「これからは組織の時代から個人の時代へ」などと言われる昨今。個人として活躍する働き方のモデルの広まりとともに、「FIRE(ファイア)」という概念が登場し、注目されるようになってきた。
「Financial Independence Retire Early(経済的独立と早期退職)」の頭4文字をとってFIRE。2018年ごろに米国でムーブメントがおこり、最近は日本でもメディア等で大きく取り上げられ、書店にもFIRE本コーナーができるなど、まさにブームとなっている。それだけ、今の働き方に疑問を持っている人(たいていは毎月一定のサラリーを受け取る勤め人だろう)が多いということだ。
FIREという考え方に触れ、そこに至るための方法を模索して不動産投資にたどり着いたという方も少なくないだろう。今回は、そのような方にもおすすめの書籍『年収300万円からのFIRE入門 最速でお金・時間・人間関係から自由になる(ダイヤモンド社)』を紹介する。
本書の著者は健美家コラムニストでもある「波乗りニーノ」こと西野浩樹氏。サラリーマンをしながら不動産投資で資産を大きくし、5年前に40代でのFIREを達成。現在は不動産投資家兼ファイナンシャルプランナーとして、時間や場所に縛られない生き方、働き方を実践している人だ。
順風満帆なサラリーマン人生のはずが…
ライフプランセミナーで見えたのは暗い将来だけだった
バブル崩壊後の就職戦線を勝ち抜き、大手スーパーを運営する流通系の会社に新卒入社した著者。会社では順調に出世し、結婚して子どもが生まれて、と順風満帆な人生にも見えた。
しかし30歳になり、ジョブローテーションで配属されたパン屋では早朝から夜遅くまでパンを焼き、休憩もろくに取れないほど働き詰めの毎日。それでも、給料の手取りは月20万円ちょっと。
あるとき会社のライフプランセミナーで家族のライフイベント表と家計シミュレーション表を作成したが、上の子どもが大学を卒業するまでに家計収支はマイナスになり、貯蓄も底をついてしまうことが判明。非常に厳しい現実が浮かび上がることとなったのだ。
車を諦め、家族旅行を諦めても、それでもまだ足りない。はてはマイホームか子どもの大学費用、どちらかの取捨選択まで迫られるほどに。明るいはずの将来はどこへ、という著者の絶望感が、自分ごとのように感じられる読者も多いことだろう。
そんな経験から、お金を増やす方法を周りの人に聞いたり、書籍に学んだりしながらあらゆることに取り組んだ著者。ときには投資と思い込んでギャンブルや投機にのめりこみ大金を失うという失敗もしながら、我々を取り巻く資本主義社会を攻略する方法を徐々に身につけ、ついには10年あまりでFIREを達成した。
本書の前半では、人生の三大支出ともいわれる「家」「車」「保険」といった大きな買い物で賢く節約したり、欲しいものを工夫によってただで手に入れるなどしてお金を残す方法や、小さくお小遣い稼ぎ程度からビジネスを始めて投資の種銭をつくる方法などを紹介している。
特に、多くの人にとって人生最大の買い物になるであろう「家」の買い方については、金額が大きいぶん、うまく攻略できればFIREへの大きな後押しにもつながるだろう。「一生に一度の買い物」という先入観を捨て、市場価値を意識しながら投資家のモノサシで家を買い、必要に応じて住み替えていくことで、マイホームに実質ただで住み続けることさえできるのだ。
FIRE達成の道のりとして一般的に紹介されているのは、S&P500に代表されるインデックス投資などに長期的に取り組む方法だろうか。
ただ著者の場合は、不動産投資に集中的に取り組んだ上でのFIRE達成である。本書の中盤からはファンドでのFIREと不動産投資でのFIREの違いと、それぞれのメリット・デメリットといった内容に切り込んでいる。ひとことでいえば、リスクは不動産投資の方が高いが、そのリスクはコントロールできる余地があり、スピード感に勝る、ということだ。
資産○○円達成してFIRE!の前に考えておこう
社会保険や自分の居場所づくりのこと
また後半にかけて登場する、FIRE前から考える社会保険や年金、サードプレイス(自分の居場所)をあらかじめ確保しておくことの大切さといった章も注目ポイントだ。
「そんなにたくさんの資産は必要ない。それより一刻も早くFIREしたい!」とお思いの方もいるだろうが、あわててFIREして「こんなはずじゃなかった…」と後から嘆かないためにも、予めこのあたりのことも考えておく必要がある。
約300ページとそれなりのボリュームがある本書だが、具体的なノウハウの紹介というより、それらに通底する根本的な考え方を説くことに重きを置いている。
FIREに憧れる人のなかには、「会社勤めが嫌だからとりあえずFIREしたいな」といった具合に、ともすればそれ自体が目的化しているケースも少なくないだろう。
言うまでもなく、FIREは人生のゴールではない。むしろ新しいスタートだ。
FIREというカードを得て、自分はどんな人生を望むのか?本書を読みながらじっくり考えてみてはいかがだろうか。そうして浮かび上がったものこそ、FIREに向けて自分を突き動かしてくれる何よりの原動力にもなるだろう。
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(たまあらい))