一般的に、競売はプロの不動産業者が行う取引であり、個人の不動産投資家がやるものではないと思われている。
競売物件の落札者を確認すると8〜9割は不動産業者が落札している。
しかし、残りは個人が落札している。
個人の不動産投資家でも入札や落札することは可能であり、一般市場の不動産物件より安く入手することも可能である。
入札する際、不動産等の資格も不要である。今後、競売物件の入札を検討している方は是非、一読願いたい。
但し、競売物件を取得するには物件の見極め方法、入札や落札の手続き、債務者との交渉など、様々なスキルが必要である。
今回、入札方法を説明し、物件の見極め方法や落札の手続きなどは別の機会に説明する。
以下、入札までの全体の流れである。
(1)入札する物件を探す
競売物件の検索は、裁判所で運営している「BIT」または、民間で運営している「981JP」で競売物件を確認し、入札したい物件を探そう。
物件の良し悪しは、上記サイトからダウンロードできる「3点セット」で確認しよう。「3点セット」とは、裁判所から提供されている物件情報であり、以下の3部から構成される。
@ 物件明細書
A 評価書
B 現況調査報告書
上記の情報を元に物件の良し悪しを判断しよう。
但し、個人の不動産投資家にとって、難易度が高い競売物件がある。
例えば、以下のような物件である。
・借地権物件
・持分物件
・再建築不可 などの物件。
上記のような物件は不動産業者が取り扱う物件なので、「3点セット」を確認し、選ばないように注意頂きたい。
「3点セット」を確認し、入札したい物件が見つかれば、実際に現地訪問しよう。なお、競売は一般市場の不動産物件とは異なり、対象物件の室内を見ることができない。
室内の確認は、落札して所有権移転後に可能になる。そのため、入札前は外観を確認しよう。
外壁塗装は大丈夫か?リフォームはどこまで行うのか?雨漏りの跡はないか?
あと、接道状況や最寄りの駅からの距離なども確認できる。現地訪問は必ず行うことをお勧めする。
(2)入札書を準備する。
入札書のフォーマットは裁判所支部毎に決められている。そのため、入札する物件が決まったら、その管轄である裁判所支部から入札書を入手しよう。
入手するには以下の2つの方法がある。
@ 裁判所の執行官室に行き、直接、入札書を取得する。
A 裁判所の執行官室宛に返信用のA4封筒を送り、返信頂く。
@は、平日の日中に空き時間があり、裁判所に行く時間があれば問題ない。しかし、平日に働いているサラリーマンや裁判所に行く時間がない方は難しい。
そのような方々にはAをお勧めする。
裁判所支部の住所はBITのサイトから調べることができる。宛名は「〜支部 執行官室 担当殿」で構わない。封筒の中には、入札書を返信頂きたい旨を記載した1枚と返信用の封筒を入れる。
例えば、以下のような文面で構わない。
=============================================
●●地方裁判所 ●●支部 執行官室 ご担当様
お世話になります。●●と申します。
競売物件の入札を検討しており、
大変恐れ入りますが、返信の封筒に入札書一式●●通を入れて頂き、
ご返信頂きたくお願い申し上げます。
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なお、今後も入札する可能性があるなら、毎回、入札書を郵送頂くことが面倒になるため、1冊だけでなく、5冊や10冊程度、複数の入札書を頂くようにしよう。
ちなみに10程度の入札書なら返信の封筒の切手は250円である。
(3)保証金を振込む
入札書が届いたら、その中に保証金を振込む用紙がある。入札するためには事前に指定された金融機関に保証金を振込む必要がある。
保証金とは裁判所から依頼された不動産鑑定士が評価した基準価の2割の金額である。例えば、基準価が1000万円なら保証金は200万円である。
なお、もし落札できなかった場合、保証金は返金されるので安心頂きたい。
(4)入札書を作成する
入札するための書類は以下である。
@ 入札書
A 入札保証金振込証明書
B 住民票(法人の場合、代表者事項証明書又は登記事項証明書)
@とAはBITのサイトに記載例があるため、こちら@入札書、A入札保証金振込証明書を参考に記載頂きたい。Bは発行後、3か月以内である必要がある。
なお、競売物件に割当てられた事件番号の記載誤りや印鑑の押印忘れがあると入札失格になるため、誤りがないように記載頂きたい。
(5)入札書を提出する
入札書を提出するには以下の方法がある。
@ 裁判所へ持参し、提出する。
A 裁判所へ郵送する。
@とAのどちらでも構わないが、
サラリーマンなどの方々は本業があり、平日の日中に時間がないため、@ではなく、Aをお勧めする。
また、@とAの両方とも、必ず入札期限までに入札書類を提出、または、必着する必要がある。万が一、1分でも提出が遅れたら、失格となる。入札期限は先ほどのBITや981.JPのサイトで確認できる。
入札までの手続きは以上である。
最初は、わからないことがあり、時間がかかると思うが、慣れると手続きもスムーズに行うことができる。
また、今後、競売物件を数回、入札したい方がいれば、事前に入札書や保証金、住民票は準備した方がよい。
ほしい競売物件が見つかっても、入札期限まで時間がなく、入札書がないため、入札できないということがないように注意したい。
【執筆者】
ドクターK
【プロフィール】
競売コンサルタント。サラリーマン投資家。
サラリーマンをやりながら、年に数十回の入札を行い、数件落札。
競売をやりたい初心者向けに毎月、競売セミナーを開催し、競売のノウハウを伝授。
執筆活動も行い、著書「はじめての競売」に一部寄稿。