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インボイス制度、安易な登録は危険?!隠れ課税売上の襲来に注意!

渡邊浩滋さん_画像 渡邊浩滋さん 第83話 著者のプロフィールを見る

2021/10/18 掲載

前回、インボイス制度に対して大家さんがどう対応していけばよいかを書きました。今回は、インボイス事業者登録をした場合の落とし穴について解説していきます。

参照:大家が今からやるべき「インボイス制度」への対策

経過措置期間( 令和11年9月30日まで )の大家さんの対応策として、家賃の値下げ交渉をしてみた方がよいと提案しました。

もし、借り主が値下げ交渉に応じてくれなかったら?
もし、経過措置期間が終了したら?

インボイス登録事業者、つまり課税事業者になることを選択した方がよいのでしょうか?

1.賃貸経営に潜む隠れ課税売上

賃貸経営の課税売上は、店舗、事務所、駐車場収入のように消費税がかかっていると目に見えるものだけではありません。一見、消費税がかかっているとはわからない収入が課税売上になっていることがあるのです。

これを私は、「 隠れ課税売上 」と言っています。例を挙げてみます。

(1)入居者負担分の原状回復工事費用

入居者が退去する場合に、敷金を全額返金しない場合があります。入居者が負担する修繕費を差し引いて、残った敷金だけを返却するのです。この「 返却しなくてよくなった敷金 」が、課税売上になるのです。

国税庁HPでは下記のように説明されています。

「 建物の賃借人には、退去に際して原状に回復する義務があることから、賃借人に代わって賃貸人が原状回復工事を行うことは賃貸人の賃借人に対する役務の提供に該当します。したがって、保証金から差し引く原状回復工事に要した費用相当額は課税の対象になります。」

入居者がやるべき原状回復工事を大家さんが代わりにやっているサービスだから課税取引だということです。これは、店舗に限らず、住宅用の部屋であっても同じく課税売上になります。

(2)共益費とは別に入居者から徴収する電気代・水道代

部屋ごとに個別メーターがない場合、大家さんが電気代・水道代を一括で支払い、各入居者に使用分を請求することがあります。この場合の入居者に請求する電気代・水道代が課税売上になることがあります。

大家さんが支払う電気代・水道代が、各入居者からもらう金額と一致していれば、つまり、差額が生じずに、「 預り金 」として処理して、単に大家さんを通過しているに過ぎないものは、消費税はかかりません。

しかし、「 預り金 」処理ができないような差額が生じる場合、つまり、使用量に関係なく一定額で請求していたり、大家さんが少しでも多めに徴収しているような場合には、( 差額だけでなく )徴収金額の全体が課税売上になるのです。

(3)賃貸物件を売却した場合の建物売却代金、固定資産税精算金

賃貸している物件を売却した場合、住宅用、テナント物件問わず、建物の売却代金は課税売上になります。固定資産税の精算金は売買代金の一部なので建物分についての精算金は、消費税が課税されます。

2.インボイス登録事業者になることのジレンマ

上記の「 隠れ課税売上げ 」は、住宅用の賃貸であっても課税売上として容赦なく消費税がかかってきます。住宅用の家賃を受け取る場合は非課税なのに・・・。

免税事業者であったときは、消費税を払わなくてよかったのです( いわば益税になっていたということ )。しかし、課税事業者になると納税しなくてはなりません。

この部分については、どのくらいの課税売上( 隠れ課税売上げ )があるかによって、大家さんごとに受ける影響が異なります。

インボイス登録事業者( 課税事業者 )となって、簡易課税制度で納税を取るか、消費税分家賃値下げして、隠れ課税売上げの消費税を取られないようにするか( 益税 )、有利不利の比較をしてみる必要があるということです。



具体例で考えてみたいと思います。

《 インボイス制度で値下げか登録かを迫られる取引 》
○店舗収入:264万円(税込)
○駐車場収入:66万円(税込)
○太陽光収入:105.6万円(税込)

この取引の消費税分を値下げするか、課税を受けるかの選択になります。
同時に、課税を受ける場合には、下記の隠れ課税売上についても納税の対象になることを考慮します。

《 隠れ課税売上 》
○敷金償却分(修繕分):50万円(税込)
○敷金償却分(クリーニング分):200万円(税込)
○預り金処理しない水道光熱費徴収分:100万円(税込)
○住宅用建物の売却金額:200万円(税込)

値下げした場合の減額と納税した場合の負担を表で比較すると下記のようになります。



上記の表をみると、値下げした方がマイナスが少なくなることがわかると思います。
このように具体的に当てはめて比較しないと有利不利がわからないのです。

免税事業者が安易にインボイス登録事業者になると、思わぬ消費税がかかってきます。インボイス制度までまだ時間はあります。消費税のしくみを理解して、どのように対応していくべきかを準備しておきましょう。

■ インボイスについての質問会やります

3回にわたってインボイス制度について解説していきましたが、難しくてわからないという方も多いと思います。しかし、大家さんにとって影響ある制度です。

しっかりと理解して頂きたいということで、私のYoutubeチャンネル「 大家さんの知恵袋 」のYoutube Live( オンライン )でみなさまの疑問質問に答えていきたいと思います。

日時:令和3年10月22日(金)18時30分~20時
費用:無料
URL:https://www.youtube.com/watch?v=ngSbENDp6pg
事前に質問もお受けしています(当日チャットでの質問もOK)。

■ セミナー・無料相談会のお知らせ

①『 大家さん専門税理士が語る!税務調査と確定申告対策 』セミナー

日時:10月20日(水)、10月25日(月)、10月26日(火)の19:00~20:30
詳細・お申込み⇒コチラ

②『 確定申告における税務戦略とインボイス制度の対応法 』セミナー
※静岡銀行さんから今後の融資姿勢などのお話もあります

日時:12月14日(火)18:30~
詳細・お申込み⇒コチラ

両方のセミナー後に質疑応答の時間も設けております。よろしければご参加ください。
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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

渡邊浩滋さん

渡邊浩滋さんわたなべこうじ

不動産投資家
Knees bee税理士法人 代表

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • □大学在学中に司法書士試験に合格

    □大学卒業後総合商社に入社。法務部にて契約管理、担保管理、債権回収などを担当

    □商社を退職後、税理士試験に合格

    その頃、実家のアパート経営(5棟、全86室)が危機的状況であることが発覚。 経営を立て直すために自ら経営を引き継ぎ、危機的状況から脱出する

    □2011年
    「行動する大家さんの会」を設立

    □資産税専門の税理士法人に勤務した後、2011年12月、独立開業

    □2013年
    「一般社団法人 大家さんの道しるべ」代表理事就任

    □2017年
    日本全国の大家さんを救うべく、フランチャイズ展開を開始(同じ志を持つ仲間を求めている)

    □2022年10月法人化
    税理士の視点と大家の視点からアパート経営を支援するために活動し、税理士・司法書士のワンストップサービスを提供している

    資格専門学校の講師、賃貸住宅フェアでの講演、セミナー講師等、幅広い分野で活躍中

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