終わらないので、帳簿で気になる点だけを領収書と付け合わせていくことが多いです。
といっても、税務署は、賃貸経営に経費を認めたがらない傾向にあります。「 大家さんには交際費は一切認められていないのですよ 」と言われたこともあります。( もちろん反論して、認めさせましたが )
過去の経験から、「 交際費 」という項目を例にとると、調査官によって次のポイントで分かれる傾向にあります。
「 交際費の全額を疑って否認してくるか 」
「 交際費のうち目につく経費を疑って否認してくるか 」
3.経費計上のチェックポイント
私が確定申告時にチェックする経費のポイントは3つあります。
①多額なもの
例えば、帳簿に「 旅行代30万円 」と記載があると一発でわかります。目につくのです。家族旅行ではないかと疑われる可能性が高いです。
②頻度が多いもの
交際費の中でもほぼ毎日のように居酒屋に行った領収書が計上されていると、単なる外食しているだけでは、と疑われてしまいます。
③感情的になりやすいもの
税務署の職員も人間です。スーツやブランドもののバックなどを経費に入れていると、「 さすがにこれは私物だろう 」と思うものです。感情的に判断されやすくなります。
4.税務調査で否認されにくい経費計上の方法
上記のチェックポイントに当てはめて、問題がありそうな経費は、次のような対処法を提案します。
①怪しいものを除く
明らかに賃貸とは関係ないもの。説明できないものは、除いた方がよいでしょう。
②説明できる準備をしておく
怪しまれても、説明ができて、正当な経費であれば、問題ありません。何のために、なぜ必要なのか、客観的な資料とともに用意しておく必要があります。
例えば、物件の視察のための旅費であれば、物件のチラシ、紹介してもらった不動産会社の名刺、実際に内見した写真、購入しなかった場合には、なぜ購入しなかったかのレポートなどを準備するとよいでしょう。
③家事使用分を控除する
プライベート部分も含まれているのであれば、家事使用分を按分して、その分を経費から除いていきます。
例えば、交際費に大量の飲み代を経費に入れている場合、そのうち50%がプライベートで使用しているということであれば、50%分を控除していきます。( やりすぎると、業務に明確に区分できない部分は経費にならないと、全額否認される可能性がありますので、ご注意ください )
税務調査になると、その手間や時間が取られて、さらに追加で税金が発生する可能性があります。確定申告を作る際から、税務調査にならないように、きちんと精査しておくのが得策です。