不動産投資家のなかには、単なる投資やビジネスの範疇をこえ、不動産のもつ魅力や面白さに自体に取り憑かれて半ば”不動産マニア”と化している人も少なくない。
建築、デザイン、リフォーム、リノベーションやまちづくり…不動産にまつわる様々な分野はそれぞれに奥が深く、ハマったら抜け出せない”沼”要素がたっぷりで、人によっては楽しくてお金も儲かる最高の趣味、と言えるかもしれない。
今回紹介する書籍「ひとが集まる！テナントリノベ（ごま書房新社）」は、そんな”不動産沼”にどっぷり浸かっている人や、不動産にハマりかけている人におすすめの一冊だ。
「ヤドカリ投資」で不動産投資を始めた女性大家のパイオニア
会社員を卒業し、リノベーションを生業とする不動産屋へ
著者の「うっちゃん」こと内海芳美さんは、地元香川県と神奈川県で「ひだまり不動産」という不動産会社を家族経営する不動産大好き主婦だ。
育児と仕事の都合による引越しを機にマイホームを賃貸に出したことがきっかけで不動産投資家としての道を歩みはじめ、マイホームを住み替えながら徐々に貸家を増やし、のちに地方高利回りの中古一棟アパート再生で規模拡大し2005年に専業大家に。当時はまだ稀な存在だった女性大家さんとして出版、セミナーなどで注目されてきた経歴をもつ。
そして2006年に「ひだまり不動産」を開業。古く、見捨てられたような物件を買い取ってリノベーションによって蘇らせて再販したり、住居やテナントとして賃貸するように。
仲介業務は行わず自社物件の取り扱いのみにこだわり続けてひだまり不動産”らしさ”を確立。現在では単なる住宅リノベーションだけでなく、コンバージョン（物件の用途変更）を伴うテナントの開業プロデュース、大掛かりな建物1棟再生や地域活性化事業まで手がけるように。そのほか、なんと「かき氷屋さん」も自ら開業し、複数店舗を繁盛店へと育て上げるなど、起業家としても注目されている。
本書ではそんな内海さんとひだまり不動産メンバーがこれまで手がけてきたリノベーションの事例を約20例、写真盛りだくさんのオールカラーで紹介している。以下に一例を挙げるが、ただのオシャレなリノベ事例集とはワケが違う。
・放置状態の古い独身寮がクリエイターの集うシェアアトリエに
・古い団地をリノベ、区分登記して分譲マンションとして販売
・1階がパン屋。焼きたてパンの香りただようロフト付きアパート
・ありふれた古ビルを”旅するように暮らす”がテーマのホテルに
・”元銀行”のビルが店舗兼自宅の美容室に。その名も”THE BANK”
「パリで見たオシャレなアパルトメントを作りたい！」「こんな素敵な場所が地元の高松にもあったらいいのになあ」といった妄想や憧れからスタートして、メンバーの力を借りていかに実現してきたか。そんなヒストリーのなかに、読者の不動産投資にも活かせるアイディアが多くちりばめられている。
不動産をただの”箱”でなく自分らしさを実現する”場”へ
不動産投資には地域を活性化させる”まちづくり”の力がある
ひだまり不動産のリノベーションには、カフェやパン屋などテナントを据えたコミュニティスペースやコワーキングスペースなど、人が集まり、コミュニティが自然発生するような仕掛けが多く見られるのも特徴だ。価値観の多様化が進む世の中において、不動産はただの”箱”ではなく、やりたいことや、自分らしい生き方を実現するための”場”としての役割が求められているのでは、と内海さんは語る。
そんな場を提供することによって、何もなかった通りに個性のある店がひとつ、ふたつと増えてストリートになり、やがてコミュニティが形成されて地域の活性化へとつながっていく。まちの価値が向上することで、所有する不動産の価値も向上していくという好循環を生み出しているのだ。
お金や時間の自由を夢見て不動産投資にたどり着いたけど、不動産のもつ魅力や不動産を通じて拡がる可能性にワクワクしている、という人はぜひ本書を通じて、そのワクワクを膨らませてみてはいかがだろうか。本書の成功事例がたとえ今の自分にとっては縁遠い話だと感じられても、妄想力を鍛えながら地道に取り組んでいくことで、いずれ実現していくかもしれない。
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