購入時に大きな金額の支出をした場合、全て経費と見込んでいると、思わぬ税金に驚くことになってしまいます。そうならないように、事前に資産計上になるものを理解しておきましょう。
1.購入の仲介手数料
購入した減価償却資産の取得価額には、原則として、その資産の購入代価とその資産を事業の用に供するために直接要した費用、さらには、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税などその資産の購入のために要した費用も含まれます。
不動産を購入するにあたり、不動産会社に支払う仲介手数料は、購入手数料に該当しますので、資産の取得価額に計上することになります。
手数料というイメージが強いため必要経費だと思い違いが多いところになりますので、ご注意ください。なお、賃貸の入居時の仲介手数料は、経費になります。
2.土地購入後の建物の解体費
古屋付きの土地を購入して、建物を解体して、新築を建てる場合、この解体費用は原則、土地の取得費になります。経費にはなりません。
所得税基本通達38-1の抜粋
「 その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手するなど、その取得が当初からその建物等を取壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取得に要した金額及び取壊しに要した費用の額の合計額( 発生資材がある場合には、その発生資材の価額を控除した残額 )は、当該土地の取得費に算入する。」
「 その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手するなど、その取得が当初からその建物等を取壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取得に要した金額及び取壊しに要した費用の額の合計額( 発生資材がある場合には、その発生資材の価額を控除した残額 )は、当該土地の取得費に算入する。」
つまり、売買代金のなかに建物が含まれていたとしても、土地を取得するために、利用しない建物が付いてきたような場合には、その建物の解体費を含めた金額が、土地を取得するためにかかった費用と考え、全額土地の取得費になるということになります。
ですから、経費にはならず、また、新築する建物の取得費にもならないため、減価償却の対象にはなりません。
3.購入後リフォーム
修繕費であれば、その年に全額経費にすることは可能です。しかし、内容が修繕費であったとしても、賃貸するため( 事業の用に供するため )に支出したものは、資産計上することになります。
ボロ物件を購入して、全面リフォームして賃貸するような場合、クロスの張り替えなど、内容が修繕費に該当するものであったとしても、修繕費にはなりません。資本的支出として、資産計上します。
さらに、リフォーム費用によっては、中古の耐用年数が使えなくなる場合がありますので、ご注意ください。4年償却だからいいやと思っていたのに、4年の耐用年数が使えないということがあるのです。
では、どういう場合に4年の耐用年数が使えなくなるのでしょうか?
①資本的支出が「 再取得価額×50%を超える 」場合
再取得価額とは、中古資産と同じものを新品で購入した時の価額です。この再取得価額の50%を超える資本的支出をした場合には、もはや中古資産ではないと考えられます。
よって、中古の耐用年数を使用することはできず、新品の法定耐用年数を使用することになります。
②資本的支出が「 取得価額×50%を超える 」場合
資本的支出が「 再取得価額×50%を超えていない 」場合でも、「 取得価額×50%を超える 」場合には、下記の算式によって耐用年数を計算することとされています。
( 中古資産の取得価額+資本的支出額 )÷( 中古資産の取得価額/簡便法で計算した耐用年数+資本的支出額/中古資産の耐用年数 )
4.用途変更のための修繕費
用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額は、修繕費にならず、資本的支出となって資産計上になります。
例えば、店舗で賃貸していたところを、住宅に変更して賃貸するような場合があります。このときにかかった工事代金は内容が修繕費に該当するものであっても、資産計上しなければなりません。
5.コンサルティング費用
物件を購入するために、コンサルティングをお願いして、コンサルティング費用を払う場合があります。
この場合のコンサルティング費用について、建物の取得のため、もしくは、賃貸を開始するために必要となる支出であると判断される場合には、経費になりません。資産に計上することになります。
東京地裁平成21年12月24日判決によると、下記業務に関する費用は、建物の取得価額と判断されました。
(1)建物の建築に係る立地調査、基本計画プラン、建築計画プランの作成等の基本企画業務
(2)建築確認に係る各種工事監理等の設計監理業務
(3)建物に係る基本構想及び周辺環境等の事前調査等
(4)建物の近隣住民等に係る近隣対策業務
(5)施工会社との折衝業務
(2)建築確認に係る各種工事監理等の設計監理業務
(3)建物に係る基本構想及び周辺環境等の事前調査等
(4)建物の近隣住民等に係る近隣対策業務
(5)施工会社との折衝業務
コンサルティング契約を結ぶときには、何に対する対価なのかを明確にしないと、後々税務調査で揉める原因となってしまいます。
◇オンラインセミナーのお知らせ
9月9日( 水 )に静岡銀行さんでオンラインセミナーをさせて頂きます。私は「 コロナ対策とアフターコロナ・税制改正で大家さんが対策するべきこと 」について。静岡銀行さんは、今後の融資姿勢などをお話しします。
⇒https://www.kenbiya.com/sm/ol/t-t/pt-0/dt_38027s3x/