今回の改正は大きな変化はありませんが、印象として、ここ最近報道で話題となった、住宅ローンの不正利用であったり、税理士の懲戒逃れ、ドローンなどを利用した節税スキームを取り締まるような改正だったりが目立ちました。
税制は景気や取引そのものに大きな影響を与えるものです。大家さんに影響がありそうなものをピックアップして解説します。
1.生前贈与はどうなった?
今回の税制改正では注目されていた金融課税の見直し、生前贈与ができなくなるかも、と噂されていましたが、いずれも改正の内容には入っていませんでした。
生前贈与については、「 資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める 」という文言にとどまり、どのような内容になるかは一切言及されていません。
いつ改正になるかわからない状況ではありますが、1年の猶予ができたと思って対策をしておきましょう。
2.電子帳簿保存まさかの2年猶予
前回のコラムでお伝えした電子帳簿保存法の改正ですが、1カ月きっていたところで、まさかの猶予期間が設けられることになりました。
参照:電子帳簿取引法って?!生前贈与ができなくなる?!どうなる2022年?影響ある改正点
本来2022年1月から適用となり、PDFなど電子データで受け取った請求書や領収書を紙で印刷しての保存は認められず、データのまま保存しなければならないことになっていました。
「 令和4年1月1日から令和5年12月31日までについては、出力書面の提示の求めに応じることができるようにしている場合には、保存要件にかかわらず、電磁的記録の保存ができるようにする経過措置を講ずる。」
2年間は紙で印刷して保存でもよいことになりました。令和3年の税制改正で決まったことでしたが、ほとんど周知されていなかったこと、全業種、規模を問わずの強制適用で影響が大きかったことから、国税庁などへの問い合わせが殺到し、今回の対応となったようです。
一安心ではありますが、2年後からは本格的に適用が始まりますので、内容を理解しておくようにしましょう。
3.取り締まりの改正
冒頭でもお伝えしましたが、今回の改正内容として、報道された不正や話題の節税スキームを取り締まるような内容が多かったです。
節税商品についての報道があってから改正に至るまでが、早いサイクルでなされている傾向にあります。不正はもってのほかですが、今後は抜け穴的な節税スキームであってもすぐに改正が入り規制されてしまいそうです。
(1)ドローンなどの節税商品スキームの規制
1台10万円未満のドローンや建築現場の足場材料を大量に購入して、全額経費にして節税を図り、それをレンタルすることによって、購入代金を少しずつ回収するスキームが一部で流行っていました。これらを規制する改正になります。
◯少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度について、対象資産から、取得価額が10 万円未満の減価償却資産のうち貸付け( 主要な事業として行われるものを除く )の用に供したものを除外する。
◯一括償却資産の損金算入制度について、対象資産から貸付け( 主要な事業として行われるものを除く )の用に供した資産を除外する。
◯青色申告者が30万円未満の減価償却資産を全額経費にできる少額減価償却資産の特例の適用期限を、対象資産から貸付け( 主要な事業として行われるものを除く )の用に供した資産を除外した上、令和6年3月31日まで2年間延長する。
表にまとめると下図のようになります。
<少額の資産(備品)の経費計上まとめ>

貸付用については、原則通り資産計上して、法定耐用年数で減価償却することになります。賃貸経営の場合、エアコンや給湯器を購入したなど、そもそも貸付用に該当しますが、主要な業務であれば今まで通り経費にすることが可能です。
あくまでも節税スキームにメスを入れる趣旨になります。このような節税商品は、手を変え品を変え出てきます。法改正で規制されますし、レンタル先の会社が倒産するリスクがありますので、おすすめできる節税手法ではありません。
(2)住宅ローン不正利用の規制?!
2019年にフラット35を不正利用しているケースがあると報道されました。本来自宅の購入のための融資であるフラット35を、賃貸をするために利用することで、有利な条件で不動産投資をしている人がいるという内容でした。
悪質なケースだと、住民票をその物件におくことで、住宅ローン控除も適用しているとのこと。融資の不正利用は金融機関との問題ですが、本来適用できない住宅ローン控除を受けるのは脱税です。これを取り締まるためか、次の改正がされます。
「 令和5年1月1日以後に居住の用に供する家屋について、住宅借入金等に係る一定の債権者に対して、氏名、住所、個人番号、その他の一定の事項を記載した申請書( 住宅ローン控除申請書 )の提出をしなければならない。」
金融機関に住所、氏名、マイナンバーを提出させることで、不正に住宅ローン控除を適用していないか確認するものと思います。当然、住んでいなければそれが金融機関にもわかるため、住宅ローンを使った不動産投資もできなくなるものと考えます。
(3)懲戒逃れの税理士の規制
懲戒処分となる税理士が、廃業することで処分を免れ、税理士に復帰が可能となっているケースがあると報道されました。こちらについても早速改正がありました。同業者として恥ずべき行為なので、早い改正でよかったと思います。
いずれも、報道されたことで、早期の税制改正に繋がっているという事実があります。不正や甘い話にはくれぐれも気をつけるようにしましょう。まだまだ伝えきれていない改正内容がありますので、次回に続きます。
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